番外編⑧ その十一 竜の乱入に荒ぶるデッド
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「ヘルバーンじゃないか。召喚してないのにどうやって来たの?」
『おお海渡! 何度か召喚してもらったからな。記憶を頼りに頑張ってみたら、なんか出来たのだ』
「ノリが軽! なんだかすごいドラゴンっぽいのに!」
早速シンキチが突っ込んだ。魂どころか時空ごと消し去る力を持つヘルバーンが相手だろうと、ツッコミを忘れない――それがシンキチのツッコミ道なのである。
「いくら出来たからって、ちょっとお隣さんに挨拶してくるみたいなノリで来るのは不味いかな」
『め、迷惑だったか?』
「まぁ今回は面倒が省けてよかったけどね」
海渡がそう言うと、ヘルバーンが目に見えて安堵した。巨大な竜がほっと息を吐くと、それだけで風が巻き起こるのだから迷惑と言えば迷惑だが、今は突っ込むところではない。
「それにしても、どうしてここに?」
『うむ実は――』
「いい加減にしろ貴様らーーーー!」
海渡とヘルバーンが話していると、デッド博士が怒声を上げた。さっきから相手にされていないのが相当気に障ったらしい。機械の身体がギギギと鳴り、怒りのあまりワイパーみたいに腕が震えている。
「このわしを差し置いて変な蜥蜴と話しおって! いいか貴様ら!」
『うるさい奴だ。消していいか?』
「いいよ」
「馬鹿が! このわしをそう簡単に――」
唾を飛び散らしながら語るデッド博士だったが、ヘルバーンが鼻息を吹き返した瞬間――その身体は分子レベルで崩れ、砂のようにさらさらと崩壊して消滅した。
なお、消えた場所だけ妙に空気が澄んでいる。環境に優しい消滅だった。
「ファ~~~~ザァアアァアアア!」
「だから呼び方ぐらい統一しろよ!」
叫ぶデッドJrに、即座にシンキチがツッコミを入れた。その顔はとても満足げだ。ツッコミが決まると笑顔になるあたり、もはや職業病である。
「くっ! お、覚えてろよ! この仇は絶対に!」
デッドJrが背を見せて走り出す。どうやらこのままやっても勝ち目はないと判断したのだろう。撤退判断だけは妙に賢い。
「そうは行くかぁああああぁ!」
「親父ぃ!」
しかし逃げ去るデッドJrに、泰斗がタックルを決めた! プロのラガーマンでも目を見張るような見事なタックルである。
「捕まえたぞ!」
「くそ離せ!」
「離すものか。貴様を警察に突き出す! 法の裁きを受けるんだな!」
「ち、畜生ぉぉぉぉおお!」
こうしてデッドJrは泰斗に捕まり、警察に引き渡されることになった。デッド博士も消滅した今、ようやく“デッド関係”の一件は幕引き……のはずである。
「というわけで、こっちの件は解決したし話していいよ」
「いや海渡、切り替え早いな」
ヘルバーンの話を聞こうとする海渡に、杉崎も目を細める。
「はぁ……まぁそっちは海渡の話だし。俺は親父が心配だから、一緒に警察に付き合うよ」
「心配するな。息子に心配される年じゃない」
「親父、自分の今の姿考えろよ。今はただ中学生でしかないんだぜ?」
嘆息混じりに杉崎が言った。確かに泰斗の姿は中学生。付き添うシンキチたちも中学生。絵面が“補導”である。
「うぅ、だが息子よ。お前も学生だろう?」
「そうだけどさ。俺、わりとデスゲーム界隈じゃ有名なんだ。警察官も俺が一緒なら信じてくれると思う」
「息子よ……その年で一体どれほどの苦労を……」
「いや、言うほど苦労はしてないんだけどな」
チラッと海渡を見つつ杉崎が答えた。杉崎も様々なデスゲームに関わっているが、そこにはだいたい海渡がいた。だから命の心配をした記憶は、正直あまりない。
「さぁ行くぞ親父」
「あ、あぁ」
「そっちは頼んだよ杉崎」
「お兄ちゃん、後でその竜ちゃん紹介してね」
「そうだ! 私も一緒に付き添おう! 大人が一緒ならより安心!」
「パパは来ないで! 絶対トラブルに繋がるから!」
「酷い!」
田中が涙ぐむ。とはいえ田中もかつてはデスゲームを開催した側の男だ。警察にほいほいついていけば、ややっこしいことになってもおかしくない。
「田中はやめとけよ。あんた疫病神なんだから」
「いつものことだけど扱いが酷すぎる!」
『こいつも消していいのか?』
「一応、今は改心してる筈だからやめてあげて。多分死なないけどね」
「竜にやられても死なないって、どんだけ悪運強いんだよ!」
シンキチは最後にそうツッコミ残し、皆と警察に向かった。
「言い残しみたいに言われたよ!」
そして改めて、海渡がヘルバーンに向き直る。
「それで、来た理由は?」
『う、うむ……実は――娘が、娘が出ていってしまったのだ!』
ヘルバーンの声は、さっきまでの軽さが嘘みたいに沈んでいた――。
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