十体の人形
とある国にある家族がいた。それなりに裕福で明るく暖かい一家だった。
それは冬のこと、やさしい父親は愛しい娘の誕生日にそれぞれ形の違う十体の人形を買ってプレゼントした。そして娘は手に入れた、九体の人形を。
十体の人形があった。一体の人形は娘に渡す前に父親が落して壊れしまったので、焼却炉で誰にも看取られずに燃やされた。
九体の人形があった。一体の人形は娘に渡されてしばらくたった後、娘に皮肉と暴言を吐き続け、起こった娘によって、何度も石で殴られて砕けてしまった。
八体の人形があった。甘い甘いお菓子で作られた一体の人形は、娘の買っている犬がいつの間にか、誰にも言わずに食べてしまった。残っているのは泥だらけの破れた服だけ。
七体の人形があった。一体の人形は娘が友達にあげてしまった。最初のうちはやさしかったのに、徐々に粗暴に乱暴に遊ばれて、四肢を引きちぎられてゴミ箱に捨てられた。
六体の人形があった。一体の人形は娘と遊んでいる最中に足を滑らせて、ほかの人形をかばって下敷きになって壊れてしまった。
十体あった人形は、今では半分の五体へと減ってしまった。されど心は強く、絆は固くなった。たとえひと時であったとしても、永くともにいれることを願った。一体を除いて。
五体の人形があった。心の優しいその人形は、心の重さに押しつぶされ、泣いて啼いて哭き疲れ、突然動かなくなってしまった。
四体の人形があった。娘の家族が引っ越す際に、二体の人形が忘れられた。引っ越してから早十年、人形は持ち主を待ち続け、新たな持ち主を待ち望んでいるという。
二体の人形があった。二体で一つの踊り人形はある日母親が掃除中に間違って壊してしまった。母は娘にばれないように、二体の部品で一体の人形に治した。娘は悲しんだが、新たな一体の人形に、とても喜んだ。
一体の人形があった。長さの違う腕に、ちぐはぐの脚、うまくごまかされた色の違う髪の毛。かりそめの踊り人形は、今日もぎこちなく踊っている。
壊れる日まで。
娘が飽きるその日まで。