表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

依頼を受けよう!

 8月4日 誤字の修正しました。


 2月24日 本文の改稿を行いました。

 朝が来た。窓の外から射し込む太陽の光は清々しさを感じさせるのだが、俺の心は曇天模様である。原因はこの部屋にある。


【それにしても、なかなか手の込んだ部屋ですね!】


 システムのヤツは思いっきり感心している。基本的に他人事だしな! コイツは楽しんでいたようだし。(主に、ダメージを受ける俺を見て)

 昨日、宿の前で姉さんに腕を引かれて扉を潜った時、入り口周辺からしても普通ではなかった。目の前のファンファン(筋肉の塊)らしからぬ……いや、生態的には"寸分違わぬ"ヌイグルミなどの小物が溢れていた。この時点で、俺の中にあった"ヤバイかもセンサー"がビンビンに警報を鳴らせていた!

 案内されて最初の部屋の扉を開けたとき、その警報は最大になり、俺は大声で叫んだ。ん、ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!



 窓からの光を遮るカーテンは2枚仕立てで、内側は可愛い花柄のカーテンで、外側はレース仕立てなのだがこれも花の形に見える不思議。当然、裾にはフリルが付いていて揺れている。

 壁も木目や白塗りではなく"ど・ピンク"である。これは、ファンシーってヤツか?(よく目を凝らすと、ハート柄が隠れているように見える)


 タンスにクローゼットがあるのは有り難いが、コレもピンク色で取っ手がハート型。ちなみに机・イスもピンクで、イスの背もたれはハート型にくり貫かれていたりと──俺の精神力をガリガリ削ってくれた。


 他の空いている部屋(ほぼ全室)を見せて貰ったが、内装は特に変わりはなく、若干小物が違うくらいだった。そんな中、俺は少しでも普通な部屋を探したがなく、今の部屋に決めたのだった。



「……寝た気がせん! こんな部屋で熟睡できるか!!」


【何を被害者面しているのですか? ベッドに入ってすぐ寝たましたよね?システム ん? んん??】


 頭を乱暴に掻く。寝落ちした事実は無くならないので、愚痴は飲み込むしかなかった。気付いたら異世界で、唯一の味方? はこのシステムだけ。そんな状況に陥って、少しでも安心できるようになれば、今までの緊張が解けて疲れが一気に出ても不思議ではないと思う。


「──取り合えず、依頼を受けてお金を貯めよう。そして、この宿から出よう……」


 切実な願いを口に出てしまう。料金は安いんだ! 飯も旨いけど──この部屋がいただけないんだ!!


【無理だと思いますけどね。ここはキレイさっぱり諦めて、常宿にしましょうよ!】


 そんなことを言うシステムに溜め息が出る。借りていたピンク色の(・ ・ ・ ・ ・)パジャマ(・ ・ ・ ・)を脱ぎ、扉に付いているボックスから昨日着ていた服を取り出し、着替える。

 いや、着ていた服を洗ってくれるって話しだったから、頼もうとしたんだけど着替えがなくってね……。うっかりミス!

 着替えて部屋の外に出ると、食堂から姉さんが歩いてくる。


「おはよう♪ よく眠れたかしら?」


 昨日より明るい感じの受付のお姉さんと廊下で少し話す。


「はい……なんとか。これからお仕事ですか?」


 本当に"なんとか"とそんな返事をする俺を、クスクス笑っている。その目は「仕方ないよね──」と語っているように感じた。だが、|ファンファンのお・う・ち《こんな処》に引き込んだ(もしくは、巻き込んだ)姉さんが言うセリフではない。

 他愛もない世間話をしていると、姉さんの出勤の時間が近づいてきた。


「ギルドで依頼を探すなら、2時間後くらいがボード前が空いていていいわ」


 お姉さんには登録したときに、今日から依頼を受ける(活動する)と言ったからだろう。やっぱり、割りのいい仕事は朝にしかないようだ。テンプレだな。お礼を言いって、俺は朝食を食べるため食堂に向かった。


「おっはよ~ん♪ よく眠れたようね!」


 ピンクのエプロンドレスに筋肉の塊(からだ)を包み込ませ(破れそうなほど、ムキムチな筋肉を)、その類い稀な肉体美(ファンファン談)を惜しみ無く白日の元にさらけ出している。

 朝から吐血しそうになって、ギリギリで止められたオレを褒めて欲しい。目の毒(猛毒)でしかない。

 もしも──受付のお姉さんがそんなことをしていたなら、|かぶり付いて《・ ・ ・ ・ ・ ・》見つめるだろう。はっきり言って、襲わない自信が"全く無い"ことに気付いた。


【本当に貴方は、救いようのないスケベですね──】


 システムはそんなことを言うが、男ってものは元来エッチでスケベだと俺は思う。女が控えめである以上、男がエッチじゃなきゃ人類は滅ぶからだ。力説すると呆れられた。何故だ!?


「清々しい気分が一気に台無しになりましたが、なんとか眠れましたね」


【私のような話し方をして、お株を奪うつもりですか?】


 そんなつもりはない。お前にツッコミをするだけで、精一杯だ。それよりも、朝食を食べられるかな? 胃がキリキリしている気がする。



 □■□■□■□■□■□■□■□■□■


 なんとかではあるが朝食を食べた俺は、ギルドへの道中、昨日は見れなかった街中をじっくり見ながら歩いた。登録するときにお姉さんから、「最低でもナイフくらいは準備してね?」と言われたので、武器屋に寄ってナイフを購入した。


 武器屋で何かなかったか? って──特筆するようなことは、何1つないね! 普通ってサイコー!

 気掛かりなのはお金がなくて、他の武器をじっくりと見れなかったことだ! 見たら欲しくなるだろうから、サッと済ませたんだ。横目に映った武器たち、待っているがいい!!

 心の中で『フハハハ!』と高笑いしながら、武器屋から出た。


 ギルドに到着したときには、とっくに2時間は過ぎていた。初めて見るモノが多くって、目移りしていたからあっという間だった。防具屋に関しては外から見るだけだったので、お金を稼いだら見に行こう! ……「買わないのか?」って? 見てからだね!


 扉を開けて中に入ると、昨日とほとんど変わらないくらい空いている。もしかすると冒険者って、朝だけは規則正しい(・ ・ ・ ・ ・)のかもしれない。『依頼争奪戦、寝坊したら負けよ♪』と何処かに標語が貼ってないかな? そう思い掲示板の上から下に視線を流すと、下の方に貼ってあった!?

 結構デカイ文字で書いてある……。


 お姉さんに教わった通り、入り口に近く一番大きい掲示板に向かう。この掲示板に貼ってある依頼は、常時依頼と街中でのお使いになる。

 お使いクエストに関しては、10才を越えたら『仮許可証』という"専用のカード"が発行され、子供のお小遣い稼ぎに役立っているそうだ。『専用』と言われているだけあって、見せて貰ったカードは可愛い絵が描かれていた。


 俺はその中で、定番である"薬草採取"と"冴武躙(ゴブリン)退治"の常時依頼を受けることにした。クエスト表の右下にある【依頼申請券】を手に取り、受付を見るとお姉さんが手招きしていた。若干回りにいる冒険者から、殺気を向けられたような気がする。背筋がゾクッとした。


【間違いなく、貴方に向かっていますね! 殺気が!!】


 そんなことを肯定しないで……。本当に否定して欲しいことは放置なのに……。


「お疲れさまです。何か聞き忘れていることでも、ありましたかね?」


「他人行儀な話し方をしないで? 1つ屋根の下(同じところ)に住んでいるのだから♪」


 これって絶対に、お姉さんが俺をからかっているよね?(ウィンクを飛ばしている)

 さっきのセリフで、冒険者の殺気が1割くらい増しているんだよね。こんなことが続いたら、俺って絡まれない? 新人イジメが勃発!! とか、マジで勘弁!!


【世の中の厳しさを教えていただいた方が、良いのではないですか?】


 表情に出さないように頑張るが、口元とかがピクピクしている自信がある!? ワケが分からないだろう、俺も分かっていない!!


「常時討伐依頼で注意するモンスターがいるのよ。そのモンスターが『スライム』なの」


「スライムが?」


 スライムって言うと、ザ・雑魚ってイメージなんだが。


【基本的にスライムには、物理攻撃が効きにくいです。ですので、魔法中心の戦いになります】


 へ~そうなのか。受けないように気を付けよう!


「スライムって、魔法以外の攻撃に滅法強いの。オーガの攻撃にすら、耐えるって噂なのよ」


「怖いですね。スライムの討伐依頼は、受けないように注意します」


 俺は、「初めて知りました」って顔でお姉さんに返事する。そんな俺を見て、姉さんは安心したようだ。


「それじゃあ、依頼の受付をするわね?」


 依頼券をお姉さんに渡し、受理してもらう。その間、ゾクッとした感覚が消えることはなかった。

 一緒に渡したギルドカードを確認すると、カードの角に依頼内容が浮き出ていた。変なところで、高水準な事をしないでほしい。見た範囲では中世時代っぽいんだから。


 薬草の採取 10本1束  0/5


 ゴブリンの討伐      0/5


 簡潔ながら、分かりやすく表示されている。

 出発する前に、薬草とゴブリンの特徴を教えて貰った。これでスムーズに依頼を遂行出来ると、俺は小さく微笑んだ。そして、こっそりと逃げるようにその場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ