『訓練』の続き
黒ビキニのショーツ。それ以外は身に着けていない。
アトミが見たミサキの寝姿であった。
「何?その格好」
半裸で黒マントを羽織り、その上に毛布を被って眠ったらしい。
「ぉ早ぅぉ姉さん…ぇへへ」
姉が読み取ったミサキの記憶では…
夢で彼に遭いたい。夢を操る魔術は裸に黒装束で補強される。でも、もし夢で彼に会ったときに真裸は恥ずかし過ぎ…考えあぐんだ結果こうなったんだと?
「真裸に匹敵する破壊力な気もするんだけど」
お前は天然の夢魔だったのか?
「男子には刺激がキツかった?」
ミイラ取りがミイラとか姉の心配するより、妹自身の無自覚な暴走が怖いかも。
「…で、夢で彼と会えた?…覚えてないか」
会っていたら、今度こそ彼の精神を破壊していないか心配だ。
「未だ大丈夫な筈。彼が壊れるような予感は無かったから」
アトミは思った。かつて男を惑わした魔女達も、どこまで魔術が人を狂わせるのか知らなかったのかも。
その前の日、当の竜斗は帰宅後、柔術の稽古で祖父に何度も転がされ、体外離脱を体験しそうなくらいフラフラになった後、いつ眠りに墜ちたかも夢を見たかも覚えていない。
爆睡から目覚め、夢の続きを見た記憶が無いことに安堵すると同時に少し残念にも思う竜斗だった。
朝の登校中、竜斗の背後から忍撫が斬りかかることが日課となりつつある。忍撫の剣も木刀だったり幻影だったり両方を重ねたりと変化に富むものとなり、竜斗も臨機応変に躱したり受け流したりしている。人目もあるので斬りつけるのは一度きりが暗黙のルールで、もはや二人にとって朝の挨拶代わりになってきた。
「日曜日は遠慮なく何度でも斬りかかって来れるぜ」
「そうだな。いつまでも避けきれると思うなよ、竜斗」
「俺はだいぶ慣れたけど、あの刀は出すのに疲れないか?」
「確かに集中しないと難しいが、木刀振るのも変わらんように思うぞ」
「流石に剣術じゃ忍撫が先輩か…」
「5本勝負でどうだ。先に3本とったら勝ち」
「もしかして…」
「勝ったら竜斗がオレの婿、負けたらオレが嫁だ」
「ブレないな…」
忍撫は相変わらずだが、もう竜斗は普通に彼女と会話し、肩を並べて歩くのも平気でいる。
朝の教室に入って来た竜斗に挨拶するアトミ。さっきまで彼が忍撫と親しげにしていた記憶を読み取る。
「矢的さんと仲良しなのは解ったけど、夢の続きは見れたのかしら?」
「見てない。そう毎晩エロい夢ばっか見ない」
「やっぱりエロかったんだ」
「しまった誘導尋問か」
うっかり墓穴を掘ってしまった竜斗である。
「今夜あたりエロの続きがあるかもね…」
アトミが目を細めながら口角を上げる。
何だか肉食動物に狙われる気分なんだが?
そして夜が訪れた。
姉妹は一昨日と同じ黒装束だが、あえて今夜は下着を着けている。これだけでも十分恥ずかしいのだが、全裸で行うのとどう違うか実験することにした。
ミサキは今朝と同じ黒ビキニを着ている。夢魔と化した彼女の暴走を抑えるリミッタみたいな意味も込めたつもりである。
二人で呪文を唱え、意識を集中する。ミサキの幻想と竜斗の夢想を融合させるのだ。
竜斗の光る刀を忍撫が白刃取り…一昨日の夢の残像を捕えた。
忍撫が刀に頬擦りしようとするのを見て、ミサキが飛び込む。振り返って驚く竜斗。
「竜斗君の刀、私にも触らせて!」
ミサキは彼に縋りつき、腕を回して刀に手を延ばす。刀が放つ光が脈打ちながら強さを増してゆく。
このへんからが夢の続きだ。
刺激しすぎると刀が破裂しかねないので、いきなり彼の背中から身体を密着させるのは避けよう。
そっと刀の峰に触れてみる。熱い拍動が伝わって来る。これが彼の魂なんだわ。そう直感するミサキ。
慕わしそうに撫で摩っていると、光の拍動が益々強くなる。ミサキは跪き、そっと刀に口づけした。
刀の光が最高潮に達したかと思うと、視界が白くなった。一昨日と同じだ。
光のホワイトアウトから覚めるミサキ。
彼女が言葉を取り戻す頃には、竜斗も夢を見終わっている筈である。
夢幻の記憶は薄れてゆくが、妹が見たものは姉の方が覚えている。
「今夜も頑張ったわね」
記憶が遠退いても身体の熱りは残っている。
「やっぱり何だか恥ずかしい、エッチな気分…」
リアルタイムで心が読めるアトミも見ていて恥ずかしかったのだが。
気が付けば、姉の足元に座り込んでいる黒ビキニの妹。
果たして、その夜の竜斗は、やはり夢の続きを見た。
既視感な忍撫の『白刃取り』。
振り返ればミサキが裸みたいな格好で…男子が気になる部分は髪の毛じゃなくて黒いビキニで隠しているが、これはこれで十分ヤバい…とか思っていると、彼女が俺の神経が通ってる『刀』を撫で摩り、跪いてキス…もう堪らん!
彼もホワイトアウトした。
そして、また鼻血だ。
ティッシュは必需品。
これがR-18だったらもっとヤバい描写をしてたでしょうが…




