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ギルドであった、テンプレ乙!

 3月2日 本文の改稿を行いました。

 門番の兄さんの話から、メリッサとルーナが奴隷であることが判明した。最早、諦めの境地は突破している。天元突破か??

 今のうちに、奴隷に関するアレやコレを確認しておかないと、失敗すると確信している自分自身に落ち込む。


「なあ、奴隷って『冒険者登録』は出来るのか?」


 俺はギルドまでの道中、改めて奴隷になった2人に話しかける。冒険者登録は身分証明としての考えより、2人を守るため──という側面の方が強い。この世界はレベル制であり、姉さんから聞いた話では『高レベル=偉い人』的な図式が出来上がっているらしい。

 それを聞いた俺は「その通りだ」と思った。レベル1の村人が、レベル99の戦士に勝てるか? という話である。結構大袈裟な例だが、同レベルでも一般人と冒険者ではステータスの差が大きい。


「たしか……登録は出来ます。ただ、私たちは奴隷です。アス様以外の方と組むことは、不可能だったと思います。これは、高ランクの冒険者になっても変わらないと聞いています」


「そうだな。そこには『所有物が勝手に動くのは不味い』という、ギルド側の判断からそう決まっている。アス殿も覚えておいて欲しい」


 ルーナの説明に、メリッサが付け加えて教えてくれた。より詳しく話を聞いていくと、奴隷は契約により犯罪を犯せないが、当然ながら抜け道は幾つか存在する。奴隷持ちの冒険者は短気な人間が多く、乱暴者で性欲が強い傾向にあるらしい。

 その話を聞いた俺は、『俺も結構性欲(そっち)はヤバイかも。2人のような美人を隣に侍らせて襲わない自信がない!!』という思いを顔に出していたらしく、腕に抱きついてきて「優しくして欲しい。平等に愛して欲しい」という、ハーレムを築きたい男にとっては有り難い言葉であろう。

 俺の場合は、率先してハーレムを作るのではなく、"性欲に支配されて(流されて)"しまった結果……増えるというオチではないかと冷静に自己判断していた。


 ああ、彼女たちだが話の流れのように、俺の奴隷となった。実は、金銭的に安いなら解放しようと思っていたのだが、解呪料が"金貨10枚(100万円)"するそうで、「不可能だろソレ!!」と内心突っ込んでしまった。

 ──ちなみに、同レベル・同性で比較すると、メリッサの価格は『金貨50枚(500万円)』で、ルーナは稀少な純血エルフのため、『最低金貨150枚(1500万円)』するそうだ。この金額自体も、処女でない場合なのでもっと高いそうだ。

 ついでに俺が奴隷になった場合の金額を聞いたら、『最低金貨160枚』と意外にもルーナの金額を越えた! 詳しく聞くと、男性の純血エルフは"100年に1人"くらいと貴重で、売りに出せたら奴隷商としての格が高くなるらしい。


 俺の判断では決められなかったので、2人にどうするかを確認した。簡単に言って、『一生俺の奴隷となる』か『金持ちに買われる』かを2人決めさせた。

 俺は、冒険者としてやって行くと決めた以上、彼女たちにも同じように危険に飛び込んで貰う必要があるからだ。

 予想外だったのが、2人が迷わず俺の奴隷となる道を選んだことだ。その判断が、損得勘定から来ていたとしても構わないか……と思っていた俺には、先程のように2人の美人に抱き付かれたことに、少しだが戸惑った。


 2人の決断を受け取った俺は、正式な奴隷契約を行うことにした。奴隷商()での購入ではないので、仲介は必要ないらしい。2人に奴隷紋の刻み込まれている襟元(鎖骨の下くらい)を開けてもらい、其処に主人となる"俺の血"を擦り付けると、隠されている紋章が起動して契約が実行される──らしい。(門番の兄さんも噂でしか知らないそうだ)

 血による契約が完了した2人は俺の奴隷になり、これから共に冒険者として活動することになる。彼女たちの登録と、俺の依頼完了報告を一緒に行う流れになった。


 奴隷に関する詳しい話は今夜、宿? で落ち着いてから話してくれるそうだ。(何故、今じゃないのだろうか? 俺には、|ファンファンのお・う・ち《アレ》を宿とは認識できない!!)




 ──ギギィ──


 ギルドの扉を開け、中に入ると受付の姉さんと目が合った。


【気のせいですね!】


 相変わらず、絶好調のシステムにへこまされながら、姉さんのもとに歩いて行く。メリッサとルーナの2人は、俺の1歩後ろを歩いている。確認したところ、街の中で主人の前を歩くことは不敬罪らしい。面倒なことである。


「すみません。依頼の完了報告に来ました」


「もぅ──砕けた口調でいいって言っているのに、なんで言うことを聞いてくれないのかな?」


 姉さんは心持ちほっぺを膨らませる。綺麗な人がすると絵になる。そして、俺には野郎共の熱い視線が突き刺さる。そんな状況で萎縮していると、姉さんの視線は後ろに動いた。


「後ろにいるお嬢さんたちは?」


 俺は何故か"ヤっちまった感"をヒシヒシと身に感じながら、森であったことを話した。彼女たちが奴隷であることを周囲の人間が知ったとき、俺に突き刺さる視線が更に増した。

 お約束だとしても、ちょっとは勘弁して欲しい。



「──なるほど、そう言うことなの。えーっと、彼女たちは"犯罪奴隷"ではないので、登録に問題ないわ。こちらの用紙に記入してくれるかな?」


 お姉さんは2人の奴隷紋を確認してそう言った。机の下から用紙を取り出すと、メリッサとルーナに記入するようにと渡した。

 奴隷になった為、メリッサは以前の登録記録が抹消されるそうだ。これは、奴隷が主人より高位だと不味いという判断からギルド主導で行っているそうだ。


「記入している間に、依頼完了の手続きをするわね」


 姉さんに言われるがままに、カードを胸元から取り出し渡す。受け取ったカードをカードリーダーっぽい物体に差し込むと、ピー、ウィンウィンー…っと音が鳴る。受付をした時は気付かなかった。


「──お待たせ。これが報酬で、内訳は次の通りよ。

『薬草採取』が銀貨1枚、『ゴブリン討伐』が銀貨5枚、特別報酬に当たる『ソード・ゴブリン討伐』が大銀貨1枚の──合計大銀貨1枚と銀貨6枚ね。確認してね?」


 今日一日の収入が"16000円"になった。これは稼げた方だろう。過去最高ニートだったけどの収入だ!


「はい、問題ないです。この収入って、多いのでしょうか?」


【聞かなくても"多い"事は分かるでしょう?】


 呆れたようなシステムの声だが、俺の狙いはそこじゃない。ある意味でもっと切実で、お約束のバカ対策である。


「(最下位のFランクが、偶然ながらも奴隷を連れているんだぜ? 普通に考えても"常識なし"がいて、手を出そうとするバカがモノを言ってくるだろ?)」


 俺は逆に呆れた。こんなことは簡単に予想がつくからだ。


【それは「テンプレ乙!」ってヤツですね?】


 ──来て欲しくないけどな!


「ソロだと1000~1500円がいいところでしょうか?

 6人パーティでも、Fランクだと12000円くらいですかね?」


 姉さんの言う6人パーティより、多く稼いだらしい。メリッサとルーナの宿泊費とかの出費はありそうだが、俺は彼女たちを同じラインで扱うつもりだ。(食事とかに関しても)


 ──日本人クオリティってヤツだ。(独りぼっちだけど)


 彼女たちの登録が終わった。帰る前に思い出したことがあるので、姉さんに確認しよう。


ファンファン(あそこ)って"奴隷がダメ!!"とかはないですかね?」


スキンヘッド(あの人)なら「きゃわい~い、娘たちねぃ~」と、気にしないのではないでしょうか?」


 簡単に想像できるだけ、質が悪い!! それでもあの宿以外に、泊まれるほどの贅沢は出来ない!!

 他の宿の料金をメリッサに聞いたところ、だいたい3000円が相場らしい。


「それじゃあ、俺は宿に帰ります。パーティ登録は明日でお願いします!」


 そう言って帰ろうと踵を返したら、目の前に"悪人面"の男がいた。パッと見、アホというイメージしか湧かなかった。


「おい! 小僧!!」


 俺は無視したかったが、姉さんがこんなことを口にした。


「彼は『Dランク:半人前』になったばかりの冒険者です」


 堂々と言ってる姿勢はカッコいいのだが、その"Dランク:半人前"って言うのは大声で言っていいのかよ?

 そら見ろ、顔が真っ赤になっているだろ? 茹でタコのように真っ赤だ! でも、体格をみるとタコよりもブタだ。レッドオーク!!


「そこの奴隷は、オレ様が可愛がってやるから、ありがたく置いていきな!!」


 何を言っているんだろう? この肉団子。丸くデカいのは体だけにしておけよな! 顔から滴り落ちた脂汗が、床で輝いている!?


 ──睨み付けているんだが、全然怖くねぇ。それよりも、床を拭け!!


「Dランク"ソロ"ですと、コボルトを1対1で倒せるくらいです。ああ──ちなみに、ソード・ゴブリンには"余裕綽々"で殺されます」


 姉さんはさっきから、この肉団子の痛いところを抉っているんだが、天然か? それともわざとか?

 ドンドン真っ赤に染まっていく顔を眺める。


「アス殿、ソード・ゴブリンはCランクの冒険者でないと、確実に死ぬモンスターなんだ」


「そんな腕でよく、アス様に食って掛かる自信があったものですね?」


 メリッサがさらに抉り、ルーナが止めを指す。メリッサのアホ毛が「うんうん」と言いたげに上下している。


【肉団子は、改心の一撃を受けた!! 瀕死のようだ!!】


 俺にしかシステムの声は聞こえないのだが、実況しなくてもいい!!

 なんで傍観者のアンタが、1番ノリノリなんだよ?


「貴様ら! この"ザコリオン様"に楯突く気か!?」


 この時点で俺の腹筋は限界に達した!

 ツッコミを入れることの出来る状態ではなかった!!


「ー…ブフォ!! ザコリオンってなに!? 雑魚モンより弱いの!?」


 思いっきり、吹き出してしまった。腹がイタイ──。


「【Dランク:半人前】でザコリオンって完全に咬ませ犬(・ ・ ・ ・)負け犬(・ ・ ・)なんじゃないのか?

 それにこういうのって、もっと高位のヤツがするもんだと思っていた!!」


 半人前が睨み付けても、チワワのウルウル瞳の方が100倍手強い!! 俺の口は大きく開かれ、目尻からは涙が流れてきた。


「Cランク以上の冒険者には、能力の他に相応の人格が求められるのでソコの『雑魚(ザコリオン)様』のような方では、ランクアップ出来ませんね♪」


 姉さんの言葉が、完全に"雑魚"と聞こえてしまった!


【なかなかヤりますね! 彼女はライバル認定です!!】


 ──張り合うな、システムよ。


 当然のことながら、俺の心の声は無視された。

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