2人から4人に……
シュラントの森で、『心の中で大絶叫』をした俺は、意外にも平常心を取り戻していた。
1時間以上も歩き続けていたら、そりゃ落ち着くか。1人そう結論を出す。
「そういえば、シーネはもうすぐ2才ってことだが、人族換算では20才くらいってことでいいのか?」
俺は自分の推測が正しかったのか、確認することにした。この辺はきちんとしておかないといけないからな!
「ちょっと面倒ですが、私たちの種族の1才は人族の9才分に相当します」
──ちょっと待て! シーネが2才=18才相当、スンが1才半=14才相当……え? ちょっとヤバくね?
日本だったら、未成年者なんたらで捕まるよな!? それに、異世界って言っても、その辺がどうなのか調べていなかった!!
俺は焦り地面に突っ伏して叫びたい心境だが、目の前を歩く4人は暢気なものだ。ガールズトークに花が咲いてら。(スンは目覚めるまでは、俺が背負っていた)
【近いうちに"ロリペド"の2つ名がついたりして──】
システムが、無責任な攻撃をして来た!!
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『システムの2つ名攻撃!!』
ズンズンズン!!!!
『会心の一撃!! アスのハートに多大なダメージを与えた!!』
ピコーン、ピコーン、ピコーン……
『アスのハートは、ブレイク寸前だ!?』
「俺は、ロリコンじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
『アスの叫びは、誰にも届かなかった!』
「ペド野郎でもねえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
『アスの叫びは、誰にも届かなかった!!』
アスはふらついている。
『システムは追撃を行った』
【でも、手を出しましたよね? ロリペド伯爵?】
ずががぁぁぁぁぁぁぁん!!!!
『システムの「真実攻撃!」、反す刃の「称号攻撃!!」が炸裂した』
グボハァ!!
『アスは吐血した。しかし、根性で生きてはいる』
「……ち──違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う…………」
『アスの精神は崩壊寸前のようだ』
【私に勝とうなど、ハチミツより甘いですね!】
『システムWIN! アスの叫びは、届かなかった!!』
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俺の心の中では、そんなことが起きていたとか、なかったとか。しかしここは、はっきりと白黒を着けておかないと、取り返しのつかないことになりそうだ。
「なあ、変なことを聞くが、14才って──大人なのか?」
俺の呟きに答えてくれたのは、メリッサだった。何やら納得顔で頷いている。
「アス殿は遠い国から来た……という話だったよな? この大陸では、『男が15才』『女が13才』で成人として扱っている」
地球より、2才くらい若い。大丈夫なのかよ? 異世界!!
「そうなのか? でも、冒険者の登録は、男女ともに『15才』からだよな?」
俺はその辺りを不思議に感じた。女の方は2年も待たないと、登録できないのはおかしくないか?
その答えは、ルーナが教えてくれた。
「人族の場合、女性は14才くらいが子供が出来やすいからですね。特に辺境で生活している場合、早ければ14才のうちに、遅くても15才で子供を産みますから」
流石、異世界。そんな言葉で片付けられるが、たしか江戸時代とかはそんなもんだった気がする。
医療知識・技術の不足、飢饉・疫病の発生。人が死にやすい状況が身近にあった。
本当に20○○年を越えた現代人の、結婚時期から考えると異常なくらい早い。そこはやはり地球と同じく、文明が未発達なのが大きい理由なのだろう。
まだ少ししか見ていないが、中世時代より低い文明だろうが──医療関係は〈治癒魔法〉がある分、文明レベルが多少低くても生存率的には大差はないのだろう。
「俺んところは、20才で成人となったからな。結婚自体は、『男が18才』『女が16才』で出来たがな(法律上は……)。
2人からしたら遅いと思うだろうが、晩婚と言われるくらい、遅くなるのも国家問題になっていたから──」
少し遠い目をして、夕焼けの空を見上げる。山に沈みこむ太陽の姿は、今は少ししか見えない。
山から視線を下げると、遠目に街の門が小さく見える。
──閉まる前には入りたい。
なんかズレたことを考えていた。そんな状態の俺を見ている視線を感じた。視線の方向を向くと、シーネの姿が目に映った。
「ん? どうした?」
俺は話しかけた。何かあるなら、きちんと言ってほしい。
「あ、あの──旦那様は、年上はお嫌いですか?」
真顔でそんなことを聞かれても、「なんだそりゃ?」ってのが俺の気持ちだ。年上はっと言っても、"人族換算では"ってだけで生まれてからなら、2年もたっていないだろ?
思い出したが俺なんて、三十路から15才まで若返っている。それに、18才って言ったら高校3年くらいだぞ? まだまだ若い──っていうか青い印象しかない。
「問題ない。俺の年はまだ15才で、ギルドに登録できるギリギリだったが──。
あれ? そういえば、メリッサはCランクまで上がっていたよな? そうなると、シーネとは近くないか?」
きちんと年齢確認をしていないが、恐らくそんなものだろう。
「い、今は18才だ。あんまり女性に年を聞いてはダメだぞ?」
「ちなみに、私は16才です」
【デリカシーのない男め!!】
システムは容赦なく、俺に毒を吐く。『年は聴くな』とメリッサが言っている傍らで、ルーナは平然と答える。
しかし「今は」か……。
この世界では18才で嫁いでいないのが、そんなに問題か?
「ふ~ん。気にしなくても、いいけどな」
俺は気にしないし、何処かの偉い人がこう言った。
『愛があれば、年は関係ない!!』
【自分の年に気付いた上、開き直りましたね……】
なんかシステムが【──っく、悔しくはないんだからね!!】って悔しがっているイメージが、脳裏に再生された。
まあ、こいつはそんなに生易しくはないから、それでへこたれる心配はしていない。
しかし、兎人族の肉体年齢が1年=9年だと、6年(54年)くらいしか生きられない気がする。それよりも問題が、3年半(30~31年)と早く老化がくる。
──そう考えたら、血の気が引いた。
「ラビッテの平均寿命はどれくらいなんだ?」
「だいたい50年くらいです」
はい? 50年ですと!? 50×9=450年……いやいや、それはないだろう!!
俺の顔色から、何を考えているのかを読みと取ったシーネは、詳しく説明してくれた。
「私たちラビッテは、生まれて2年で大人になりますが、生後2年以降は『成長・老化が穏やか』になります。
それですので、だいたいの寿命が60~70年くらいになります。もっとも、病気やケガで早く亡くなることの方が多いですけど──」
なるほど、理解できた。でもそうなると、出産出産人数は1人──多くても2人くらいってことか?
まあ、急ぎ聞く必要もないから、後回しにするかな──。
そうやって、色々なことを確認しながら歩いていると、街の門が近くに見えてきた。並んでいるのは10人もいないので、すぐに順番が回ってきた。
「おう! おつかれ! 依頼はどうだったんだ?」
この男は、何時も此処にいるけど、専属なのか?
【貴方専属だったりして!】
──怖いっての!! どうせなら綺麗な……ゾクッと悪寒が走った。
俺は逃げるように、アイテムボックスからカードを取りだして渡す。
「明日もう一度行くことになりそうです」
俺は門番の質問に答える。カードを受け取った男は、俺に向けて「羨ましそう」な顔をしていた。
理由はカードを返却されたとき、男から爆弾発言で分かった。
「それにしても、奴隷が4人か──。あまり欲張りすぎると、夜が大変だぞ?」
何故か苦笑された? いや、それよりも『奴隷が4人』という言葉が引っ掛かった。
──奴隷は2人のはずなんだが……。
そう考えカードを確認すると、書いてあるよ!? 何で!!!?
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奴隷
メリッサ
ルーナ
シーネ
スン
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俺の疑問に答えてくれる奴はいなかった。
──なんなんじゃコレ━━━━━━━!!!!
無謀にも【ネット小説大賞】に参加してみました。
何処までいけるのでしょうかね?