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第九話:奇跡的方向音痴

 町に降りると目立つだろうか。

 そう考えて、森の端に降りたはいいものの……。


「どうして、一向に町につかないんですかね…?」


 町には東に一直線で着くはずだ。

 なのに、歩いても歩いても見当たらない。出口が見えない。

 森は方向がわかりにくいとは言うけれど……。と思い、目の前の風景を見つめる。

 いや、これは流石におかしいでしょう。


 私は森に降りた時、まず最初に羽をたたむ方法を考えた。だが、何をしても開いては閉じ、開いては閉じを繰り返すだけだ。

 仕方ないので諦めて進んだ。

 羽がめっちゃちくちくした。


 どうやら木に羽毛がくっついてしまう様で、至る所に羽を撒き散らしながら歩いていたのだ。

 で、今の私なわけだが。


「戻って来てますやん……」


 目の前には、ちょっと引くくらいの量の羽が散らばっていた。

 正直ごめんなさい。地域のゴミ拾いの人とかに迷惑かけるな……。


 じゃなくて。

 そう、問題はこれなのだ。戻って来ている。

 私がもし究極の方向音痴だとしても、東に向かって進んでいたのに森の中一周してました、とはならないだろう。

 そんなん逆に奇跡だわ。


「一回空にまた飛びますかね……。いや、木に羽が引っかかって終わりだな」


 降りるときは、木の枝を飛び移りながらなんとか着地できたが、ここから最初の木の枝に飛べるかも怪しい。うん、無理だな。

 最初から町の方へ行っときゃよかった。


 後悔はしたものの、今更だ。一度休憩を取ろうと近くの切り株にへたり込む。

 そういえば、切り株は沢山あったけれど、ここにはよく人が通るんだろうか。迷いそうなものだけれど。


 誰かたまたまここを通った人が助けてくれないかなぁ、と考えていると、いきなり体に異常を感じた。

 異常というか、違和感?

 誰かに見られてる様な、超至近距離で人に囲まれてる様な……。


 気になるなぁ。

 そう思って、振り切るように思いっきり体をよじる。

 ばちっ!


「わっ」


 大きな音がしたのと同時に、違和感が消えた。

 一体なんだったんだろう。

 薄気味悪いので、とりあえずここから動こうと、そそくさと立ち上がる。

 いや、立ち上がろうとしたのだが。


 あ。倒れる。

 貧血がおこったのか、急に体が重くなって、切り株にまた座り込む。

 と、同時に、何かが私の真上を通過した。

 後ろを見ると、木にぶっさりと刺さっている矢が。


「……」

 とりあえず手を挙げる。降伏のサインだ。

 すると、またあの違和感。

 体をよじって拒否。ばちっ。

 今度は足元に矢が突き刺さった。


「……」


 いや、詰んでますやーん。

 あの違和感、なんか嫌なんだよな。自分を見透かされそうな感じ。

 でもこれもう一回拒否ったら私死ぬよね? 死ぬ感じだよね??

 既に一回死を経験しているものの、怖い。めちゃめちゃ怖い。


 あ、また違和感。どうしよう、拒否? 拒否しちゃう?

 怖すぎておかしなテンションになってしまったが、冷静になっても、拒否したほうがいい気がする。


 だって、考えてみ?

 この得体の知れないのをこのままにしてたら、体操られちゃうかも知れないんやで?

 ぶっちゃけそうじゃない可能性のが高いけど、戦闘とかない平和な国でぼけっと暮らしてた私ですら違和感を感じるものなら、受けないほうがいい気がする。よって、拒否。


『スキル《思考》を取得しました』

『スキル《恐怖耐性》のレベルが上がりました』


 あ、また新しいの手に入れた……。

 思考って、そのままだな。頭使ったら手に入るのかな。

 とか思ってるとまたヒュッ。はい今度は左に矢が入りましたー。当たりませーん。


 うん、テンションおかしい。

 というか、向こうにいた頃だったら矢で狙われるだけで絶対正気失ってたのに、全然大丈夫だな……。

 スキル《恐怖耐性》のおかげか。

 このスキルなんの役に立つんだろうとか思ってごめん。大切に扱います。


「興味は、あるんだけどねぇ……」


 おっスキルさんこんにちはー!今度はどんなスキルを落としてくれ……。

 いや待て、〇〇スキルを取得しましたって言ってくれるのって誰なんだろう……。今まで気にならなかったけど、神様とかが言ってんのかな。


「危険だよねぇ。《鑑定》弾いてたし」


 スキルさんスキルさん、貴方は誰なのー……。

 ってちゃう、これ違う人や。

 え、さっきから私のこと狙ってる人か?


「まぁいいや。撃つか」

「待って!?」

「あ、聞こえてた?」


 そんな声とともに出てきたのは、一人の少年。聞こえてた? なんて言いながら笑って出てくる辺り、わざとなんだろうな。


「僕の縄張りに入るなんて、と思ったんだけれど……。《鑑定》を弾かれたのなんて久々だからね。興味が湧いてしまって」


 お茶でもしない?

 にっこり言われて、これ私に拒否権ないんですよね、と渋々頷いた。


「……返事は?」

「はいっ!!」


 頷いたからその手の物騒なものを離そうか!


 こういう理不尽なキャラめっちゃ好きです。(知らんがな)

 ちなみに、貧血じゃなくてスキル《幸運》が働いた結果です。ナイス。

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