予知夢
女性の性的興奮を暗示するような表現があります。
倉城アトミの双子の妹、ミサキは夢や幻の中で未来を予知する。但し、記憶に留めることはできず、予知したことは数分で忘れてしまう。
忘れるまでの間は思考が混乱し、言葉を話すことも字を書くこともできず、予知したことを自分で記録することは困難である。
無理に思い出そうとすると酷い眠気が襲う。眠りに陥っている間だけ、夢の中で思い出すこともあるが、目覚める頃には忘れてしまう。
初めて竜斗と目が合った時に見た幻影を、ミサキは夢で思い出す。
ドキドキワクワクしながら、恥ずかしいところを見られたり、触れ合ったり離れたり…。
彼に抱きついたり手を握ったり頬に唇を押し付けたり…は、既に実現した…というか実現させた。残念なことに、彼のほうからミサキに触れたことは未だ無い。
カラオケボックスで彼とキスしそうになったときに見えた幻影は、もっと残念なものだった。彼女に襲いかかる竜斗は正気を失い、鼻血と涎を垂らし・・・。
正気を失わないように訓練しましょう。最初は手を握るだけ。腕を組むぐらいは大丈夫。慣れたらハグぐらい挨拶代わりよね。キスだってドライでライトなのから慣らしていけば・・・。
あぁ…またお母さんがカラスになって飛んでる。竜斗君に見つかって正体がバレたらどうしよう。彼の気を反らさなきゃ。しがみ付いちゃえ、ぇぃっ。これも『訓練』よ竜斗君。
竜斗君ったら、刀で悪霊を退散させるとか、力を使いたくて仕方ないみたいね。
あれっ?、お姉さん、学生鞄に隠し持ってた魔導書を出してきて・・・隠れて呪文を唱え始めちゃった・・・それって魔界の扉を開く合言葉みたいな?
門扉が開いた。扉の向こうの闇の中から、蟲、怪鳥、魔獣の気配が漂って来る。竜斗君は大喜び?で、光る刀を振り回し始めた。
魔物相手の大立ち回りの後、意識を失いそうになる彼を抱きかかえる私。お腹が空いたねのね。ジュースでも飲む?…口移しが良いかしら?(えへへ)
夢から覚めると、未だ夜中だった。少し涎が垂れ、身体が熱く、そして、彼女の敏感な部分が硬くなっていた。恥ずかしい…とか思っているうちに再び眠りに落ちた。
翌朝、目覚めると夜中に夢を見たことは覚えているが、記憶は曖昧だ。詳しい内容を思い出そうとすると、身体が熱くなって頭が逆上せ、何だか恥ずかしさが込み上げて来る。女の子の生理的な期間が近いせいだろうか?
倉城ミサキの双子の姉、アトミは誰かの記憶を読み取ることができる。目の前にいる人の短期記憶を読むのは容易いが、遠い過去を読もうとすると気が遠くなりそうになる。
対象は人物に限らない。物品や場所からも感じ取れる記憶がある。その物や場所に思い入れのある誰かと、時空を越えて同調してしまう。その同調が強すぎると、その誰かと自分の区別がつかなくなってしまうのだが。
『闇聲會』の灯下事務局長が持ち込んだ『魔導書』を見たときも、倉城家歴代の魔女達の想いが流れ込んで来て、自我を保つのに大変だった。
魔導書は、原文が読めなくても魔術のアイテムになるらしい。ネットで調べても出てくるが、近世の西洋では御守りや縁起物みたいに扱われたそうだ。
自分も魔導書を手にして呪文を唱えたりすれば、何か魔術が使えてしまうのだろうか…アトミが心の中で呟くと、灯下さんの囁く声がする。
「はい。お嬢様方は生まれながらにして『魔女』なのです」
そんなふうに聞いてはいるが、アトミは未だ受け入れることができずにいる。あの愚かしい母や悍ましい祖母の系譜に連なることが嫌なのだ。
父となるべき男を犠牲にして娘を身籠った母や祖母への嫌悪感、彼女達と同じ運命を辿ることへの忌避感を拭えないのだ。
母の双子の妹、未由のように、自らを犠牲にして運命に抗った者もいる。彼女の魂は白い猫に宿って娘の未来を見守り続けている。今でも半ば運命に呪縛され、開放されずにいる。
そんな呪縛から開放され、愛した男を犠牲にせず、女として幸せになることを、私達は諦めない。
そのために、竜斗君には今よりも強くなってもらう方が良い。彼を利用するみたいだけど…
竜斗君を更に鍛えるためなら、魔術を使うのもアリかも・・・運命を逆手に取って、忌まわしい呪縛に対抗する。彼を犠牲にしないためにこそ、魔術を知る。そのためなら魔女になることを厭わない。そんなふうに考え始めたアトミである。
これからアトミが魔女として覚醒するなら、そのことをミサキの予知夢が暗示していたと言えるのだが、はたして彼女達は何処まで運命に抗えるのだろうか。
年内に十万字!




