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第十三話:もっと

サイコパスいますご注意下さい

 未だに頭の中がくらくらする。

 味わったことのない酩酊感に私は目を回す。


「あーあ、やっぱりこうなると思った。副作用強いもんね、これ。にしても酷すぎじゃない? スキルレベルいくつさ」

「……42」

「ならまぁ仕方ないかな。……ほらアイリ、起きて」


 声を掛けられ、漸く視界が真面になるほどまで回復した私は、頷くことで回復を示す。今口開けたら吐きそうなんですよ察して下さい。


「ちょっとキツいか。担ぐね」


 ひょいっと私はテオさんに抱っこされる。当たり前の様にお姫様抱っこで。

 いつもなら羞恥で顔を覆っていただろうが、残念ながら今の私にはそんな余力はない。ベッドに入って早く寝たい。


「文句言ってこないって、相当だね。今日はもう動けないか。このまま寝そうだし」

 寝ます寝ます、寝させて下さい。

「……なら、好都合。寝ている間に『夜鴉(やがらす)』を襲おう」

 なんて?

「この子を放って?」

 違うでしょテオさん、そこじゃない。襲うってとこに反応して。


「違う、見目を変えて側に置いておく……。ランク上位者は、鼻が優れている。もし僕らが隠しても、いずれは」

「バレるってこと?」

「そう。……だから、存在が公にされるのを前提とした上で、彼女に手を出したものはこうなる、と。知らしめて、手を出されない様にした方が余程いい」

 え、私狙われるじゃないですか。拷問でも掛けられるんですか。


「一理あるね。でも、そうしたら僕より上位の誰かに知られた時、彼女に危険が向かう」

「【世界を知る者】が守っている、それだけで彼女の価値になる……。手荒には扱われない、はず」

「どっちもどっちってとこだね。さて、どうするか……」


 どうするかじゃありませんよ、平和的解決目指しましょうよマジで。

 と、そんなことを言っても止まりそうになかったので、二人に一言。


「殺しは、ダメですからね……」

「え、無理でしょ。つら。殺さずにランク奪い取るのってどうすればいいんだっけ」

「確か、相手に降参と言わせるか、気絶させるか……だった気が。あんたは知っていなければいけないだろう」

「これ研究したの何年も前だからね。出血が何%かじゃないっけ」


 あ、殺さなくてもランクは奪えるんだ。凄い。素敵。

 ……いや素敵じゃないな、物騒だな。思考回路が侵されてる。

 いい加減疲れを自覚し、眠くなってくる。

 せめて今度は心地いい眠りにつけます様に、願って私は眠りに落ちた。


 *  *  *


「……寝た?」

「寝た寝た。随分お疲れだったんだねぇ。SPもVITもないのによく頑張ったよ」

「彼女の、ステータスは?」

「教える必要ある?」

「護衛に必要」

「だろうね。でも、教えられない」


 そういうと、ウィルは何かを察したのか、それ以上追求はしなかった。


「さてと、結局襲撃にはいくの? 僕は全員拷問かけて磔にしたいんだけど」

「……同意。それぐらいやらなきゃ、意味がない」

「殺すなとは言われたけど、傷付けるなとは言われてないからねぇ」

「全く」


 まだまだ詰めが甘いね。確かにウィルくんは君の言うことに逆らえないし、僕は君の要望を成る可く聞かなければいけない立場だけど。

 死より酷い地獄があることを知らないから、こんなことを言えたんだろう。

 今時町娘でもこんなこと知ってるよ?


「早速今から向かおうか。彼女は興味深いからねぇ、誰かに取られる訳には行かないんだ」

「……矢張りそれが目的か、【世界を知る者】」

「悪い? 知らないことを知りたいと思うのは、普通だと思うけど」

「執着さえなければ、何も言わないが」

「仕方ないねぇ、性分だから」


 くすり、僕は笑って答える。


 幼い頃、母に綺麗な世界を教えて貰った。

 花の咲く草原で、母は静かに微笑んでいた。


 綺麗なことを教えてくれた彼女は、もっと綺麗なのかな、なんて。母をもっと知りたくなった。

 ある日僕は、母を殺した。

 いや、殺そうとして殺した訳じゃないんだ。本当だよ?

 でも僕は、あの頃人が死ぬということを知らなくて、ただ知りたかったから母の胎を切り裂いた。ぐちゃぐちゃにして、中身をとって。そしたら、勝手に死んでしまっていたんだ。可笑しいだろ?


 それから僕は、この綺麗な世界の全てを知りたくて仕方がない。

 誇り高き銀の狼、鱗粉を蒔く蝶々。

 スキル、行動パターン、洗練された仕草、中身。ちゃんと全部見極めた。

 綺麗なこの世界の真理を知ろうと、スキルの取得条件やランクの上がり方を知った。そして手に入れた称号が、【世界を知る者】。この称号のお陰で、幾分かは満足した。

 けれど、まだ足りない。

 ある程度まで理解してしまったがために、知ってしまったがために。もっと、と欲した。


 そしてある日、僕は興味深い少女に出会う。

 天使のように羽を生やした、珍しい黒髪の少女だ。

 その少女はとても純粋で、綺麗で。

 知りたかった。少女の知らない少女すら、知り尽くしてしまいたかった。


 だから僕は、少女を助けた。世話をかって出た。少なくとも、少女の全てを知るには時間が要りそうだったし、きっと理解するのは無理だと思ったから、長期間を覚悟して、【永遠の誓い】をした。


 今まで出会った誰よりも、興味深い人材だ。

 僕の人生を捧げると、守ってあげると誓ってしまったから。精々楽しませてくれるまで、彼女を奪われる訳にはいかないんだよ。

 それに……。ううん、僕は頭を振る。今はそんなことを考える暇なんてない。


「安心して、彼女に危害を加えるつもりはないし、そんなことできない。……さてと、掃除の時間だ。さっさと終わらせようか」

「その言葉、……いいや。今はいい。彼女が起きる前に、終わらせてしまおう」

「《転移》」


 全く、【世界を知る者】は本当に便利だよ。自らが一番だと、驕ってしまいそうになるぐらい。


 転移魔法陣の上で、僕らは静かに得物を構える。楽だといいのだけれど。


「お掃除の時間だよ?」


 ーーーー

【世界を知る者】

 効果:職業「考古学者」の取得スキルのレベルが+500になる。


 ちなみに「考古学者」になった時、スキル《隠密》《鑑定》《転移》《索敵》などなどが手に入ります。いや、チートやん。

 あと、わりかし物騒なことばっか言ってたテオ様が羽をしまう

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 ちなみに「考古学者」になった時、スキル《隠密》《鑑定》《転移》《索敵》などなどが手に入ります。いや、チートやん。

 あと、わりかし物騒なことばっか言ってたテオ様が羽をしまうのに残念がったのは、天使みたいな少女の格好が綺麗に見えて好きだったからです。やだテオ様サイコパス。

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