番外編⑧ その四 中学校からやり直し?
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転校生として海渡の妹の通う中学校にやってきた泰斗。シンキチのツッコミが冴えわたる中、担任の夢魅 教子が席を示す。
「泰斗くんは窓側三列目ね。教科書はあとで配ります~」
席に着くや、菜乃華が身を寄せた。
「ねぇ、どこから転校してきたの?」
「うむ。学園はゲムデス魔法学園に通っていたものだ。入学試験で的あてなんかもあって――」
そこまで語ってハッとした顔で、泰斗が口を手で押さえた。
「あっさりバラしてんじゃん」
『まるで見ていたかのように話すな、シンキチ』
とダマルクがたしなめる。これも世界中あらゆる場所でツッコミ役を買って出ているシンキチなら当然のことと言えた。
「あ、そっち系なんだね」
「うちのクラスに多いよな」
「美狩ちゃんもそうだもんね」
教室に優しい空気が流れる。泰斗の言動は、このクラスでは自然なものであった。
「大丈夫、そういうの、わかるから」
そう菜乃華が笑いかけるも、泰斗は何のことかわかっていない。
すると前の席の真弓が振り向く。
「転校直後って授業たいへんだよね。ノート、いるなら言ってね?」
「心配無用だ。中学レベルなら造作もない!」
そう言って自信満々に中学の授業を受け直す泰斗であったが――。
昼休み。机に突っ伏したまま、抜け殻のようになった泰斗の姿があった。
「ま、まさか今の中学生の授業がここまで難しいとは……関数、受動態、表計算……未知の強敵が多すぎる……」
「今の“中学生”って、泰斗も中学生だよな?」
美狩が疑問混じりの声で問いかけた。聞かれた泰斗は目を泳がせ、答える。
「も、もちろん! 適応のために敢えて手加減しているだけだ!」
「授業は手加減しないほうがいいと思うよ~」
泰斗の言い訳に、冷静に返す菜乃華である。
するとスマフォの振動音がし、真弓が画面を見て肩を落とす。
「……また田中。本当、最悪~」
『もう“田中”呼びが板についてきたな』
そう言ってシンキチが苦笑。
「でもブロックしてない真弓ちゃん、やさしい~」
菜乃華が笑顔で真弓に抱きついた。仲の良い二人を見て、男性陣もデレデレである。
「私まで無視したら、あの人、何をやらかすかわかんないだもん」
「“やらかす”とは?」
泰斗が聞くと、真弓が口を尖らせて答える。
「だってバイト感覚でデスゲーム主催しちゃう系だし~。マジ引く~」
その言葉に、泰斗の目が光った。
「詳しく。いつ、どこで、どうやって?」
「昔あったデッドチャンネルっていう裏サイトで“企画側”だよ。本人は“ノリだった”とか言ってたけど、海渡様がいたから未遂で済んだんだからね」
(デッドチャンネル……ならばデッド博士との線が――)
考え込む泰斗。その後も真弓は海渡について語っていたが、泰斗には聞こえていないようだ。
「その田中に会わせてくれないか? 確かめたいことがある」
真弓は肩をすくめた。
「私は会いたくないんだけど――皆と一緒なら」
「うん。勿論、心配だから私も行くよ。いざとなったらお兄ちゃんもいるしね」
「うむ。友だちのことは放ってはおけないな」
「ま、仕方ないよな」
こうして泰斗のお願いもあり、真弓、菜乃華、美狩、シンキチとで放課後に海渡の通う高校に向かうことになったわけだが――。
◆◇◆
「ハックション! 何だ突然くしゃみが――ハッ! さては真弓が私の噂を! いやぁ参っちゃったなぁ」
眼下でそんなノーテンキな妄想を膨らます田中を眺めながら、海渡が嘆息する。
(やれやれ。また面倒なことになりそうだな)
ダマルクを通じて泰斗の事を知った海渡は、これからどうしようかと考えつつ、杉崎の席に移動するのだった――。
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