番外編⑧ その八 二人のデッド
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「茶番はそこまでだ。お前たちにはこれから私のデスゲームに参加してもらう」
デッドJrがそう告げた直後、キンッ! と金属の張り線が切れるような音。
かと思えば、少年少女の枷が一斉に床へと落ちていく。
「な! 馬鹿な! 特殊合金で出来た枷をどうやって!」
「本当に切れてる! あれ? 俺、何かしたっけ!」
「いや何であんたまで驚いてんだよ!」
目を白黒させる泰斗に、シンキチのツッコミが炸裂する。とはいえ泰斗が驚くのも無理はない。異世界帰りの自分のパワーでも砕けなかった枷が、どういう理屈か“勝手に”切れたのだ。頭上に浮かぶ大量の疑問符は、もはや装飾レベルである。
「ふふふっ、遂に私の時代がきたわね。そうでしょう? オニイサマヨ!」
『勿論だいもう……いや、主を助けるのは我が務め』
声を発したのは菜乃華だった。手には木刀――ただの木ではない。紫のオーラをまとい、「すごい力を秘めてますよ」という顔を隠そうともしない妖刀である。
全員の枷を切ったのもこのオニイサマヨであろう。
「あ、私にも弓が! えっと、頭に何か浮かんでくる……これがアマテラスの弓!」
真弓が確信めいて言い放つ。その手の弓は一見ただの和弓だが、なんか凄いキラキラしていた。
「最後の説明が雑ぅうぅぅう!」
『ツッコむなぁ』
雑でも強い。それがこの世界の理である。
「真弓ちゃん、やったね! 弓道部で頑張ってきたご褒美だよ!」
「えっと、弓道部だったの?」
「あの餓鬼との一件から、弓道に目覚めていたのだ。知らなかったのか?」
当然といった顔の美狩に、シンキチは全く耳を貸していない。
『落ち込むなシンキチ』
「べ、別に落ち込んでねぇし!」
強がるシンキチの肩を、泰斗がポンッと優しく叩く。その目はどこか同情的で、しかも父親味が出ているのが少しずるい。
「お前たち、私を差し置いてさっきから好き勝手ばかりしてるな。もういい! 来い、強化人間二百号!」
デッドJrが叫ぶや、あれ? そんなの用意されてたっけ? と首を傾げたくなるほど唐突に、液体の満ちたカプセルが破裂。中から“人間らしきもの”が姿を現す。
「フフッ、こいつは強化人間二百号」
「それもう聞いた」
「二百号って、二百人目ってことか? よくそんなに作ったな」
「他の百九十九人はどうしたんだ?」
「うるさい! いいから聞け! とにかくこの二百号は、父が作った強化人間よりはるかに優れている! その力、父の最高傑作イデオフの三倍! さぁ、やれ!」
「そんな危ないもの、世に出しちゃ駄目!」
「先手必勝だね、菜乃華ちゃん!」
話を聞き切る前に、菜乃華のオニイサマヨが紫電をまとった斬撃を飛ばし、真弓の“アマテラスの弓”から放たれた矢がレーザー光へと収束して貫く。
結果――強化人間二百号は、何もできずに砕け散った! 砕け散った! 砕け散った!
「そ、そんな馬鹿なぁああああああ!」
デッドJrが目を剥き、その場にがっくり崩れ落ちる。
「馬鹿な……百五十年ローンを組んでまで作り出したというのに」
「それ、よく審査下りたよね!」
即座にシンキチがツッコむ。このご時世、どこの変わり者がそんなローンを組んでくれたというのか。
「残念だったな、デッドJr。お前の野望はここまでだ」
仁王立ちでキメる泰斗。やってやった感は満タンだが、実際のところ彼はほぼ何もしていない。あえて触れない優しさが、場の空気を守っている。
「そこは触れないであげて!」
シンキチのツッコミにも、どこか同情が滲んでいた。
「くそ! 父の無念を、私が晴らそうと思ったのに!」
『ならば、私も協力しようではないか――息子よ』
天井から降る、重低音の声。直後、天井板が爆ぜ、全身これ金属と言わんばかりの巨躯が舞い降りる。床が軋み、空気が震え、誰もが息を飲んだ。
「な、お前はまさか! デッド!」
泰斗が叫ぶ。機体の頭部には、液体で満たされた筒状の容器が据え付けられており、その中に浮かぶのは人の顔――そう、あのデッド博士その人であった。
仮面越しのデッドJrが、嬉々として両腕を広げる。
「父上……! 生きていたのですね!」
「無論だ。息子よ――私がそう簡単に死ぬものか。さぁショーの続きだ。観客を退屈させるな」
そう言ってデッドが天を指さし、金属の咆哮が、次の幕開けを告げた――。
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