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第五話:生き抜く為に

『迷宮世界バトルロイヤル』とは。

 人族、獣人族、魔物、それら全ての階級が、『強さ』で決まる世界だ。


 王様? 貴族? そんなものない。

 一番強い奴、若しくは其奴が認めた奴が王。

 王が定めるのが貴族。


 国同士の争いすらそれで決まる。

 ある程度の職業……聖職者等は例外となるが、基本的に強い奴が沢山いる国が強国となる。


 生き物全てにランクがつけられ、上位ランクほど生きやすい世の中だ。

 それは、意思の通じない魔物とて同じ。

 一時期は、魔王が最高ランクだった時もあったそうだ。

 勇者たちが力を合わせて倒したため、長くは続かなかったらしいが。


 完全な実力主義で、孤立主義。

 才能があるもの、努力をしたものが上に行く。

 そんなところだ。


 で? 私がそこに行く?

 戦闘経験皆無、治療などもできない、魔法なんて以ての外。

 そういうゲームをしたことがあるのでわかるが、あれは本当に弱い者には容赦がない。

 ふむ、私に死ねと仰る?


「あの、私がそこに行ったら即死する未来しか見えないのですが……」

 取り敢えず、手を挙げて質問。

 そこは凄く楽しそうだが、私に適した世界はもっと他にあるはずだ。何故そこにしたのか気になるところ。

「……え? いいよいいよ、僕が絶対守ってあげるから」

 良い笑顔でこんなことを言われてしまった。

 いや、黒い黒い。闇が深い。


 というか、つまりそれって、貴方がいないと私が死ぬ世界ってことですよね?

 つまり貴方に依存しないと生きられない、と。


「お断りします」

 それはちょっと、避けたい。

 自分の足で立っていけないのなら、意味はないから。

 いやまぁ、養ってくれるというなら楽ではあるのだけれど、見捨てられたり、彼と一緒にいない間に殺されたりするのは御免だ。


「えぇ、そんなぁ……」

 神様はがっかりしたように肩を落とす。ごめんなさいね、ココでついて行かない可愛くない女で。


「まぁ、良いよ。予測済みだ。君には一つだけ、何でも欲しいものをあげよう」

「欲しい、もの?」

「あぁ。人、もの、貨幣、スキル。なんでも良いよ」


 なんでも、かぁ。それは確かに良い条件かもしれない。

 別の世界でも、私の能力が通じるか不安なところもあったし。


「質問。スキルってなんですか?」

「あぁ、これはある特化した技術力のことだよ。例えば、スキル《料理》を手に入れたら、人より料理が何倍も上手くなる。スキルレベルを上げたら、そりゃあもう絶品のものが作れるようになるだろうね。こういう戦闘系向きでないスキルは、習得に時間がかかるんだけど、お抱えになったら守ってもらえるし、そこそこの給金も貰える。女は大体こういうスキルを取るよ」

「ふんふん、なるほど」


 ある特化した技術力、ねぇ……。

 この言い分だと、スキル《料理》は、そこそこに便利なのだろう。

 料理するだけで人に守ってもらえて、給金が高い。

 普通ならばそこにかなりの過程プロセスが必要なのだろうが、それが全て省略できるのだ。これは中々良い。


 けれど一方で、やはり誰かに頼って生きていかなければいけないスキルだ。

 それでは彼に縋って生きるのと全く変わらない。

 他のスキルは……。そうだ、戦闘系スキルもあるんだったっけ?


 イメージでは、戦闘系スキルっていうのは弓だとか両手剣とかがありそうなんだけど……。

 どういうものがあるんだろうか。大切だから、じっくり聞いてみなくては。


「えぇと、戦闘系スキルは具体的にどのようなものが?」

「……具体的に、は言いづらいかな」

 彼は少し戸惑ったように告げる。


「戦闘系スキルには、明確なものは無いんだ。オリジナルなものしかないというか……」

「適正、みたいなのはないんですか? 私はてっきり、《槍》とかもっとざっくりしたものだと思ってたんですが」

「本当にざっくりだね……。勿論有るけど、それは別の枠なんだ。才能、適正力という欄が別に有る」


 いや、どんだけあるんだ。

 適正、才能、スキル。

 これらを駆使して、上にのし上がっていくわけだ。


「わかりにくいだろうから、少し例を見せてあげるね。……《ファイアーボール》」

 神様がそう唱えると、彼が差し出した手の平に、ふわりと炎が浮かび上がる。

 ゆらゆらと動くそれに、彼はちっとも臆さない。

 物凄く熱そうなのにな、あれ。


「これは基礎の基礎ね。大体向こうでは五歳ぐらいから覚える。レベルが上がると、ほら」


 ボォォ!!

 私たちの周りを、炎が取り囲む。

 熱い熱い!!


「こういうこともできるわけだ。ちなみに身の丈に合わない力を出そうとすると、バグが起こって自分に魔法が向かってくるとか、魔法が仕舞えないということになってしまうので注意するように」


 神様が軽く手を振る。

 すると、大きな火は瞬く間に消えてしまった。

 これが、魔法の、スキルの力。

 少しだけ、興奮する。


「こんな危険なものが五歳から……」

「向こうは弱肉強食だからね、親が成る可く早く教え込むんだ。それから、戦闘系スキルはほぼオリジナルなものしかないから、避けた方がいい」


 戦闘系スキルは避けろ、と。

 もう詰んでませんかこれ?


「戦闘系以外のスキルを全て教えてください。その中から、最善策を選びます」

「……いいよ、これはスキルの全てだ。資料は沢山あるから、決まったら呼んでくれ」


 そう言って出されたのは、膨大な量の資料。右に左に前に後ろ、高く積み上げられている。


 これを、全て……。

 冷や汗が垂れたが、生きるためだ。

 腕まくりをし、早速読み始めた。

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