第五十五話 デッドチャイルド
「は~い、今日は僕たちデッドチャイルドが可愛らしい悪戯をしかけちゃうんだよ~」
「私たち、まだまだ子どもだから何ができるかなドキドキ」
「普段はランドセル背負って小学校で先生に悪戯する程度かなぁ」
「引き出しに蛙仕込んだりとかねぇ」
「僕、先生に一回怒られちゃった」
「悪戯ぐらいで厳しいよねぇ」
「そんな僕たちが、今日はちょっとした悪戯を配信しちゃいま~す」
「オモシロイと思ったらチャンネル登録してねぇ」
今日は配信の日。皆で頑張って考えた悪戯で見かけた人をおどろかせようと思う子ども達だよ。
さぁ、いったいどんな悪戯を仕掛けるのかな?
あ、子どもたちが駅から出てきたお姉さんの後をつけていったよ。洒落たハイツの中に入ったね。オートロックだけど、上手く紛れて入り込んだよ。
お姉ちゃんが部屋に入ったねぇ。子どもたちはいったい何をするつもりなのかな? おやおや一生懸命背伸びしてチャイムを鳴らしたよ。可愛らしいね。
「は~い。あら、子ども? 私に何か用かなぁ?」
「僕たち、趣味で動画配信してるの」
「へぇまだ子どもなのに凄いんだねぇ。将来の夢もそれで食べていくことなのかな?」
「そうだよ~」
「デッドチャンネラーになって荒稼ぎするんだ」
「デッド? 聞いたこと無いなぁ。ごめんねお姉さん詳しくなくてぇ」
「ううん、大丈夫。それでね、お姉さんに僕たちのチャンネルを盛り上げるために協力してもらいたいんだぁ~」
「はは、そうなんだ。それで、お姉さんは何したらいいのかなぁ?」
「え~とねぇ~」
「「「「「「お医者さんごっこ~」」」」」」
「ん~ん~! ん~! ん~!」
「お姉ちゃんがいい人でよかったよねぇ」
「快く僕たちの悪戯に引っかかってくれたもんねぇ」
「あれ~このお姉ちゃん泣いてるよ~? 大人なのにおかしいの~」
うん、どうやら声をかけたお姉さんは凄く聞き分けのいい人だったみたいだねぇ。手斧で足首を切り落としたぐらいですぐに言うことを聞いてくれたんだもん。今はベッドに手足を括り付けられておとなしく寝ているね。猿ぐつわも噛ませられているよ。本格的だねぇ。
「それじゃあ手術を始めますメス」
「はい」
男の子が手術を始めるみたいだね。助手の女の子がメスを手渡したよ。随分と大きいね。世間ではサバイバルナイフというけど、ごっこだからこれはメスだね。
「それじゃあまずこの邪魔な大きなコブを二つとっちゃうね」
「うぐぉ、うぐぉ、ぐ、ぎぃいいいいいい!」
「わ~すっごい暴れてるよぉ。おかしいな麻酔のために五円玉で催眠術かけたのにねぇ」
「おかしいよねぇ。テレビとか漫画ならすぐに掛かったのにぃ」
「あ、血が一杯出てきたねぇ」
あらあら、お姉さんのお腹が真っ赤だねぇ。すごく暴れてるし、患者役としては失格かなぁ。こういう時は空気を読んであげないとね。
「キャハハ、長いの出てきた~」
「邪魔だから鋏で切っちゃおうよ」
「あれれ~? お姉さん動かなくなっちゃったよ? どうしたのかな?」
「あぁこれはあれだねご臨終ってやつだねぇ」
「えぇ~つまんない。もっと遊びたかったなぁ」
「仕方ないね。火葬しちゃおうか」
「「「「「「するする~」」」」」」
『今日未明――○○市のハイツ――にて出火があり建物が全焼しました。住人は全員の死亡が確認され――調べによりますとハイツで暮らしていた住人全員が身動き取れない状態にされた上で火災が発生した模様で――警視庁は放火の可能性も視野に入れて』
「まぁ怖い。この近くじゃない」
「放火なんて物騒だな。お前も気をつけるんだぞ」
「うん、僕気をつけるよ」
「怪しい人がいても近づいちゃ駄目よ?」
「うん! 僕絶対近づかないよ。でも、放火なんて酷いことするよねぇ~」
おやおや、どうやら少年の家の近くで放火があったようだねぇ。怖いよね気をつけないと。友だちにもしっかり言っておかないとね。
「えい!」
「わ!」
今日は子どもたちが悪戯で道行くサラリーマンに犬の糞をぶつけたよ。
「こ、この悪ガキ! 待て~!」
「「「「わ~怒ったぁ~」」」」
おやおや、どうやらサラリーマンのおじさんが怒っちゃったみたいだね。大人げないよねぇ。
「待てこら!」
「「「「キャハハハ、こっちだよぉ~」」」」
おじさんが追いかけてくるけど裏山に入って子どもたちも必死に逃げるよ。楽しそうだねぇ。
「お前らいい加減に、おわっ、ぎ、ギャァアアァアアアァアア!」
おやおや、追いかけてきたおじさんが突然消えたよ。あらあら、どうやら落とし穴にはまったようだね。
「やった~悪戯大成功!」
子どもたちがハイタッチして喜んでるよ。みんな仲いいねぇ。子どもたちが落とし穴を覗き込むと仕掛けておいた竹槍で串刺しになったおじさんがうめいていたよ。まだ生きているなんて凄いね!
「た、たすけ、い、しゃ……」
「うわぁ~生きてるよしぶといねぇ」
「どうする?」
「きゃはは、石を投げてしまえ~」
「投げよ投げよ!」
「や、やめ――」
落とし穴にハマったおじさんに一斉に石を投げるよ。ついでに煉瓦やコンクリートブロックも落としてあげたよ。そのたびに呻き声をあげちゃった。大人なのに情けないね。
「どうする~?」
「私飢えたネズミもってきたよ~」
「私りゅうさーん」
「弓で撃っちゃえぇ」
「小便掛けてやろう!」
「あ、が、や、め、や、め――」
あれれ~? 子どもたちが遊んでいるとおじさんが動かなくなったよ? もうくたばったのかな? なさけないね。仕方ないからしっかり埋めてあげたよ。子どもたちはとってもいい子だねぇ。
『――○○市○○町に住む会社員――が行方不明になってから一ヶ月が経過しましたが未だ手がかりがつかめず――』
「まぁこの近くじゃない。物騒ねぇ。たくちゃんも気をつけてね」
「うん、僕気をつけるよ」
「しかし、これはもう助からないだろうな。事件ならどこかの山にでも埋められてるかも知れない」
「もう貴方、子どものいる前ですよ」
「おっとすまんすまん」
「大丈夫だよ。でも、人を穴に埋めるなんて怖いことよくできるよねぇ~じゃあ行ってきま~す」
世間では暗いニュースにあふれているけどたくちゃんは元気だね。ほくそ笑みながら家を出て友達と合流したよ。そして最近の悪戯の話で盛り上がっているよ。凄く微笑ましい光景だねぇ~。
「――暫くチャンネルで配信してなかったからランキング落ちてきてるねぇ」
「収入も減ってるよ~僕新しい拳銃が欲しかったのに~」
「貴方達本当にガキね。こういうお金はしっかり貯蓄に回しておかないと将来大変なんだよ?」
「女の子はけんじつだよねぇ」
「でも、このままデッドチャイルドが飽きられるのはまずいよ。由々しき事態だよ」
「だから、しっかり次の悪戯のターゲットを見つけておいたよ~」
「え~だれだれ~?」
「え~とね。ちょっと前に動画で話題になってた胸の大きな女の子、ポイズンクィーンの、佐藤委員長~!」
佐藤委員長「何か次は私が狙われる気がする!」




