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ザコリオンは雑魚でした。

 3月2日 本文の改稿を行いました。

 冒険者登録を済まし、ギルドを出ようとしたら"変な肉団子"に絡まれるは、姉さんが痛い部分を抉ったり、メリッサとルーナが止めを刺したり、何故かシステムが姉さんをライバル視して張り合い始めたりした。


 ──そんな風に現実逃避しながら、俺自身は笑っていた。


「ヒィ~ハァ~~。ああ"──腹がイタイ。

 お前、笑われる才能があるよ!」


 周囲の冒険者は絶句しているが、俺は気にしていなかった。この雑魚が何をしても、叩き潰せると確信したからだ。


【"笑わせる"ではなく"笑われる"ですか……

 上手いこと言いますね!】


 システムに誉められちった。そこまで嬉しくはないが、楽しかった。いや、"愉快だった"と言うべきだろう。


「こっ──小僧!! 死ぬ覚悟は出来ているんだろうな?」


「あんたのエールっ腹がへっこむより、ありえないね~」


 ザコリオンのデップリと溢れだした、中年太りを越えた腹を指差した。ヤツの体が小刻みに揺れる度、プルんプルんっと擬音語が付きそうに揺れ動いた。



 ─Side:メリッサ───────────


 私は新しいご主人様のアス殿と、同じく彼の奴隷となったルーナと共に、ギルドに冒険者登録をしに来た。

 私に関しては、再登録となってしまうのが残念だが、Cランクまで上がった知識・経験はアス殿の力に成れると思っている。不安な点は、現時点でもアス殿のステータスがわたしより高いことだろう。


 受付で多少のゴタゴタ(他の男性冒険者の殺意のある視線)はあったのだが、問題なく私たちの登録は終了した。ルーナは"借金奴隷"の分類だし、わたしに至っては"違法奴隷"に当たる。

 借金奴隷はルーナのように、『お金を借りて返せなかった』場合になり、違法奴隷とは『親が口減らしで売る』『一定期間の雇用期間として自身を売る』以外の違法な入手により、本人又は親の任意のない状態での契約になる。

 わたしの場合は、夜営時の睡眠中に無理矢理契約させられていた口だ。この恨みは、機会があったらお返ししたい!!


 アス殿が私たちを見て、『ファンファンの(宿)お・う・ち()?』について受付の担当者に確認している。

 ごく短期間になるが、この街を拠点にしていたが、その宿屋については聞いたことがない。隠れ宿なのだろうか?


 ──まあ、到着して「あ~、これね」と理解し、ルーナと顔を見合わせることになるのは、ちょっと先の話し。宿屋だとは思わなかったし、まさかアノ"変態屋敷(・ ・ ・ ・)"とは思わなかった!!


「貴様ら! この"ザコリオン様"に楯突く気か!?」


「──ブフォ!! ザコリオンってなに!? 雑魚モンより弱いの!?」


 アス殿が大声で笑いだした。口にした「雑魚モン?」が何かは分からないが、とても弱そうだ。ゴブリンに次ぐ、最弱モンスターなのだろうか? ちょっと気になる。


 ちなみに、ランクEは"駆け出し冒険者"になる。そこは普通に"冒険者"でもいいのじゃないか? と思った時期もあった。


 ──────────────────


 一頻り笑い終わった俺は、システムが大人しく(・ ・ ・ ・)していることに、疑問を感じた。何をしているんだ?


ザコリオン(雑魚)の鑑定結果が出ました!】


 いきなり何してんだよ? このシステム(アンタ)は────


【ザコリオン

 漢


 LV:たぶん低い

 HP:一般人よりは高い

 MP:脳筋の為、ない!


 力:ワイン樽(30kg)は持ち上げられると本人談

 体:夜に強いと、豪語する

 速:子犬が走ったくらい

 魔:分かりません


 装備:安物の服

 装備:ポーク○ッツ】



「ブフォォォ!!」


 俺は堪らず吹き出した。こんな爆笑ステータスを見せられたのだから──。あんまりでしょ! コレは!!


「(なんなんだよ? この酷ステータスは!?)」


【そうですね。咬ませ犬としても、最弱の部類ではないでしょうか?】


 吹き出したことを周囲の冒険者には不思議に思われただろうが、それ以降は表情に出さないように、必死だった──必死に成らざるをえなかった。肩が震えているのは気にしないで欲しい!


「如何なさいました?」


 ルーナが俺の顔を覗き込んでくる。俺の様子がおかしいと感じ取ったのだろう。心配そうな瞳の中に、俺の顔が映っている。


「イヤなんでも──」


【更なる情報を開示します!


 ザコリオンは、"童貞"です!! 間違いありません!!!!】


「(そんな情報は【──さらに追加で、失恋100連敗を無事に更新しました!】ー…はい?)」


 その言葉で呆気にとられた。その情報、いらなくねぇ?


「──この!! ザコリオン様に何て態度をするんだ!!?」


 そんなことを言うが、俺はアンタに対して、どんな態度(表情)をすればいいんだ? 首をかしげたまま、その赤い顔を見つめる。


「こんのガキゃあ!! 『我が内にある熱き血潮、そのすべてを(かいな)に集め、敵を穿つ熱き拳となれ!!』 〈自慢の上腕筋〉!!!!」


 半放置で置かれていたザコリオンは、キレてスキル? 呪文? 何かを唱え、殴りかかってきた!!


 ──え!? それって、詠唱しないと発動しないの!!??


 ドスドスドス!!


 床板がたわんでいるように見える。ヤツは早く走っているつもりのようだが、実際のところ──豆芝の小走りの方が早い。デップリとしたお腹が、激しく上下にたわんでいる。

 顔の表面を流れる汗は殴りかかり前より、粘り気を出している。言葉で表すなら『ツー』ではなく、『デロリ』か『ドロロ』のどちらかだろう。


「この……ガキィィ!!!!」


 ザコリオンにとっては最高の一撃だったのだろう。ハッキリ言って、漫才のツッコミの方が速く感じるくらい遅いパンチを"つまらん!!"と言わんばかりに見下し、横に体をずらし回避する。

 もっとも、避けることが出来ないのは"幼児"くらいじゃないのかな? 翔んできたハエらしき生物が、その拳の上であぐら(・ ・ ・)をかいてどっしりと座っていたからだ。


 ──もちろん片足を残し、相手の足を引っ掻けるのを忘れない。こういう事って、お約束のだしね!


 ズシャァァァァァ────キラキラ( )


 その樽っぱらで、床の拭き掃除をするザコリオン。ちょっと床が光っている気がするが、何なのかを気にしたら負けだろう。気付かなかったことにしよ……。


【ザコ油の成分は100%、ザコリオン産です!!】


 言ってやったぜ! 的にシステムは口に出したが、出来ることなら"見なかった"ことにして欲しかった。システムのボケを聞きながら奇襲を警戒していたのだが、動きがないままである。


「──────────」


「──?」


 床に突っ伏したまま動かないザコリオン。俺は不思議に思い、鞘のついたゴブリンソードでその横っ腹を突っつく。とぷよん、とぷよんっと樽っぱらが波打つが、意識が戻るような気配はない。俺の行動を見ていた姉さんが口を挟んだ。


「──流石は【半人前】のザコリオン様です。転がっただけで気を失うとは……」


 姉さんの視線が半端なく冷たいと感じるのは、俺だけなんだろうか? いや、後ろに立っていたメリッサたちの体が、寒気でブルリと震えたのを振り返った拍子で見た。

 この場で最強なのは、姉さんなのかもしれない……。


【路肩の石を見るような、冷酷な目──私がライバルと認めただけはあります!】


 無意味に張り合おうとするシステム。そこまで張り合わなくても──そう思っても、そんなことを口に出したりはしない。

 そんな中、ザコリオンに近付く影が2つ。


「メリッサ、ルーナ──どうしたんだ?」


 ──っ!?


 2人の目を見たら、何て言うか──「モンスターを見る目」をしていた。姉さんの言葉に、ビクンっとしていた娘とは思えない!!


【もしかして、ザコリオン(そこのバカ)の装備を剥ぐ(・ ・)つもりでしょうか?】


 システムの言葉に俺の目は、限界まで見開かれた。幾らなんでも、あり得ないっしょ!?


「(モンスターじゃないんだし、そんなことする必要はないんだろ?)」


 モンスターの装備はドロップする以外の、入手方法があるとは思えんし──。手に持っているゴブリンソードに視線を移す。

 俺の心を無視するように、システムは新たな情報を開示する。


【そんなことはありませんよ? そもそも、私が"ドロップ以外では入手できない"と言いましたか?】


 ──初耳ですが!?


【言っていませんからね!】


「(そんな状況で『あんた知らないの? だっさ~』とか言われても、どうしようもないだろう!?)」


【そんなことは、私に関係ありません!!】


 ──酷い言いようだ! システムとしての役目を放棄している!!(元からだが)


 俺の心の叫びを無視するように、ザコリオン(転がっているバカ)から装備を剥ぎ取った2人が笑顔で近寄ってくる。ちょっとその目が怖いと思ったのは秘密だ。

 ちなみに、剥いだ装備はポイさせた。脂汗でギトギトしていたからね……。服以外の装備は全て剥ぎ取られ、懐に入っていたお金は手間賃としてルーナが俺に献上してきた。これって、RPGの勇者様の行いじゃねぇ??


「それは"臭いゴミ"になるので、あそこにある青いゴミ箱に入れてください。それは隣の赤線の中に置いてください。

 最後に、コレを貼ってください……そろそろ、回収に来そうなので」


 受付席から、姉さんは近くにいた冒険者に指示を出していた。

 1人の冒険者は服を剥ぎ、ギルド出入り口の近くにある青い箱に、入れていた。(鼻を摘まみ、服をナイフの先に引っ掻けていた)

 2人いた冒険者たちは、真っ裸になったザコリオンを青い箱の隣の床に引いてある赤枠まで引っ張っていった。速攻で手を洗っている様子に、衛生面の知識が無くても"汚い"もしくは"穢い"的な認識はあるのだろう。

 ー…いや、その通りなのかもしれない。


 俺がそんな事を思っている時に、ゴ~ンと鐘の音が聞こえた。


「──時間通りですね」


 何の事かと思ったが、ギルドの外から掛け声が聞こえてきた。


「ヤッホー♪ ネイちゃん、元気だったかしらぁ?」


 声のした方を向くと、ファンファンと似た筋肉質の男がいた。立派な逆三角形の肉体を外気にさらし、着ている? いや、履いているのは黒のブーメランパンツ、胸についているのはハートの何か。詳しくは、考えたくない!!


 ソイツは、何処からどう見ても"変態"でしかなかった。


 しかもファンファンに負けず劣らず、体をクネクネしながらカウンターに歩いてくる。お尻をスナップを効かせて、左右に動かしている。むしその自然体とも言える行動に、驚きよりも気持ち悪さが目につく。


 ──ヤバイのキター!!


 本能がそう叫んだ。システムに至っては【わ~おぅ!】と、感心しています的な声を上げていた。

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