プロローグ
「聞いてください!先輩!ついに梨々香ちゃんがハッピーなルートを見つけました!」
子犬みたいに愛らしい私の後輩はイチゴジュースパッケージみたいに可愛らしい見た目で中身は青汁という渋い性格をした子で乙女ゲームの梨々香ちゃんという悪役に最近ドハマリしているらしい。
「…その梨々香ちゃんとやらは悪役なのに、ハッピーになれるの」
「当然じゃないすか!こんなに可愛い子が幸せに慣れないゲームなんてクソゲーですよクソゲー」
「あんたそのゲーム先週までクソゲーって言ってなかった?」
「世の中捨てたもんじゃなかった!…どうしたんですか…元気なさすぎですよ?」
心配そうに私を覗き込む後輩を見て泣きそうになるのをぐっとこらえる。
この子は何も悪くない。
そうわかってるのに、顔が見れない。
3年間想い続けた人に好きな人がいると言われ、尚且つこの私に懐いてくれる、彼との仲を応援をしてくれる、私の大好きな後輩が好きだと言われたとしても。
私は作り切れていないブサイクな笑顔を作って後輩の方を向いた。
「バカね。あの女が結婚したからよ。あーあ、あんな女のどこがいいんだろうねー」
「まさか、部長ってあの女狐が…」
この子は勘がいいからきっと気づいてしまう。そうしたらこの子は私のために心を痛めることになる。この子のせいじゃないのに。
こんなに可愛い後輩を好きになるなんて不可抗力だ。私が男でも好きになるだろう。
「それよりその悪役の梨々香ちゃんはどう幸せになれたのよ」
「…聞いてくださいますか!実はですね…」
こういう時のこの子の気遣いが好きだ。
私は、乗り越えられる。
居酒屋で梨々香ちゃんのハッピーストーリーを散々で聞かされ、結局よくわからないまますっかり出来上がった頃にお開きとなった。
その頃にはこの子が好きなら私ももういいかと思えるくらいになっていて、今日は泥のように眠ろうと歩き出したとき、血の気がひいた。
彼がいた。
女狐と。
フラフラと彼のもとへ歩み寄ろうとして、クラクション。焼きつくような光が私を襲った。
衝撃が私を襲った。
それが彼とあの女を見てなのかわからないまま死んだ。