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第十一話:生き延びる為に


 衛兵に挨拶をしてお金を払い、町に入る。

 ちなみにこの世界では、自分の生まれた国、住んでいる場所以外の国や都市に入るためにお金が必要なのだそうだ。そんな制度あったら破産しそう。


「本当に無知だねぇ……。INTだけ高かったから、覚えはいいんだろうけど」

「そういえば、私のステータス教えてくれないんですか?」

「宿ついたら教えてあげるよ」

「オラァッ」

「?!」

「はいごめんね〜」

「グハァッ」

「?!」

「ちょっと、早く歩いて」

「待って??」


 今何が起きたのか本当に把握できなかった。

 なんか話してたら変な人が切り掛かってきて、驚いて目を瞑ったら次の瞬間には倒れてた。

 いや、何したんや。


「ランクが高い奴は顔が知られてるからね。僕が余りにも弱そうだったから襲ってきたんじゃない? たまにいるよ、こういうの」

「あぁ、ランク上位者に勝ったら自分のランクが上がりやすいから……」

「そゆこと」


 なるほど、上位者になるとこれだけ狙われやすくなるのか……。それにしても、町で狙うなんて物騒な奴だな。


「にしても良く避けられましたね。奇襲でしたけど」

「町は皆気が抜けてるからね、よく狙われるんだよ。宿の中も安心はできないから、気をつけてね」

「嘘やん」


 そう考えるのか。町でぐらい休めばいいのに……。

 いや違うか、町の人を殺してランクを上げるのを主流にしてる奴らなんだな。


「あ、じゃあ同じ部屋取るんですか?」

「は、何で?」

「宿の中危ないって言ったじゃないですか」

「夜襲を躱す方法、教わらなかったの? マジで君の親は何してるのさ」

「ちょっと待て」


 この世界の常識おかしすぎか。

 親から夜襲を躱す方法教わるって怖すぎるだろが。


「はー。ここまで護衛が大変な相手って初めて見るよ。まぁステータスの時点でわかってたけど」

「どんな感じでした?」

「INT以外ゴミ」


 ゴミ……ゴミって……。


「やっぱり別室のが良さそうですね」

「君って自殺願望者だっけ」

「そこまでいうか」


 いや、だって夜襲とかそんなにあるなら慣れときたいですし。というか高ランク者と一緒にいる私も狙われそうだから、せめてちょっとは強くなっておきたいし。


「まぁ、やばくなったら叫びますから」

「叫ぶ暇とかあると思ってる?」


 怖。叫ぶ暇ないとか……。どんだけこの世界の人たちは屈強なんですか。


「まぁいいや、隣から気配消えたら嫌でもわかるでしょ」

「わかりませんって」

「君って捨て子?」

「めっちゃきちんと育てられましたよ」

「礼儀はいいよね」


 ふぅん、とテオは頭の中で考える。


 彼女は謎が多すぎる。

 自然取得スキルを今でも取得できるのをスキル《幸運》の効果と聞き納得したと思えば、スキル自体が少ない。自然取得スキルが無限にあるなら、彼女はもう百以上のスキルをものにしている筈だ。

 まずスキル《幸運》がレベルカンストしてるって事実がおかしいし。

 それに、スキル《幸運》以外はどれもレベルが低い。その割に称号は多い。

【蛇神の加護】とか、取得条件謎だったのにしれっと手に入れてるし。

 あと、初めて見たのが【神に愛されし者】って称号。効果は、神々を味方につけること。味方につけた神をいつでも召喚できること。

 これは、蛇神を撫でただけで称号を手に入れたことからわかる。

 本当に、何故こんな世を知らない少女がこんな化け物みたいな称号やスキルを持っているのだろうか。それに、生まれた頃からここにいるなら、ステータスがもう少し高い筈……。

 珍しい黒髪のこともそうだし、探ることは多そうだ。


 ちらりとアイリを見る。

 ……羽に埋もれていた。


「何してんの?」

「いい加減翼隠したくて」

鳥人族ハーピィに見えるし大丈夫だよ」

「羞恥心的な問題です」


 とりあえず全鳥人族ハーピィに謝ったほうがいいと思うよ。

 うん、と全種族歓迎の札がついた宿の前でそう思う。


「今日は此処で泊まるから。いくら?」

「あ、私お金ありませ「知ってるし、期待してない」……さいですか」


 宿の中に躊躇いなく入るテオさん。それに付き従う私。

 言いながら金貨の束を出したテオさんに、おや、と首をかしげる。

 金貨って凄い高価な気がするんだけど……。今、目算で100枚は出しませんでした?


「金貨って、此処だと安いんですか?」

「な訳ないでしょ。()()だよ。貨幣価値も知らないとか……。あとで教えなくちゃね」


 ちなみに金貨30で安い奴隷が一人買えるよ、と聞いて、二重の意味で驚いた。

 口止めにどんだけ使ってんだってのと、貨幣基準に奴隷の値段使うんかい、という驚きだ。

 この世界は本当に元の世界と何もかもが違う。

 そう考える私の横に、ススッと近付く、豚が立ったような形をとっている生物。確か、オークって言うんだっけ? テオさんに姿勢を低くして話しかける。宿主さんかな。


「大切にされていますねぇ、テオ様」

「うっさい。今回のはどっちかというと厄ダネだ。下手すりゃ世界のバランスが壊れる。丁重に扱え」

「了解ですぅ……。ささ、黒髪の嬢様、こちらへ」

「手ぇ出したら殺すからね」

「わかっておりますよ、テオ様ぁ……」


 直後、オーク? の宿主さんに優しく手を引かれた。物騒なことも言ってたけど、これは行ってもいいんでしょうか……。

 ちらりとテオさんの方を見ると、行って来い、と手で示された。

 よし、彼が言うなら大丈夫だろう。


 よろしくお願いします、と言って頭を下げ、ついていく。


「おやおや、随分と礼儀が正しい御様子でぇ……。そちらはお客様なのですからぁ、我々を小間使いの様に働かせて頂ければいいのですよぉ?」

「いえ、ここで不快な思いをさせたくはないので。自ら敵を作るような愚かな真似を、私はしたくありません」


 私の元いた世界からすれば、この国は異常も異常だ。

 殺し合いは当たり前、多分駆け引きなんかも当たり前。それを当然として受け入れきれてすらいない私に、敵を作る余裕なんてない。

 媚を売って、諂ってでも。ここで生きる術を身に付けなくては。


「そうですかぁ、余計なお世話でしたねぇ」

「いえ、むしろお気遣い感謝します」

「お気遣いぃ……? もしかしたらぁ、貴方と共にいるテオ様にぃ、媚を売りたいだけかもしれませんよぉ?」

「そうですか、それでも構いません。打算と情操は別でしょう」

「……」


 宿主は、それを聞くと、にっこりと笑った。


「ではまずぅ、その翼を蔵う方法を教えて差し上げなくてはぁ」

「お願いします!!!」

「余程困ってたんですねぇ……」


 食い気味で言う。当たり前だ、これで森の中でどんだけ苦労したと思ってるんですか。


 よろしくお願いします、もう一度言って頭を垂れた。



 自分的にこのオークも気に入ってます。見た目は豚がたって言語を喋っている感じです。テオ様との関係的に、なかなか美味しい立ち位置だと思うんですよ。


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