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シュラントとは、朱乱兎でしょうか? 解:違います

 今までにない、説明文を加えたら──こうなりました。

 後悔はしてないですが、説明文に──以下略。

 町から出発してそろそろ1時間半くらい経ちそうだ。道中に出てきたのは、ゴブリンとコボルトと呼ばれる『2足歩行の犬』だった。

 獲得したステータスにしても、ゴブリンに毛の生えたくらいで旨味はほとんど無かった。唯一の収穫が、スキル〈臭いフェチ〉だ。スキル名は酷いが、内容は『嗅覚上昇』と分かっている。

 現時点で10匹くらいの狩っていて、レベルも1つ上がった。


「(しかし、この世界のスキルって変な名称が多くないか?)」


【そんなことはありませんよ? 現に『地球と同じ名称』は存在していますから】


 初めて聞いた新事実だ! もっとも、スキルで1番謎が多いのは間違いなく、俺が持っている【ヤル気セット】になる。何せ説明の1つも無いのだから!!


 現時点で俺が理解しているのは、次の2つになる。


 1つ目は〈黄金率はボン・キュ・ボン〉で、これは俺にステータスに直結する"ビー玉"に関わりがあると感じている。

 実質、LV1では『自分で倒した場合』のみだったが、LV2に上がったときに『自分以外の誰か1人』が加わったのではないかと思っている。

 現在はルーナを対象にしているので、入手量は増えている。対象外になっているメリッサは、完全にルーナの護衛と化している。


 ──ここまでは問題などはない。


 2つ目は〈逝忠気枡(いただきます)〉で、これは1つ目のスキルで入手したビー玉に含まれる『ステータスとスキル』を、肉体に反映させる為のモノだと予測している。

 このスキルにレベルアップによる恩恵は、何なのか全く予想がつかない。


 ──推測の域を出ないが、ほぼ正解だと思っている。


「アス殿、そろそろ『シュラントの森』に着くので、注意してほしい!」


 真剣な表情で俺に訴えかけてくるメリッサの頭を軽く撫で、俺は「ありがとうな」と感謝を伝える。

 森に入った瞬間、「ん? なんだこれ?」と疑問を抱いた。前の世界で飲んでいた『日本酒』に近い臭いを感じたんだ……。

 それは森の奥深く──中心部に近付くにつれ、ルーナが、メリッサが気付くことになる。この時点で俺は、臭い酔い(・ ・ ・ ・)の状態になっていた。


「……気持ち悪い────」


 お酒を飲んで酔ってはいないが、周囲に漂う『酒精』により"2日酔い"に近い感じになっている。

 この森の討伐をあまり引き受けるものが少ない理由は、この森中に漂っている酒精──酒臭さではないかと、睨んでいる。

 こんな森が増えたら、周囲で暮らす人々は大変だろう。ところ構わず酒の臭いが漂い、この森の中で長時間の活動には不向き──もっと言うなら、『居たくない!!』だ。


【よ~ろれ~ひ~~】


 システムがバグったらしい。しかし、生物でないコイツが酔うのか? また1つ、システムに対する疑問が増えた。

 そんなことを思っていると、視界に半透明のポップが浮かんできた。


 □木□


 遥古より、連面と受け継がれてきた樹木。シュラントの棲息により発生する『酒精』をその()に取り込んできたことにより、自身が酒精を帯びてしまったという、悲劇……というか、喜劇の樹木。

 100年の時を生き続ける木は、『大酒樹(おさけぎ)』と呼ばれている。その樹木を使った家は、太古より『大酒飲み』の聖地成らぬ、『聖家(せいや)』として愛されている。

 この樹は、まだ50年の『小酒樹(こさけぎ)』であり、まだまだ精進が足りない!!


 □えんど□



「(はい?)」


 俺は間抜けな反応をしてしまった。予想つかないでしょ? こんな能力!? 突っ込むこともせず、唖然としてしまった。これって俺のアイデンティティに関わることかもしれない!!

 焦りながらも、視線を左右に向けると、その画面も連動して動いた。


「(もしかして、"AR"というやつか?)」


 詳しくは知らないが、そんな感じのモノだと思う。今まで見かけなかったコイツが出てきたのが、システムが『バグった後』だった。そこから俺の導きだした答えは、『簡易鑑定ウィンドウ』というモノだった。それが正しいのかは、どうでもいい!

 1番の問題は、『システム介入なしで使えるか』と言うことだ。簡潔に答えだけを言うと、『システムがバグったときしか、使えない』という完全な"お助け機能"とでも言うべきモノだった。


 □??□


 視界がある点に差し掛かったとき、視界内に表示された。内容不明の『何かがいる』と言うことだ。

 音を立てないように、ゆっくりと近寄って確認すると──兎の耳が見えた。赤色なので、これがシュラントなのだろう。

 そう思いヤツの体をみて、自分の目を疑った。


 ──体長は60cmくらいと大きく、その姿はデフォルメされたように簡素かつ可愛い──のだが、その顔は『呑兵衛(のんべえ)』そのモノだった。(片手に焼酎? ラベルには『ウサギ殺し』と書いてある)

 可愛さが裸足で逃げ出すくらい、とてつもなく残念な兎だ。


「(朱乱兎じゃなく、"酒乱兎"って落ちかよ!!)」


 俺は地面に膝を着き、頭を両手で抱え、心の中で叫んだ! ちょっと考えたら分かることだったのかもしれない。ただ、シュラントの言葉を正面から受け取った、俺が"考えなし"だったというだけなんだろう。

『AR』が反応し、早速仕事をしてくれた。システムとは違い、真面目な態度に俺の好感度は鰻登りである!


 □シュラント(酒乱兎)□


 元来より酒乱だったのかは分からないが、人が出会った時点で酒を飲み、宴をしていたと言う逸話がある。

 手に持つ『ウサギ殺し』は隠れた銘酒として、酒飲みたちに愛されている。

 ──だが、そのドロップ率は恐ろしく低く、100匹で1本出たら幸運だと言われるほどのレアな銘酒である。価格に関しては時価となるが、最低でも『金貨10枚』は付くと言われている。

 彼らが酒乱な理由は分からないが、一説には『生殖能力がない』もしくは、『恐ろしく低い』という仮説を立てたシュラント博士がいる。だが、そのことに対する真実の追求にはまだ至っていない。

 そのシュラント博士に関してだが、現在1200歳になるが今も元気にシュラントを研究している、老エルフになる。彼の著書の1つに『私とシュラントの密会』というものがあり、たくさんの酒豪たちから愛されている"シュラントの棲息領域"を記したモノがある。

 そんな彼は、"シューラント・ハカセール"と自身で名乗っている。そんな彼の書いた『シュラントとメシュラントの関係』という本人の中では薄く短編的な扱いだが、800ページを超えている著書の中で彼自身が『若き日に、とあるシュラントの森で"メシュラント"に出会った。その目を見た瞬間、ワシ自身が"捕食対象"であることを本能的に感じ、恐怖に駈られその場から転移で逃げ出した』と書かれていた。

 その書物を読んだある記者が彼のもとを訪れ、そのことを聞こうとしたが、全く聞くことが出来なかった。その記者が後に出版した、【世界偉人伝】でこう書かれている。


『私は、シュラント研究の第一人者である"シューラント・ハカセール博士"に当時のことを聞こうとした。その話を聞く前の博士は"気の良いお爺さん"という感じだったのだが、その当時のことを思い出した博士の状態は一気に悪化した。

 彼の呼吸は浅く、荒くなり、その瞳孔は大きく見開かれ、瞳は小さくブレていた。顔色は青──いや、土色といった方が近いのだろうか? その顔からは大量の汗が流れ出てきていた。

 よほどの恐怖だったのだろう。その顔を見ていた私の脳裏には、幼き日に村で1番長生きだった祖父の顔と話を思い出した。

「良いな? シュラントの森は、40を超えても独身、童貞の男が、自身の最期を迎えるために向かう場所じゃ。その森に向かったものは、戻ってくることはない!

 何があっても、シュラントの森に向かってはならん! 40になる前に嫁をもらい、子を成すのじゃぞ!?」

 正直、10歳になったばかりの子供にする話ではないだろうと、今年35歳になった私は思っている。まだ結婚の目処はついていないが、そろそろ奥さんが欲しい』(1部抜粋)

 彼はそう話を締め括っている。他にもシュラントについての文献は数多くあるが、余り宛になるモノではない。


 □えんど□


 このARについて、はっきり言おう。


 ──なげーんだよ! こんちくしょう!!

 情報が多いのはいいんだが、その9割近くが役に立たないってどうよ? 半透明なウィンドウだが、視界のほとんどを塞いでいるって、戦闘中にこれだと『死んでください♪』ってことだよね?


 この間僅か、1秒。システムの能力なのか、俺の願望が生んだ幻だったのか? 答えはたぶん、誰にもわからないだろう。


「アス様、標的のシュラントですが、先手を取りますか?」


「……そうだな。此処は俺が殺ろう!」


 そう言うと俺は、シュラントに向かって駆け出した。心の声を聞いて貰ったら分かると思うが、『九分九厘八つ当たり』である。


「はあぁぁぁぁぁ!!(泡盛してんじゃないぞ!! この酔いどれ兎が!!)」


 俺は大きく後ろに振りかぶり、シュラントを力一杯蹴り飛ばした! その姿を、地球の人が見たら『PK』を思い浮かべることだろう。


 ドガッ!!


 ドォォォォォン!!!! (ぐちゅ)



 蹴り飛ばされたシュラントは元気よく? 空中で弧を描き、高速と言っても良い速さで10mくらい先の木に体がぶつかった。その衝撃は中々のモノで、1mほどあるその幹は大きく揺れて最後には地面に倒れた。

 もちろんそんな速度で飛んでいったシュラントは、ぶつかった途端弾けとんだ!!


「(酔いどれ兎の肉花火か……予想以上に華がないな)」


 正確には肉花火といっても、肉片が飛び散っているのではなく、木の幹にぶつかった瞬間に『死亡判定が出されている』のだろう。その肉体は、弾ける瞬間に光に包まれ(・ ・ ・ ・ ・)光の塊が(・ ・ ・ ・)四散(・ ・)──弾け飛びその場にドロップアイテムを落とした。

 ドロップアイテムは、先ほどの情報を嘲笑うように『一升瓶』が転がっていた。そのラベルにはこう書いてある。


 ──【ウサギ殺し】──と


「(これって、"レアドロップ"じゃないのか?)」


 手に取って確認しながら、そう思った。これ以降、20匹近いシュラントを倒すことになったが、その戦い方はお世辞にもスマートとは言えないだろう。何せ、攻撃方法が『蹴り飛ばす』『踏みつける』の2種類しか使っていないのだから。

 ドロップに関しては、シュラントの酒肉×10、シュラントの朱耳×4、シュラントの尻尾×1、そしてレアな"ウサギ殺し"が5本と、収入面ではかなりのモノとなった。


 周囲の警戒はしていたのだが、俺たち3人は背後の存在に気付かないままだった。

 モブキャラは、安直かつ、簡易ネームです。


 この話で出てきた記者の名前は、キッシャール・カキコミンになります。笑い自他いなくて、申し訳ないです。

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