第八話:空からすたーと
ぽん、ひゅっ。
「へ」
投げ出されたのは空の中。どこまでも真っ青なそれが広がり、遥か遠くに、地面が見え……。
「って、ああああああ落ちるぅぅぅぅぅ!!」
やばいやばいやばい!
どうすればいいの、空からスタートなんて聞いてないですよ神様!!
心の中で叫びながら落下する。
なんで声に出さないかって? 出せないんだよ風圧で!
あっもう地面が近づいて、これ死にますね来世にご期待ください。
そう思って目を閉じたものの、予想していた衝撃は全く来ない。ん、これどうなって……?
『スキル《飛行》を取得しました。飛行補助具を獲得しますか?<YES/NO>』
……へ? 今どっかから声が聞こえた様な……?
空耳かな、と思いながら恐る恐る目を開く。
あたりは真っ青な空。私は空中で止まっていた。
「えっ、ええぇぇぇぇ!!」
怖い怖い! なんで空飛べてるの私!
え、これ一歩間違ったら死なない?
下を見ると、体が勝手に震える。ひゅっと、喉の奥で変な声が出た。
高度恐怖症になったらどうしてくれんだこんちくしょう。
そう思いながら耐える。ひたすら耐える。とりあえず動くな、動いたら死ぬぞ!
『スキル《恐怖耐性》を取得しました』
また、声……。
これ空耳じゃないよね?
耳を澄ませて、声が聞こえるのを待つ。
『スキル《飛行》のレベルが上がりました。飛行補助具を獲得しますか?<YES/NO>』
……聞こえた! 確かに聞こえた!
えぇっと、スキルレベルが上がった……え、もう?!
というか、じゃあさっきの声はスキルを手に入れたから教えてくれたのかな?
スキル《飛行》……なるほど、空飛べてるのはこれのおかげか。
それから、飛行補助具でしょ? もちろん、獲得しますとも!!
『飛行補助具を獲得しました。装備しますか?<YES/NO>』
装備します!!
『飛行補助具を装備しました。』
えっと、装備された……のかな?
割と感触が変わらないんだけど、どこに何がついたんだろう。
下を見て、自分の服装を確認。その時下を見るのが怖かったけど、がまんがまん。
『スキル《恐怖耐性》のレベルが上がりました』
はっや。さっきから3分も経ってないぞ……。
まぁでも初期はレベルの上がり方が早いって書いてあったし、こんなもんなのかな。考察することも多そうだ。
んん、と伸びをして肩に回す。すると、ふわっとした感触が。
ん? ふわ?
後ろを見ると、天使の羽の様なご立派なものが。
先から根まで辿ってみると、どうやら自分の背にくっついていることがわかった。
「え、えぇ……」
これは恥ずかしい。
というか地上に降りたら邪魔なのでは?
ふわふわ、と自分で触ってみると、羽にも神経が通っていることがわかった。
これどういう仕組みなんだろ……。
気にはなったものの、初めにするのはこの空から降りることだ。
どうやったら飛べるのかな。とりあえず羽を動かしてみるか?
羽に力を入れる方法なんてわからなかったので、とりあえず全力で背筋に力を入れる。すると、バッサバッサと羽ばたいて、私の体は更に上空に……。
「って違う! 降りたいの!」
背中に力を入れるのをやめると、今度は急落下。降下じゃない、落下だこれは。
混乱しそうになるが、これはスキルだ、と考え、たて直す。
今の私は空を飛べる。羽を操ることができる。
うん、大丈夫。
羽をはばたかせて、優雅に空を飛ぶ。ほら、できた。
『スキル《自己暗示》を取得しました』
『スキル《恐怖耐性》のレベルが上がりました』
『スキル《飛行》のレベルが上がりました』
わ、また上がった。
嬉しいのだけれど、ここまでくると警戒するというかなんというか……。
まぁ、悩んでいても仕方ない。
とりあえずは状況整理だ。そう思い、ぐるりと辺りを見渡す。
下を見ると、真下には大きな森があった。
東には町、西には海。
南にはおどろおどろしい雰囲気のする大きなお城。
そして北には、何もなかった。
いや、正確に言えば何もないわけじゃない。深い霧が広がって、何も見えない、と言うのが正しい。
どこか恐怖を煽る様な景色だ。
私は急いで目をそらす。
いや、こういう何があるかわからないのが一番怖いんすよ……。
「まぁとりあえず、誰かに会いたいな」
情報を色々集めなくてはいけない。
私は町の方に向かって進んだ。
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異世界の放浪者[???] RANK:10000000~
種族 人族
称号 【神に愛されし者】
適正 魔法遣い
才能 暗殺者・治癒師
職業 なし
スキルポイント:0
スキル 《幸運》Lv.999
《飛行》Lv.3
《恐怖耐性》Lv.3
《自己暗示》Lv.1
ステータスポイント:50
ステータス:HP 1026/1026
MP 2400/2400
SP 204/204
STR 12
VIT 10
DEX 23
INT 602
AGI 14
CHA 52
状態異常:なし
主人公ちゃんのスキルレベルが上がるのが早すぎる、と思うかもしれませんが、こんなもんです。レベルが高くなるとスキルレベルは上がりにくくなりますが、レベル1→2ぐらいなら、すぐ上がります。
ちなみに、飛行補助具は毎回出るわけではなく、低確率で出ます。御察しの通りスキル《幸運》のおかげで出ました。
ランク……1000000位以下は全員同じ扱いとなるため、この様に表示させていただきました。ちなみに今の主人公ちゃんのランクは、主人公ちゃんが来た後に生まれた赤ん坊を除いて、最下位です。
適正……スキルから最も適していると判断された職業です。
才能……生まれた時に定められます。例えば、才能が料理人だったとしたら、スキル《料理》のレベルの上がり方が早いです。
職業……そのまんま。副業があれば、それも表示されます。
スキル……獲得したスキル。
スキルポイント……ポイントがたまれば、スキルを獲得できます。
ステータス……HP:なくなったら死にます。自然回復あり。
MP:魔力。自然回復あり。
SP:スタミナ。自然回復あり。
STR:力の強さを表す。
VIT:防御力、持久力を表す。
DEX:器用さを表す。
INT:知力を表す。
AGI:敏捷性を表す。
CHA:カリスマ性を表す。
ステータスポイント……ステータスに割り振ることができます。