気付いたら、叫んでいた
本日2話目です。
システムとの会話がほとんどになります。
9月6日 ステータスにLV表示を加えました。
2月18日 本文の改稿を行いました。
辺りを光が包むと1人の男──いや、アスは草原のど真ん中で倒れこんでいる。回りに鬱蒼と繁っている草花が、彼の姿を隠すのは時間の問題かもしれない。
「──っ!」
どうやらアスが気付いたようだ。私か? 今は誰でもいいだろう。彼のことを気にかけて欲しいものだ。
「──マジで!?」
俺の意識が戻ってから、さほど時間はたっていないが、自分が陥った状況は少しだが理解できている。
まあ、俺自身が"厨二"っぽい男だったからだ。もし、此処が異世界なら──。
「『ステータスオープン!!』」
やっぱり最初はコレを試さないとね!
─────────────────
アス
15才
エルフ
LV1
HP:18
MP:42
力:5
体:4
速:6
魔:14
スキル
【ヤル気セット】
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──────────────────
「HP──無くなったらどうなるか、詳細が知りたいな……」
【HP:無くなったら、気絶するかも? それよりも、死ぬかもしれない!】
!! 鑑定を持っているのか!?
【持っていません。私は、システム鑑定です】
!! 鑑定──もしかして、心が読めるのか!?
【だいたいは──エッチぃ妄想は、やめてね?】
「なんなんだよ! あんたは!!」
俺は草原のど真ん中で、大声を上げてしまった。だって、仕方ないだろ~こんなんは想像してなかったし。だが、システムの口撃が始まった。
【童貞を拗らせると、早期ボケが始まるのですか?】
「五月蝿いわ!! 童貞と違う! ピュアなだけなんだ!!」
【そんな~またまた~~】
「──なんでそんなに流暢に答えるんだよ?」
俺は、草原のど真ん中でorzの形になった。まさか異世界?に来て、最初のリアクションがコレってどうよ!?
大声で泣き叫びたい!! もうココロは泣いているけど……。
【気持ち悪いので、泣かないで下さいね♪】
さっきからグサグサと人のココロを、串刺してキズ付けるシステム鑑定が憎い!!
【いや~そんなに誉められると、テレますよ~】
話がズレているように感じるのは、俺だけなのか?
そんなことを思いながらも、もう一度ステータスの確認をすると、『??』だった一つが開示されていた。
〈システム鑑定〉
え? 説明もなしなの??
まあ、いいか──と思考を切り替える。なんか聞いたら、延々と自分を語られる気がする。こういう手合いは間違いない。
「口に出さなくても、鑑定とかは出来るんだよな?」
【出来ますよ♪ ただ、面倒なので頻繁に鑑定をさせないで下さいね! いくらクズでも分かりますよね?】
なんなのコイツ!? 丁寧口調なようで、サラッと毒を吐くんですが!?
ただ、何時までも草原にいるのは不味い気がする。
【普通にモンスターは出ますよ? 愚図に言っても仕方ないでしょうが、さっさと街にいきましょう!】
ああ、もう! 突っ込む気力が無くなるわ……
【ピンポ~ン! 条件を満たしたので、スキル〈ヤル気〉を解放しました!】
なんなんだよ! その"ヤル気"って!? 夜の方のかよ??
【そんなわけないでしょう? 現にヤル気になっているじゃないですか】
……どういうことだ? もう、ヤル気になっている??
「──って、つっこんだことかよ!!」
俺は大地に膝をつき、両手で頭を抱えた。ム○クの叫びなんか優しいくらいに、大声で叫んでいた。
これでもし、『ヒモなセット』を選んでいたら──精神がどうなっていたか、考えたくもない!!
【それよりも、早く街に行って休みましょう! 私は疲れました】
「動いてすらもいないあんたが、なんで疲れんだよ!?」
【喋るってのは、結構疲れるのですよ?】
俺の方が、間違いなく疲れている。ツッコミ・叫び疲れだ。
「──もういい。街はどっちの方向だ?」
疲れた俺は、頭を一振りしてシステム鑑定に確認する。
【猿でも分かるように言うなら、真っ直ぐ前です】
「あんた本当に一言多いよ!!」
俺はツッコミが多い……いや、過多でそのうち酸欠にならないか心配だ。肩は上下に激しく動いている。叫んだあと、精神が落ち着くまで深呼吸をして待った。
大きく溜め息をついた後、俺は黙々と街に向かい歩いた。
────────────────────
なあ、なんで街に着くまでに『3時間』も歩くんだ?
こう見えても"現代っ子でモヤシっ子"なんだ。流石に足が棒になって痛い!
【本当に貴方って愚図ですよね! ダメダメです】
あんたの方だろ!! 俺の心の叫びは、届かなかった。
しかし、街み入るのにお金はかからないのか?
【何度も説明するのは嫌なので、1度で覚えてくださいね?
通行税として必要です。国毎に多少違いますが、だいたい銀貨1枚になります】
だいたいの価格は、日本円にして幾らなんだ?
【銅貨1枚=10円
大銅貨1枚=100円
銀貨1枚=1,000円
大銀貨1枚=10,000円
金貨1枚=100,000円
の価値で以降、十進数で増えていきます。サルでも分かりますね♪】
……共通単価は? 1日の生活にかかる最低の金額は?
【そのまま、円です。だいたいの収入が銀貨5枚で、生活費が2~3枚くらいです】
けど俺、金を持っていないんだけど──。
【このサルは、本当に疎いですね! アイテムボックスを開けてみてください!】
酷ぇな……アイテムボックスとな? 開閉をイメージすればいいのか?
【問題ないです。さっさと行動を起こしてください!!】
ひでぇ! 初心者にそれはないでしょう?
黒い渦? をイメージして……ん? これでいいのかな?
俺は空中に生まれた、黒い渦に右手を突っ込んだ。その状態で少し止まったが、硬貨をイメージしたら手の中に、固い感触が現れた。指定した金額は銀貨1枚(1,000円)である。
「銀貨1枚、これが1000円の価値があるのか──」
取り出した銀貨の大きさは、100円玉くらいの大きさだった。大銀貨もあったので取り出して確認すると、500円玉くらいの大きさでなんか硬貨だな~っと思った。
そうやって色々確認しているうちに、入門の順番がやって来た。出した銀貨は、上着のポケットに入れる。
「──止まれ! 許可証を見せてくれ」
鉄の兜を被り、金属鎧を着た俺より頭1つ分高い男に呼び止められた。異世界らしく、門を通るのに確認するんだな。
「冒険者登録の為に村からやって来ました。まだ身分証はありません」
予め決めていた仮の身分を口にする。
「入場金が1000円かかるが、問題ないな?」
門番の問いかけに俺は頷き、ポケットに入れていた銀貨を渡した。受けとると、俺についてくるように言い先導し始めた。着いた小部屋で名前と年齢を聞かれ、直径20cmくらいのガラス玉が机の上に置かれた。
「──悪いが最後に、この水晶に手をかざしてくれ」
門番が指差したのは、さっき置いたガラス玉だ。
システム鑑定の話しで分かったことだが、魔法の品の1種らしい。コスト的には金貨1枚(100,000円)くらいするそうだが、住人の安全のため各門に配置されているそうだ。
「これが滞在許可証になる。期限は3日で、その間は自由に出入りできるが無くさないように注意してくれ!」
俺は滞在許可証を受け取ると、礼を言った。ギルドの場所はこのまま歩いていくと着くそうなので、宿を探す前に登録する事にした。通行税が返ってくるらしいから。