鏡の中の恋人
鏡の中の人に君は恋したことはあるだろうか。
鏡の中自分しかあまり見ないという人も多いだろう。
しかしよーく嘗め回すように見てほしい。あるいは遠くにあるいは近くに恋はあるかもしれない。
光の反射でいつもよりかっこよく見えると嬉しくなる。
そういう時はいつも僕自身『ジーッ』と自分を眺めてしまう。
ナルシストではないが何か自分に魅せられるのだ。
こういう時は顔も洗うのもおっくうだ。
「ほらさっさと顔洗いなさい!」
ああ・・今日も幻想が崩れてしまう。
『ザバザバッ』と洗っているとき
ふと誰かの目線を変な方向から感じたこの物語はここから始まる。
『あーたね!あと詰まってんでしょ!そんな眺めるもんでもあるまいし』
実は顔を洗った後も鏡の中が気になっていたのだ。
何か僕を見初める瞳のような‥‥
『な~にぽーっとしてんのさ!早く飯食いな!』
そうさっきから騒がしいのは俺のカーちゃん。
きっと勉強のもできないのに対面ばっかりに目が行っていたので腹に据えかねたのだろう。
いや実は違うこの年(22)まで彼女なしの俺に元気を出してほしくて
あんなに声を‥‥ああ虚しいやめとこ・・・・
僕には思い当たる不思議なことがあった
第一に鏡の中からみられているという確証をなぜか持てたこと
後ろに立っている視線とはまた違ったのだ。
第二に視線は僕にあってかわいかったという予感!
何チュープラス発想だコノヤローとか思うがマジだ!
第三に助けてあげたいと思えたこと。・・・なんでだろうな‥‥
まあ今日はおとなしく学校に行って帰ってきてまた鏡を見てみよう!
っていうか大学にも鏡はあるような?でもみんなの前だと恥ずかしいし…。
何照れてんだよ‥‥と一人漫才してやっぱり帰ってからという展開に落ち着いた。
あ~彼女ほしいなー。この年まで女の子に声をかけることが苦手で
ついにここまで来てしまったしかも今年は就活。
手だけでもつないでみたいな‥‥ううっ。
でもなんか鏡のあの子を考えると暖かくなった。
ついでに名前なんて付けてみたりして
岩崎って親友がいるんだけどそいつにだけは話した。
『ふ~んそっか』
とんだ奇想天外な話でも落ち着いて聞いてくれるとんでもな親友だ。
『でもな~お前の事情だろ~助けるって、一歩譲って助けてほしいって言っていたとしても
事情が複雑そうだから責任は取らないとな』
『そうだな!責任か…まず鏡の子のしてほしいことを考えてみるよ
また会えるかはわからないけれど。それが責任の一歩目だと思う』
『大事なんだろ早く言ってやれ!』
ありがとうな岩崎・・・と心で感謝しつつ
ダッシュで家に帰った。
『ただいまー』
『おかえりー兄ちゃん』
鏡の前に行くのがこんなに緊張することはない
そしたらさ…あの子鏡の中の奥のほうに小さく座っていたんだ。
背後を見ても姿はないからやっぱり鏡の中だった。
俺は必死でしゃべりかけた
『僕じゃだめかもしれないけど何かできることはないかなと…』
そしたらあの子泣いてた。