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【コミカライズ】異世界帰りの元勇者ですが、デスゲームに巻き込まれました【本編完結】  作者: 空地 大乃
第七章 餓鬼編

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第九十三話 次なるステージ

「い、一体どうなってると言うんだこれは!」


 ピエロの格好をした餓鬼は狼狽していた。確かに今奴らが相手しているのは知能も低い下等な餓鬼だ。


 しかし、それでも人間よりは能力的に勝っている。普通の人間が戦闘的な力が5だとするなら下級餓鬼は1200だ。パワーだけならデッドチャンネルに参加していた我鬼に匹敵するしなんならちょっと上ぐらいである。


 しかしそんな餓鬼の大群が餓鬼にとってはただの餌に過ぎない人間にいいようにやられているのである。


 見ている観客もざわついていた。もしくは委員長の作った料理でもがき苦しんでいた。


 本来なら餓鬼に毒は効かない。餓鬼は悪食なのである。どんなものでも食べることが可能であるがその性質から人間を特に好んで喰うというわけだ。


 だがその餓鬼を苦しめる料理――そんなものを作る委員長はある意味一番恐ろしい存在なのかも知れない。


 とにかくこのままでは洒落にならないと判断したピエロは次のステージに向かう。


「はっはっは! 人間にしては多少はやるようだね。だけどここからが本番さ!」


 ピエロが声を上げると入り口からヌッと巨大な餓鬼が姿を見せた。


「ひ、ひえええぇえええええ!」


 その迫力にシンキチが驚き情けない声を上げる。現れた餓鬼はまさにちょっとした城ぐらいありそうな程に巨大だった。


「うふふ、やってしまいなさい愛しの弟、食吐ちゃん!」

 

 すると観客席から立ち上がった女が現れた餓鬼に向けて声援を送った。どうやらこの巨体の姉のようだが身長からして全く似ていない。


「グルルルルウウウゥウ――」


 そして巨大な餓鬼の食吐が全員を見下ろしてくる。


「はっはっは、どうだい? 食吐は肉体的強さなら餓鬼において最強だ!」

「ゲボラァアアァアアァア!」


 食吐が突如嘔吐した。凄まじい臭気を発したドロドロとした液体が広がり餓鬼の死体が飲み込まれあっというまに溶解し、更に地面に大穴をあける。


「どうだい! 食吐の溶解液はどんなものでも溶かす。ちょっとでも触れたら最後さ。しかし最強の肉体を持ちしこの餓――」

「汚いし最低! 御兄様流妖刀術奥義流鬼(さすおに)!」


 シュパパパパパパパパァアアン!


「ア"?」


 菜乃華が嘔吐した食吐に切れながら飛び込み妖刀オニイサマヨを抜刀した。刹那、億を軽く超える切れ込みがその巨体に刻まれバラバラになって消滅した。餓鬼魂も完全に消滅した為、もう生き返ることはない。


「へ? な、なんだとぉおおぉおおお!」


 ピエロが驚き叫んだ。頭を抱え、最早意味がわからないといった様子さえ感じる。


 だが今度は観客席から女の餓鬼が降ってくる。


「お前たちよくも私の可愛い弟を!」


 そう菜乃華にあっさり殺された餓鬼の姉である。


「あの餓鬼が、き、切れてるよ。でも美人だよねぇ」

『美人と言っても餓鬼だぞシンキチ』

「そうだけど餓鬼とは言えやっぱ美人の女性を相手するのは――」

「クワッ!」


 シンキチは相手が美人だけに戸惑っていたようだが、直後女の肉体が変化しカエルのような顔の化け物に変化した。


「ひ、ひぇええぇえ! 変身したぁあああ!」

「むぅ、なんと面妖な」


 竜蔵が顎を擦り唸る。そのぐらい元の面影がないのだ。


「はっは、そうだ! これが欲食の力、変身だ! 彼女は変身するごとに力が増す!」

  

 ピエロがベロを出しながら彼女の凄さをアピールする。するとカエルのようになった欲食がぐふふ、と醜悪な笑みを零し。


「そうよ! 私は変身でどんどん強くなる。しかも私の変身はあと444回も残してるのよ!」

「え! あいつの変身多すぎ!」


 シンキチのツッコミが炸裂した。


『シンキチ、一度ツッコミに回るとそれしか出番なくなる』

「ツッコミどころ満載なあんたがそれ言うかよ!」

『ほらまたツッコむ』


 やれやれと言わんばかりにダマルクが指摘した。シンキチが喉をつまらせる。


「さぁ、このままでも十分だろうけど更に変身してパワーアップしてあげるわ! ハァアァアアアァアアアァア! て、え?」

 

 欲食が拳を握りしめ腰を落とし気合いを入れ始めたが、すぐ目の前にレーザー光線と化した無数の矢と音速を超える速度で飛んできたおはじきの弾幕と赤井の銃弾と何故か委員長の料理が迫っていた。


「あんぎゃぁああぁあああああ!」

 

 無様な悲鳴を上げ欲食が粉微塵になって吹き飛んでしまった。結局残り444回の変身を披露することもなく餓鬼魂もろとも消え去ったのである。


「フッ、させねぇよ」

「何か何もしてなかった竜藏がドヤ顔見せてるよ! てか変身する前に殺すっていいの!?」

『わざわざ待ってあげる必要なくない?』

「いや、だって暗黙のルールっていうのがさ」

『シンキチ』


 納得いってなさそうなシンキチにダマルクが声を掛け。


『ルールってのは破るためにあるんだぜ?』

「おおよそ正義のヒーローが言わないようなことをぶっこんできた!」


 シンキチがツッコんだ。そしてダマルクが危惧したとおり今の所シンキチはツッコミしかしていない。


「くっ、お、お前ら卑怯だぞ! こんなことして恥ずかしくないのか!」

「それあんたが言うの?」


 空中からピエロが文句を言うと教子が呆れ顔でかえした。確かにこんな場所まで攫ってきてデスゲームをやらせようなんて魂胆の連中に言われたくはない。


「ふざけやがって!」

「こうなったら俺達が直接やってやる!」

「あなた方は私達を怒らせたのよ!」


 こうして3人目の餓鬼も倒した一行だったが、それを見ていた観客たちが怒りと殺気に満ちた目で全員を見下ろしてきた。


「クカッ! これは大変だ。おまえたちは忘れているかもしれないがここにいる観客も全員が餓鬼。それを怒らせたらどうなるか! 当然こうなるのさ!」


 そして観客だった筈の餓鬼が暴徒と化し一斉に襲いかかってきた。


「そ、そんな流石にこの人数相手じゃ――」

『大丈夫だシンキチ。思い出せ私達が行った厳しい修行の数々を』

「厳しい修行の数々――」


 シンキチの脳裏にこれまでの出来事がフラッシュバックしていく。

 

『何であの子ダークマター召喚してるの!? こわ!』

『何でそんな必殺技持ってるの!』

『……何か向こうでは刀が喋ってるーーーーーー!』

『てか、俺助ける必要なくね!』

『え! あいつの変身回数多すぎ!』

『ツッコミところ満載なあんたがそれ言うかよ!』

『何か何もしてなかった竜藏がドヤ顔見せてるよ! てか変身する前に殺すっていいの!?』

『おおよそ正義のヒーローが言わないようなことをぶっこんできた!』


「て、ツッコミしかしてねぇえええ!」

『だから言ったじゃん』


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― 新着の感想 ―
[一言] シンキチさん 基本おかしい人しかいないこのお話で、 ツッコミポジは超ブラックですよ 覚悟して戦え ・・・なんかな。今回のパートが終わっても お兄様は独立自我もった分身とか用意して シンキ…
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