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こんなスキルはないでしょ??

 2月27日 本文の改稿を行いました。

 俺は、生まれて初めての命懸けの戦闘を体験した。日本にいた頃は、そんな経験をすることはまずない。あったとしてもケンカくらいではないだろうか?


「ゴブリンをあと4匹も殺さなきゃいけないわけか──」


 人間じゃなくても、人型を殺したことに対する忌避感はない。

 ある意味で動揺はしていた。それよりも大きかったのは、命懸け戦いを切り抜けた安堵と、興奮だ。

 この興奮は恐らく、生存本能が活性化したことも原因の1つなのではないか? と少し、理知的(お利口)な事を考える。


【──まったく、性欲全開で女性を襲わないでくださいね!?】


 突然のツッコミに驚くと、つい先程までブツブツ言っていたシステムが、いつの間にか再起動していた。怒っているとか、不満があるではなく、なんとなく開き直っている気がする。


「俺は、そんな性的異常者ではないぞ?」


 コイツの言葉に突っ込み返す。周囲の警戒を怠らず、俺は反論する。紳士的……とは言い難いが、これでも純愛や、情熱的恋愛をしたいと思ってはいる。

 それに、俺はシステムがキッチリ仕事をしてくれたなら、もう少しは楽に勝てたハズだ。


「──だいたい、さっきの戦闘なんかお前は"ブツブツ呟いてた"だけだろ? 本当に俺を貶すこと以外では、役立たずだな」


【そ、それは違います! そう! あれです!!

『獅子は我が子を谷に突き落とす』って言うヤツです!!】


 言い訳を始めたシステムに対し、俺は半眼になってしまう。それに気付き、周囲に誰もいないのに確認してしまう。森の中でも人目を気にしてしまった自分に呆れる。


「──ったく、自分も焦っているっているって言うのかよ?」


 俺は誰に愚痴るでもなく、ボソッと呟いた。

 薬草自体の採取は、それほど時間をかけずに終わった。あとはゴブリンだが、今のところ──最初の1匹以外は見かけていない。


「なあ、ゴブリンってこんなに少ないのか?

 俺が知っているのは、物語の中での事になるんだがもっと多い記憶なんだが?」


【わかりませんー…と言いたいところですが、少しばかり異常です。だいたいゴブリン自体が『約1ヶ月で生まれ、半月で繁殖可能』な状態まで成長します】


 ……ってことは、ゴブリンが1ヶ所に集まっているか、捕食する何か(・ ・)がこの森の中にいるってことか? ヤバくね?


【その通りです! もし、ゴブリンが集落を作っていたら……今の貴方では"簡単に死んでしまいます"ね♪】


 俺が死ぬって事を、楽しそうに言わないで欲しい。まあ、スキルの〈逝忠気枡(いただきます)〉がある以上、少しは強くなれると思うが──。


「近辺のゴブリンをサーチすることは出来ないか?」


【出来なくはないですが、結構面倒なんです──。

 今回だけ(・ ・ ・ ・)ですよ?】


 "名前に偽りあり"ってかよ! 『ヤル気セット』じゃなくて、『ヤル気ないセット』が正解なんじゃないのか?


 しかし、珍しくシステムが仕事をしてくれるようだ。


 目の前にレーダー画面が映しだされた。中心点は俺で、正確な距離は分からないが、3本目の線が引かれているところに『5つ』の反応があり、さらに色が付いている。線1つがどのくらいの距離だ?

 それに、光点は色分けされている。赤・青・黄色・灰色……と4色並んでいる。数は赤3、青2、灰色4である。


【線1つが1kmになります。ですので、ゴブリンがいるのは3kmほど先になります】


 光点にある赤は『敵』ということか。逆に灰色は『死亡』という可能性が高そうだ。


「今の時間からだと──閉門まではギリギリか?」


【貴方が軟弱過ぎるから、時間的な余裕が無くなるんですよ?】


 ──復活したシステムは、絶好調らしい。何時もよりセリフが少し辛辣に思うのは、コイツが大人しかったせいだと思いたい。


「……よし、コソコソと移動しよう!」


【顔をキリッとしても、言っていることはショボいですよ?】


 真面目に判断したつもりだったんだが……そんなに気に入らないかなぁ? 俺にはコイツの考えが、理解できない。

 不要な音を立てないように注意しながら、森深く進入していく。


「差し足、抜き足、忍び足────忍べないのは仕方ない」


【まったく、何をしているのですか? 女を追いかける軽い尻より、何倍も軽い口を閉じてください!】


「失敬なヤツだな。俺がいつ、女の尻を追いかけた?」


 いい加減なことを言わないで欲しい。確かに"女体の神秘(おっぱい)"に惹かれたけど、断じて尻を追いかけてない!!(今のところ)


 自分の腰くらいまである雑草を潜り抜け、少しずつでも前に進んでいく。足元がデコボコして、かなり不安定だ。滑らないように注意しないと──。


 ………

 ……

 …


 目標のポイントに着いたのは、30分後だった。

 遅いって? 無茶を言わないでくれ……。物音を立てないように移動したせいで、予想以上に時間を喰うわ──崖から滑り落ちそうになるわで、体力的・精神的にも疲れた。


 現在、目的の場所が見えるポイントにいる。金属音が聞こえてくる。


 カン! キィン! カッカン!!


 ソッと樹の幹から顔を出し、向こうの様子を見る。そこには2人の女性がいた。

 1人は、ローブを着た"魔術師っぽい"女性で、肩で呼吸をしている。パッと見、スタミナ・MP切れだろう。

 もう1人は、剣──恐らくは片手小剣(ショートソード)と判断する。遠目で断言できないが、武器屋で見たモノを記憶している。日本刀(カタナ)に次ぐ、男のロマン武器だと俺は考えている!


(──アレって、やばくねぇ? 左右に2匹、正面には2回り近く大きいゴブリン……このままでは、『詰み』ってヤツか?)


 冷静そうに見えるが、この状況に戸惑っている。数が5匹のゴブリンの集団にランクアップしていたからだ。


【ソード・ゴブリンだと推測します。詳しいことは、自分で調べ下さい】


(下らないことを言ってないで、さっさと情報を出せよ!!)


 心の底から吠える。例え俺が無力でも、見殺しにするのはガマンならない!! 相手が美少女だしね!!


【──はぁ。今回だけですよ?】



 ───────────────────

 ゴブリンA・B

 LV2


 HP:22

 MP:0


 力:5

 体:6

 速:5

 魔:0

 ──────────────────────

 ゴブリンC・D

 LV4


 HP:36

 MP:0


 力:8

 体:10

 速:8

 魔:0

 ───────────────────

 ソード・ゴブリン

 LV1


 HP:126

 MP:0


 力:27

 体:36

 速:27

 魔:0

 ───────────────────


 うん。格上でした。ちなみに、現在の俺のステータスはこちら。


 アス

 LV2

 HP:26

 MP:54


 力:10

 体:10

 速:11

 魔:18


 ──どうすんべ(笑) 一応、ゴブリンどものステータスを奪えば、なんとかなるか? そうすると、右側で囲んでいるゴブリンから倒すか!

 俺は早速行動に移る。なるべく姿勢を低くし、足音を立てないように歩く。カサカサっと小さな音が出てしまうが、向こう側から聞こえる金属音の方が大きいので、分かりにくいと思いたい。

 藪から顔を覗かせ、向こうを見る。ちょうど裏に回れたようだ。目の前のゴブリンは、女性たちの方に気をとられている。


 一番輪の外側にいるゴブリンに手を伸ばし、コッソリと藪の中に引きずり込む。口を手で塞いでいたので、叫ぶ声を上げることは出来なかった。

 ナイフで喉を突き刺して一撃で殺す。死んだゴブリンは、光の粒子になり消え去る。


【スキルが発動しました】


 地面に転がったビー玉を摘まみ、口に放り込みプチっと噛む。


【スキルが発動しました。ステータス・スキルを適応しました】


 どうやら、他のゴブリンは気付かなかったようだ。


【ゴブリンって、貴方以上にダメダメですね】


 ──暗に、俺がダメと言いたいのか?


 2匹目も同様の手順で殺すとレベルが上がった。ドロップしたビー玉を口に放り込み、反対の左側のゴブリンの排除に向かう。

 移動中、確認のために顔を上げたときに、魔術師っぽい女性と目が合ってしまう。口に指を当て「シー」とゼスチャーする。

 女性が頷いたのを確認したら、俺は移動を再開する。


 ゴブリンC・Dも同様の手順で殺し、ビー玉を食べると新しいスキルを獲得した。


【条件を満たしました。スキル〈黄金率はプニ・ペタ・ストン〉が解放されました】


 俺のスキルは、ドンドン変なモノが増えていく……。心が血涙を流しているような気がする。俺の目から汗が流れていないといいけどな……。

 ゴブリン4匹を倒したことにより、俺のレベルも上がった。


 ─────────────────

 LV5

 HP:180

 MP:90


 力:42(+32)

 体:48(+38)

 速:43(+32)

 魔:30(+12)


 ユニークスキル

【ヤル気セット】

 システム鑑定

 ヤル気

 ヤってやるぜ!

 黄金比はボン・キュ・ボン

 逝忠気枡(いただきます)

 黄金率はプニ・ペタ・ストン

 ??


 スキル

 〈異種族交配〉LV2 (3/20)

 〈肉体美〉LV2 (3/20)

 〈剣技〉 (8/10)


 アーツ『飛刃』

 ───────────────────


 これで、ソード・ゴブリンと戦う準備が終了した。ステータス的には4倍近くは強くなった。唯一の欠点は、戦闘経験が少ないことによる『チグハグさ』なのだが、これから頑張って埋めていこうと思う。


「「キャアァァァァァ!!!!」」


 剣士の女性は受け止めきれず、壁で止まるまで吹き飛ばされた。ドン! と音がして、ガサガサっと上で生えている樹の葉が擦れる音がした。

 起き上がらない様子から、気を失ったのだろう。


 1つ大きく深呼吸すると、ソード・ゴブリンに向かって藪から飛び出し、全速力で走った。

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