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幼馴染と木刀

加筆し再投稿。前話改稿済。

 そう、足音・・・例えば今、近づいて来るのは・・・軽やかで力強く安定したリズム、足運びが少し摺り足の、俺の知ってる女子剣道部員だ!

 ちらりと竜斗が振り返ると予想通り、ポニーテールの女子が木刀を担いで早足で(せま)って来るのが見えた。


 矢的(やまと)忍撫(しのぶ)。竜斗とは幼馴染だが一学年上、剣道部員で風紀委員。幼かった頃の面影が残るが、高校2年としては十分過ぎるかもしれない量感がある胸の膨らみが目についてしまう。


 二人が幼い頃、竜斗はポニテの彼女を「ノブシ」とか「ちょんまげ」とか呼んで(からか)ったものだが、ノブシと呼ぶと叩かれるので、省略して「ノブ」になった。

 彼女が剣道を始めたのは、空手をやっていた竜斗に負けまいとする対抗心からだったが、実は竜斗に近い存在であり続けたいという想いもあった。

 竜斗は小・中学校を通して毎年のように空手の大会で勝ち続け、彼女も剣道で活躍するようになったが、女子としての発育が目立ち始めた頃から、彼女は竜斗をガキ扱いして相手にしなくなった。


 忍撫が先に中学生なる頃から疎遠になっていた二人だが、竜斗が同じ高校に入学する頃には身長も彼女を追い越し、そこそこのイケメン男子として彼女の目にとまるようになった。その彼が振り返って彼女をチラ見し微笑んだ。


「何をニヤけておるのだ?竜斗」

「オッス、ノブ・・・今ちょっと面白いことがあってね」

「何がだ?」

「ノブの足音だと思ったら、その通りだった」


 予想外の台詞にドキリとする忍撫。

「可愛いこと言うではないか。(オレ)の婿にしてやってもいいぞ」

「む、婿って・・・」

(ネットで『俺の婿』発言したりするんだろうか?そんなこと言うキャラだっけ?)

 竜斗も予想外の反応に驚くが、負けず嫌いの彼女にすれば、やられたらやり返す、彼女らしい返答だ。言い返せないと負けである。


「リュウト、『モテキ』でスね!どっちラヴでスか?このコ?ミサキちゃん?」

 竜斗を動揺させる材料(ネタ)が増えたと思って面白がるトオルだが、聞き慣れない女子の名が出て忍撫の表情が瞬間凍結した。


「ミサキって誰?・・・そいつ、強いのか?」

「強いのか?って、・・・あ、ノブと勝負させたら面白いかもな・・・」

「何?剣が使える(ヤツ)なのか?」

「いや、武道はやらないそうだが、剣とかでも見切るのが(うま)いかもと思って・・・」


 竜斗が力を認める女子が突如出現?それは捨て置けぬ!と、殺気立つ忍撫。

「今度、そいつと勝負させろ。勝ったほうが竜斗を婿にできる」

「いつから『強い女が男を所有』みたいな価値観が罷り通るようになった?」

 やはり口で女子に勝つのは難しい。


「俺は風紀委員の仕事があるから先にゆくぞ、はっはっは。」

『俺』を自称する女子は小走りで駆けてゆく。

 それより、風紀委員が木刀を担いでいるのがツッコミどころなんだが。

 噂では、不審者を撃退した実績が買われ、特別に帯刀が公認されたという。教師からも生徒達からも信頼が厚く、木刀のことは誰も文句を言わない。


 私立成木(ナルキ)ヶ丘高校。竜斗は、その自由な校風が気に入っている。

 風紀委員が睨みを利かせているおかげもあってか、暴力や苛めの噂を聞かない。自由でありながら平和が保たれている。


 校内では天下無双のキャラ設定となっている忍撫だが、唯一の弱点が幼馴染の男子すなわち竜斗なのかもしれない。


「どっちオッパイすきでスか?シノブちゃん?ミサキちゃん?」

 トオルは相変わらず・・・だ。

「胸の話はいいって!」

(まあ、忍撫(あいつ)も確かに大きくなったけど・・・)

 女子高生の胸に興味が無いと言えば嘘になるだろうが、それよりも竜斗が今、面白いのは人の気配に敏感になっている自分自身だ。


 視界の外、死角や盲点に隠れた敵も見逃さないとか、暗闇で人数をよむとか、伝説(レジェンド)かマンガみたいなことが現実(リアル)であっても不思議ではないと思えることに軽い興奮を覚えていた。


(この感じを応用すれば、特定の人間をレーダーでキャッチするみたいに見つけられたりして・・・例えば、・・・)

 ふと思いつきで、ミサキをイメージして気配を探ってみた。すると見つかった。

 竜斗とトオルは校門の近くまで来ていた。登校途中の生徒らが百人以上群がっている中、あそこら辺かと何となく感じた方を見たら、そこにいた。


 偶然性を否定する客観的根拠は無いのだが、主観的には必然だった。彼女を探り当てた、そう直感した瞬間、ミサキが振り返り、彼女の髪に隠れている方の目が、あのときのように光った。

(やっぱり、ありゃ『魔眼』だろ)そう思わずにはいられない竜斗だった。


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