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幽霊峠ふたたび

 土曜日が雨で延期になっていた『心霊スポット探検』は、すぐ次の休日に決行することになった。

 アトミが提案していた行き先は、やはり、あの幽霊トンネル。日曜日に竜斗が行ったばかりの場所だ。


 先日と同じバス停で倉城姉妹と待ち合わせる竜斗とトオル。そして・・・


 え?この気配は…忍撫?

 彼女の足音が迫って来る。

 現れたのは、間違いなく忍撫だった。木刀が入っているらしい竹刀袋を担いでいる。驚いた表情の竜斗を見つけて嬉しそうに微笑む。


「今日は偶々、顧問の先生の都合もあって部活が休みになってな…婿殿は何をしておるかと思って気配を探ってみたら、此処に向かっているように感じて、確かめたくなった来てみた」

「気配を?…忍撫、お前もか」

 何と、竜斗が体得した『気配探知』を忍撫も遣って退けたらしい。

 幻影の剣を操ったり、同じ幻を見たり、教えてもいないのに、どこまでも竜斗に付いて来る。

 そんな忍撫に驚き呆れながらも親近感を抱かずにはいられない竜斗だが、すぐ其処にミサキ達の気配が近づいて来るのを感じる。


 歩いてきた倉城姉妹がバス停に目をやると、竜斗達の隣に誰か立っているのが見える。すぐに忍撫と判った。

(何で矢的さんが来てるのよ!)

 即座に竜斗の記憶を読み取るアトミの中で、複雑な感情が渦巻く。妹に同情するなら忍撫への嫉妬心を禁じることが難しい。

 自分が望んでいた未来が遠ざかる感覚に襲われ意気消沈するミサキをアトミが睨みつける。

(ここで折れちゃダメ!)


 トオルがキョロキョロしながら興味深そうに竜斗と忍撫と倉城姉妹の表情を観ている。

(コレわ『シュラバ』のフラグでスか?)


「ぇっと…」

 忍撫と姉妹に挟まれ、戸惑う竜斗よりも先に、アトミが口を開いた。

「竜斗君は矢的さんを呼んでないのよね?」

「ぅん」

 頷きながら答える竜斗に、忍撫が言葉を続けた。

「そうだ、オレが勝手に来た」


 短い間があって、アトミは表情が引き攣りそうになるのを押し殺して忍撫の方を見た。

「今日、この4人で幽霊峠に行くんだけど、矢的さんも行く?」

「飛び入り参加して構わないのか?」

 忍撫は笑みを崩さない。

「4人が5人になっても問題無いわ。矢的さんなら幽霊にも勝てそうだし…」


「良いのか?忍撫…たぶん、またあのトンネル覗くと思うんだけど」

「おぅ、あの後どうなってるのか気になるしな」

 彼女は日曜日に、あの場所で憑霊現象まがいの体験したばかりである。彼女の金剛鈴が鳴らなかったら、竜斗も巻き込まれていたかも知れないのだが、二人とも『今日は同じ目に遭わんぞ、取り憑いてきたら返り討ちにしてやる!』という気構えがある。

「あの鈴、持って来たよな」

「おう。竜斗も持ってるんだろ?、金剛杵(バジラ)

「もちろんだ」


 ここでまた竜斗の『若さ』が頭を擡げてしまう。

 もしかしたら、あの刀を披露する機会(チャンス)があるかも知れない。

 忍撫とミサキに挟まれるのは何だか気まずいんだが、エロスを競ってくれるならウエルカムだ。今の俺なら興奮しても刀のパワーに変換するスキルがある。何だかワクワクしてきたぞ。


「一人増えるけど、本当に良いか?」

 竜斗が姉妹らの顔色を伺う。

 彼の思考を読み取ったアトミは、少し呆れながら、低めの声で答えた。

「構わないわ」

(ガチで誘惑されたいみたいだから期待に応えちゃいなさい、ミサキ!ここで退いたら負けよ)

 ミサキも頷いた。


 バスが来た。

 乗り込む五人。


「…って、このポジショニングで良かったのか?」 

 最後列の座席で、戸惑い気味の竜斗を挟んで忍撫とミサキが座り、アトミとトオルは一人掛けシートに座った。

「矢的さんは天然なんでしょうけど、ミサキも負けてないわね」

 アトミが呟いた。


 二人の女子に挟まれた竜斗は顔を赤らめながらニヤけているが、汗ばんだ手でポケットに忍ばせた法具を服の上から握りしめた。

「良い具合に盛り上がって来た。パワーチャージ!」

「何を言っておるのだ?竜斗」


「フォァティッツ…リュウト、ウマヤラシイ」

 トオルが呟いた『ティッツ』という俗語(スラング)を知らなかったアトミだが、彼の思考を読み取ると『おっぱい四つ…』と言ったらしいことが解り、呟いた当人を睨み付けた。


 先日の山寺に近い『岩不動』の停留所を過ぎ、新しいトンネルを抜けた所でバスは止まった。

 一行がバスを降りてからも、忍撫とミサキが竜斗を挟み込んでいる。忍撫は当たり前のように彼の腕に絡みつき、ミサキも負けじと、もう一方の腕に縋り付く。隙があったら足を絡めようとするかも知れないと思える勢いだ。

「うーん、ハイパーチャージ!」

 やや意味不明な竜斗の呟きに首を傾げながらも、アトミは妹の心が折れないようにと祈るような想いで見守る。

「ゼイア、スパーキング!」

 『火花を散らせているようだ』と言いたいらしいトオルは、相変わらず羨ましがったり面白がったりしている。


 目的地に分岐する三叉路から旧道に入る。竜斗にとって日曜日とは逆回りのコースになるが、ほどなく旧トンネルの出入口が見えた。


2015.7.18 加筆・改稿しました。

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