第九十八話 開幕ピンチ
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「おら! お前ら大人しくしやがれ! でないとこの巨乳の眼鏡をぶっ殺すぞ!」
「いやぁ! 委員長!」
鈴木が叫ぶ。そして突如やってきた銀行強盗に掴まっていたのはやっぱり委員長だった。
うぅ、と呻く委員長。そんな委員長を見ながら銀行強盗達が舌なめずりをした。
委員長は鈴木と一緒に銀行に来ていた。ただそれだけだった。しかしそこに銀行強盗がやってきて捕まってしまった。
しかもわりと他にも沢山の客がいたのに、何故か委員長が目をつけられ捕まったのだ。
「あ、あの、どうして私なんですか?」
委員長は思い切って聞いてみた。勿論自分が捕まらなければ他の誰かが捕まるだけであり、正義感の強い委員長からすれば自分が捕まることで他の誰かが捕まらないのであれば結果的に良かったのかもしれないと思いたいところだが、実はここ最近は妙にこんなことが多いのだ。
「お前が目についたからだよ。ククッ、しかしいい胸してやがるぜ」
覆面をした男の好色な笑みが嫌だった。委員長としてはあまりに大きい胸には実はコンプレックスもあり、程よい感じの鈴木ぐらいが個人的には理想なのだが、一度それを相談したら。
「それを捨てるなんてとんでもない!」
と何故か話を聞いていた海渡に言われた。ただ、それならやっぱり捨てるべきじゃないかもと思う委員長でもあったが。
何はともあれ、今日も元気にピンチに陥っている委員長であり。
「お、お前たちの目的はなんだ? お金か?」
「勿論金もある。だが、同時にこれはデスゲームでもあるのさ!」
「で、デスゲームだって!」
「ま、またデスゲームに委員長が! どうして、どうしていつも委員長ばっかり!」
鈴木が叫んだ。何となくオーバーリアクションな気がする。大体いつもデスゲームとくれば委員長が何かしらピンチにあうので鈴木もちょっと慣れてきた節があった。演技っぽいリアクションを取るようにはそういった余裕の現れも感じられる。
「デスゲームって、銀行強盗で一体何のデスゲームをしようというのですか?」
委員長が思い切って聞いた。ニヤリと銀行強盗が口角を歪める。
「それをこれから説明する。いいか良く聞け! 先ずはこの銀行をαと仮定するところから始める」
「あ、α……?」
銀行強盗の説明を銀行員も客たちも固唾を飲んで聞いている。
「そしてこのαを想定内の概念的理念でもちβとしたあと、支店と支店Bに対する預金額のX倍を求め、都銀と地銀の平均値を元にサングマリアルの定義を用いてエルファントなカッシマッジとして求める! そこから求められたエクレプスをパーンした後、アンダルシアのヘッダーを介入させcの値を仮定しその合計値のルートAかける2によって得られた最大敵公約のようなほど近い倍数にして得た預金想定値によって解した口座に振り込め! 求められた値とALCP会員の人数と割り得ることによってこの子の運命が決まる! わかったな!」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
周囲がシーンと静まり返った。委員長も目をパチクリさせている。
「おい! 聞いてただろう! わかったな!」
「あ、あのすみません。わかりません」
「あん? てめぇデスゲームを舐めてるのか!」
「な、舐めてませんがどうかもっとわかりやすく……」
銃口を向けて銀行強盗恫喝するが職員が頼み込むので、仕方ないな、と鼻息を吹き出した。
「頭の悪いお前らにもわかるように今度は噛み砕いて教えてやる。いいか? よく聞けよ! 二度はないからな!」
コクコクと職員たちが頷いた。コホンっと咳払いし改めて男が語る。
「つまりこれは簡単に言えば銀行と強盗をモチーフにしたデスゲームだ! そのために先ず俺たちが手にする金額を決める必要がある! その求め方は特に難しくないからしっかり聞けよ。わかりやすくいえばだ! 先ずはこの銀行の全容と解明を急いだ後世界の銀行数を元にシンジュックーのタネウーマ理論によってXとYとZの値を求め、モッコリーの洗礼をもって依頼値をXYとしその結果をハンマーとトン数と仮定したあと、Zにおけるファルコンずトラップを定めた上で、キャッツなIを想定値として――」
「ちょ、ちょ、ちょっとまってください!」
「あん? なんだ! まだ説明の途中だろう!」
「そうかもしれませんがさっぱりわからないのです。お願いですからもっとわかりやすく」
職員が必死にお願いした。銀行強盗は顔を真赤にさせて怒るが。
「もう一度だけだぞこれが最後のチャンスだ! いいかよく聞け! 先ずこの銀行の預金全てを泉に落としたとする! 現れた女神をDとし綺麗なJを求めた後、スネチャマのマウス角度を求めた上でネコ型の未来値に心の隙間を――」
「ルールがややこしい!(ドンッ!)」
「「「「「「「ギャフン!」」」」」」」」
説明を続ける銀行強盗達だったが、そこへ海渡が乱入。一瞬にして銀行強盗共は吹き飛ばされ、事件は解決となった。
「海渡くん、いつもありがとう」
「いや、これぐらいお安いご用だよ」
結局委員長の命は海渡によって守られた。銀行強盗も駆けつけた警官らによって連行された。事件は無事解決されたわけだ。
「委員長良かったね。でも本当少しビックリしたわよ。海渡が中々こないから」
「鈴ちゃん、折角助けてくれたのに悪いよ」
笑顔で鈴木が問いかけると委員長が嗜めるように親友である鈴木に告げた。鈴木は、あ、と言葉を漏らし。
「気を悪くしたならごめんね。何か最近は委員長のピンチだと海渡が来るって安心しちゃって」
「いや、別に大丈夫だよ」
海渡は特に気にはしていない様子だった。ただ委員長に関しては若干の戸惑いが見られる。
「おう、海渡と委員長じゃないか」
すると背後から二人に声がかかる。鈴木も一緒に振り返った。三人に声を掛け近づいて来たのは二十代後半ぐらいの男性だった。
「あれから結構経ったか? 元気そうだな」
「え~と、誰だっけ?」
男は特に海渡と委員長に向けて話しかけているようだった。だが海渡は誰だか思い出せない。
「忘れたのかよ! いやいや赤井だよ赤井! あの餓鬼事件の!」
「わ、私は覚えてますよ。ほら海渡くん公安の」
「あぁ、何となく思い出した」
委員長の一言で海渡も思い出したようだ。ちなみに海渡は別に物覚えが悪いわけじゃない。ただ特に重要でないことは敢えて覚えようとしないのだ。
「もうあれっきりかなと思ってたから覚えてなかった」
「お前結構酷いやつだな……」
赤井が目を細めて返す。
「誰なの?」
「え~とね前にデスゲームで」
「あぁ、なるほどね」
『なんでそれだけでわかるんだよ!』
「うん? 何だ今の声? 聞いたことがあるような……」
「空耳だと思うよ」
差し込まれた声に赤井がキョロキョロと見回す。鈴木や佐藤にも聞こえたようだが、空耳ということで通す海渡である。
余談ではあるが、とある離れた場所では日常会話的に今の出来事をツッコミ好きな少年に話す存在がいたりした。
「まぁ最近はデスゲームって言えば、カクカクシカジカ並に通用するからね」
「確かにデスゲーム多いからな最近」
「一つデスゲームを見たら百回デスゲームがあると思えって言うぐらいだもんね」
『ゴキブリかよ!』
「やっぱりなんか聞こえないか?」
「気のせい気のせい」
とりあえず気のせいで通す海渡でもある――




