番外編⑧ その七 デッドを継ぐもの
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「ふふふっ。この日をどれだけ待ち望んだ事か。全く、デスゲームを運営するにもそれなりの資金が必要でしたからねぇ」
マントを翻し、黒い鉄仮面を被った男が振り返る。血のような赤で染めた貴族風の装い――そいつこそ、デッド博士の息子・デッドJrであった。
「俺たちをこんな所に連れてきて、一体どういうつもりだ!」
「おやおや、元気ですね。勿論、“デスゲームの参加者”になってもらうためですよ」
泰斗の問いに、仮面の奥で瞳がキラリと光る。
「なるほど。つまりお前が主催者――黒幕ってわけだな?」
「同じ話を二度するほど、私は暇ではないのですよ?」
「わかった。もう十分だ。わざわざ本拠地まで連れてきてありがとうな」
「……何?」
デッドJrが訝しげに泰斗を見る。攫われた学生たちには手枷と足枷――デッド博士がかつて用いた強化人間でも破れないという特製合金製。さらに首には“小型爆弾”を仕込んだ首輪。視聴者が白けるので使いたくはないが、いざとなれば即起爆可能という悪趣味な保険付きだ。
「自分の立場を理解することですね。抵抗しても――」
「フンッ!」
デッドJrの警告をぶった切るように、泰斗は鎖を強引に引き千切った。
「なッ!?」
仮面の男が思わず一歩退く。泰斗は続けざま、手枷そのものを拳で――
「いってぇえええええッ!」
自分の拳のほうを盛大に腫らした。目に涙を溜め、ふぅふぅと腫れた右手に息を吹きかける。足で床をトントンするのは完全に小学生ムーブである。
「いや格好つかなすぎだろう! “やってやる”みたいな空気からの自損って!」
『ツッコむなぁ』
思わずシンキチが噛みつくと、ダマルクが低く呟く。そしてシンキチはどこか満足げだ。
「最近ツッコミが減ってたから嬉しい」
「泣くほどなんだ」
「よっぽどツッコミに飢えてたんだね」
後ろで見ていた菜乃華と真弓が目を細めて頷く。二人は互いの枷を見比べた。
「私たちのも外せるかな?」
「も、勿論だ。ま、まかせて、お、おけぇ!」
泰斗は真っ赤な手をブンブン振って“痛くないアピール”。だが現実は非情だ。自分の分はギリギリで割れたに過ぎず、全員分を壊すのは明らかに厳しい。
「いよいよこの鳳凰院 と」
「シンキチ、何か手があるのか?」
得意げに“真名(※本人談)”を名乗りかけたシンキチを、美狩が即座に回収する。
自称真名を明かせず不満そうなシンキチだが美狩の問いかけに答える。
「当然だ、ダマルク。見せてやろうぜ、俺たちの力――はぁああああぁああ! 鳳極天氷!」
気合い十分、必殺の詠唱――が、空気はシン……。何も起きない。風すら起きない。黒板のチョーク粉すら動かない。
「ちょ、ちょっと待って、なんで!」
『こんな密室でそんな技をぶっぱしたら、いもう……いや菜乃華が巻き込まれるでしょうがぁああ!』
「え? えぇ……」
ダマルクのド正論に、シンキチが目を点にする。続くのは恒例の“安全第一講話”。その横で泰斗は、氷で冷やしたハンカチを右拳に巻きつけていた。どこから出したのかは謎だが、やたら家庭的である。
「さっきから好き勝手して……何なんだ、こいつらは」
デッドJrは少年少女のドタバタを、冷めた目で見下ろした。だが、その眼差しの奥に“興行師”の計算高さが一瞬だけ覗く――
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