番外編⑧ その九 帰ってきたデッド博士
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「私は宇宙人の科学の力を使いパワーアップした! 我が名はネオデッド! いや超ネオデッドだ!」
そう言ってデッド改めネオデッドが高笑いを決めた。
「超ネオデッドだ!」
どうやらそこは譲れないらしい。しかし名前が長くなるのは面倒なだけなので、もうTNDで良いだろう。
「ナレーションが勝手に略してるよ!」
「あれってナレーションだったんだ」
「衝撃的事実ね」
「そもそもシンキチは誰にツッコミを入れてるのだ?」
天に向かってツッコミを入れるシンキチと、その事実に驚きを隠せない菜乃華と真弓。
一方で美狩は純粋に疑問に思っていた。素直な良い子なのである。
「超だかネオだか知らんが、お前がデッドなら好都合! まさにここで会ったが百年目! いや転生したとしてもそんなには経ってないか。えっと俺が転生したのは確か――」
「何をブツブツ言ってる。大体私は貴様のようなガキは知らん」
泰斗を見ても誰か全く見当もつかない、といった様子のデッドである。
「TNDじゃなかったの!」
それはそれで面倒だからやめたのである。
「だから誰と話しているのだシンキチ!」
「気にしないでいいよ美狩ちゃん」
真面目な美狩を、どうどうとなだめる菜乃華であった。
「お前が覚えてなくても俺は覚えている! この日の為に俺は異世界でレベル53まで上げたのだ」
「ふん。レベル53だと? ならば私の目に搭載された“戦闘力的な物を数値化する装置”で調べてやろう」
そう言ってデッド博士の目が、にゅるりと双眼鏡のように伸びた。金属の蛇腹が伸縮し、カシャカシャと機械音が鳴っている。見た目が中々シュールである。
「――ふむ。バトルパワー58000か。中々やるではないか」
どうやらレベル53は伊達ではないようだ。泰斗は胸を張り――胸を張った拍子に、さっき腫らした拳を思い出して「うっ」と小さく声を漏らした。格好がつかない。
「折角だ。他の連中も調べてやる。我が子はバトルパワー12か。ふん、ゴミめ」
「我が子に言うセリフそれ!」
デッドJrは何気にショックを受けているようだ。肩がストンと落ちた。
「そこのツッコミは5000か」
「ツッコミってそのまますぎだろう! 覚えておけ僕の名前は鳳――」
「木刀女は7000。弓女は6500。そしてそっちの真面目は10000か」
「ちょっと待って! まさかの僕がこの中で一番弱いの!」
衝撃の事実に驚愕するシンキチである。
「ムッ、待て! そこのツッコミには別の力が――5,20、400、1万――な、53万だと!」
「やった! やっぱり隠された力が!」
「ツッコミ力53万――凄まじいツッコミパワーだ」
『よかったなシンキチ』
「全然うれしくないよ!」
ダマルクに褒められるも釈然としないシンキチである。
「そんな数値関係あるか! ハァアアァアア!」
泰斗が力を溜め始めた。足元の床がミシリと鳴り、空気が熱を帯びる。制服の襟元がふわりと浮き、髪が逆立つ。
するとデッドの装置にも変化が現れる。
「ムッ、バトルパワーが12万8000まで上昇しただと?」
「メカになったお前には理解できないだろう。人の可能性を! 喰らえ! 超・波動烈破!」
泰斗が両手を突き出すと同時に、眩い光の波動が一直線に走った。床の金属プレートが震え、衝撃波で砂埃が巻き上がり、爆風が背後の少年少女の前髪を持ち上げる。
光はデッドを呑み込み、轟音と共に天井へ突き抜けた。バチバチと電光が走り、天井材が紙吹雪みたいに舞う。
「ダディーーーー!」
「いや父上なのかダディなのか呼び方はっきりさせろよ!」
こんな時でもツッコミを忘れないシンキチ。とはいえ、泰斗の本気で天井が完全に消滅したのは事実だ。空が見える。今日、晴れでよかった。
「これは、やったか!」
「美狩ちゃんそのワードはダメ!」
思わず出た美狩の言葉に菜乃華が反応した。そして――
「ハハッ、残念だったな」
「な、なんだと――」
泰斗の目の前には、全くダメージを受けていないデッドの姿。精々サウナ帰りの如く湯気が上がってる程度である。しかもその湯気が妙に健康そうだ。
「いやいやサウナって表現もうちょっと考えようよ!」
『ツッコむなぁ』
どんな時でもツッコミを忘れない。これがツッコミ力53万の力である。
「俺は……本気でやった。それなのに」
「残念だったな。お前たちに絶望的な事実を教えてやろう。私のバトルパワーは5800万だ」
「――ッ!」
その事実に全員の表情が強張る。圧倒的な差――いくら頑張ったところで埋められない絶望的な数字であった。
「アハハ! いいぞ! その顔だ! 私はその顔がずっと見たかったのだ! この私に楯突いたことを、あの世で一生後悔するがいい!」
デッドの機体の背から金属のアームが伸び、刃のようなパーツがカチリと展開される。悪趣味な美学の塊だ。
「はぁ~……全く。宇宙の果てまでふっ飛ばしたっていうのにしつこいなぁ。異世界のゴキブリでももう少し空気は読めたよ?」
その時だ――気だるげな声が皆の耳に届く。
「お、お兄ちゃん!」
「海渡様!」
振り返った菜乃華と真弓が歓喜の声を上げた。そこに立っていたのは海渡と、その仲間たちであった――。
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