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夢で『訓練』

 ミサキのことを思い出したのを誤魔化すように、竜斗は忍撫に話しかける。


「ったく、今日も朝から驚かしてくれるぜ…で、お寺の都合はどんなふう?」

「おう、いちおう日曜日の朝とかでどうだ。葬式とかの用事が入っておらんとも限らんので少し早めが良いそうだ」

「んじゃ、それで御願いしたい」

「初デートが親戚の寺とはな…はっはっは」

「俺はデートのつもりじゃないんだけど」

「また照れるな。はっはっは」




 朝の教室で席に就く竜斗。

 遅れてアトミが入って来た。双子なのでミサキに似ていて当たり前なのだが、よく似た気配を背後に感じるとつい、昨夜の夢を思い出してしまい、落ち着かない竜斗。夢とは言え裸を見てしまった女子に似た顔とは目を合わせづらかったりする。


 竜斗の背中を見たアトミは、妹が彼の夢に入り込むのに成功したことを確かめた。

 ミサキの幻視をリアルタイムで読み取ることはできても、竜斗が夢でどう見えていたかまでは解らなかったアトミだが、その夢を思い出していた彼の記憶は読み取れたのだ。

「あらあら、ミサキったら…」

(裸で突入?結果的にGJ(グッジョブ)だったかも)


 今、俺の考えたことを読んだのか?

 竜斗の心の呟きに、アトミが小声で応答する。

「ごめんなさい。少しだけ…夢でミサキに会えた?」

「ちょっとだけな…アトミさんも何だか眠そうだね」

 彼女が裸だった件に触れないようにと話題を変えたい竜斗だが、

「そうね。ミサキと一緒に夜更しだったし…竜斗君も眠いの?」

 あんな夢を見て色々ヤバかったせいで途中で起きてしまってとか説明しようとすると、ヌードの件や男子の生理について言及せざるを得なくなりそうで困惑する竜斗。

「夜中に鼻血が出てね…」

「鼻血だすような夢見たんだ」

 もう勘弁して下さいアトミさん。

「夢の中でも『訓練』かしら」

 く、訓練か…気が休まらないな。




 昼休みの倉城姉妹。


「やっぱり、彼の夢に出てきたみたいよ、ミサキが…」しかも裸で。

「思い出そうとすると、何だか恥ずかしい気分になるのは何故?」

「私は夢に入るのを手伝っただけで、(夢の)中でどう振る舞うかは、ミサキが自分で決めるんだから…」

「自分で決めたはず?」

「自分の夢をコントロールする技術(テクニック)って、昔からあるみたいだし…」

「自分の幻をコントロールできたら画期的だわ」

 予知の幻を操ることができれば未来を変えられる…って、何か言ってること変?…そんなことしなくても未来は変えられるって信じなきゃってか。

「自分の幻と一緒に、彼の夢まで操っちゃおうっていうんだけどね」

「わたしも訓練しないとってことかな」

「そう、訓練。竜斗君にとって自分が壊れないための訓練。私達にとっても彼を壊さない程度に夢幻を操る訓練…なんだか大変だけど」

 昨夜(ゆうべ)うまくいったからって、やたらと(夢の中に)押しかけるのも考え物なのね…などと思案しながらも、これから少しづつ、竜斗の心の深いところに忍び込もうと企む姉妹である。




 放課後。


 竜斗とトオルより少し遅れて下校する姉妹。

 元々彼らとは途中まで同じ道を歩いて帰る。道が丁字状の三叉路になっているところで帰る方向が別になる。

 姉に背中を叩かれた妹が小走りで竜斗を追いかける。

 分岐点の丁字路が近づいたとき、後方からミサキが迫って来るの感じる竜斗。背後に彼女の気配がすると、昨夜の夢を思い出さずにはいられない。恐る恐る振り返ると、顔を紅らめた彼女がいた。

 一瞬、夢で見たイメージが重なってしまうが、服を着てない筈が無い。良かった…でも、心の片隅で少し残念がっている自分がいるような気もする。

 何処か恥ずかしそうにしている女子に上目遣いで見つめられるとドキドキする。

 彼女は自分の胸を隠すような仕草を見せながら、何か口をパクパクさせている。

「またゅめでぁったらょろ・・」

よく聞き取れない言葉を残したまま、彼女は背中を向けて自宅のある方に早足で去って行った。


 少し遅れて彼女の姉が意味ありげな微笑を浮かべながら歩いて来た。

「ミサキが『夢で会ったらよろしく』とか言ってた?」

 そう言うとアトミは自分の唇に自分の指二本をあて、その二本指を振ってから竜斗達に背中を向け、妹を追って行った。


「フム。やっぱりアトミちゃんわオシリ、ミサキちゃんわムネでスね」

 聞き覚えのあるトオルの台詞にツッコミを入れることも忘れ、竜斗は虚ろな目で姉妹の後ろ姿を見送る。

 ミサキの胸…夢では長い髪に隠れていたけれど、背中に当たった感触を思い出すと胸騒ぎが治まらない。

 く、訓練だ。これも修行…などと思いつつも、本音を言えば狂おしい夜が待ち遠しくもあり、ヤバい夢の続きが見たくないと言えば嘘になる。

「スキあリ!」

 そう叫んだトオルの掌を反射的に躱した竜斗だが、危うく背中を叩かれる処を間一髪で免れた。



 さて、その夜。

 昨夜が寝不足だったこともあり、アトミは早めに眠ってしまい、竜斗の夢への介入を再び試みることはしなかった。

 それでもミサキは、彼が夢の続きを見るのか気になってしまい、もしかしたら夢で彼に会うことにならないか期待しながら眠りに就いた。

 翌朝、アトミは寝ている妹が半裸なのを見て驚くのだが。

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