ヒモトさんの回想
2014.10.7 修正加筆。
私、世界女性文化協会会長の倉城ミヨ様から闇聲會事務局長の席を仰せつかりました、灯下史代でございます。
私がミヨ様にお仕えするようになったのは、ミヨ様が老舗旅館『倉城屋』で大奥様と呼ばれておいでの頃、ミヤ御嬢様がお生まれになる前からでございます。
大奥様には公私に渡って面倒を見て頂きました。
大卒で旅館に就職いたしました私は、お客様のお世話以外にも早くから旅館の経理、企画にも関わらせて頂き、旅館の経営から倉城家の家庭事情に関わることまで聞き及ぶようになりました。
大奥様は若い頃に婿養子をおとりでしたが、その御主人が家に帰らず他所の女性と外泊されるような方で、大奥様との間にお子様はお出来にならず、他所に出来てしまわれるようなことがございまして、お別れになられたそうでございます。
さて、大奥様には旅館の他にも代々受け継いで来られたものがございました。それが『魔女』です。ミヨ様の先代のミワ様、それより前の代…ミヲ様、みゑ様、ミヰ様…と、皆様が母から娘へと『魔女』を継がれた方々でございます。
大奥様ご自身が魔女の姿で旅館の中でマジックショーを演じられ、その助手を私が勤めさせて頂くこともございましたが、そちらの『魔術』は世を忍ぶ仮の姿。奇術ではないほうの『魔術』、呪術・妖術の類でございます。
もし御嬢様がお生まれにならなければ、大奥様は私を養女にして魔女を継がせることもお考えになっておられたようで、私も魔術の修行を仰せつかりました。
それでも大奥様は、ご自身で後継者をお生みになることをお諦めになられませんでした。朔月の夜に魔神召喚の儀、執り行われまして、『お声』のお導きにて御子様を授かられました。
ミヤ様と未由様。双子の御嬢様方でございました。『お導き』によって、生まれる前から犠牲が供えられ、生まれたときには魔法陣の描かれた身体をお持ちなので、私どものように修行をせずとも、呪文を唱えることもなしに魔術がお出来になると伺いました。
魔女を継ぐためお生まれになった御嬢様方は、また魔女を生む宿命を担っておいででした。お二人とも大奥様と同じように『お導き』によって御子様を授かられました。
ミヤ様はアトミ様とミサキ様、未由様は未来様をお生みになられたのですが、未由様は『お声』に従えず御自身を犠牲にされたと伺っております。
ミヤ様は鳥使い、未由様は獣使いの魔術を得意とされました。アトミ様は過去を読む魔眼、ミサキ様は未来を見る魔眼をお持ちです。ミク様は猫と話す力がおありのようです。
『闇聲會』は、姿の見えない御方の御声に導かれる方々をお助けするために結成されました。
既に『御声』をお聞きになられた方がその御力を伸ばし、これからお聞きになりたい方が御声に触れる機会を豊かにする、そのためのお手伝いをさせて頂けるよう、色々と御案内をさせて頂きます。
より深く御声に触れることで、会員の皆様の人生が意義深いものとなることを祈念しております。
以上がゴスロリ調メイド服に老眼鏡の灯下さんが語った内容だ。
聞けば聞くほど胡散臭さが拭えない…というのが、アトミの印象だ。
自分達の母の実の父親や、自分達の父親のことには触れなかったし、知りもしないようだ。
魔術の講習会のような企画もあるらしい。ゆくゆくは魔神召喚の実演も視野に、協力させようとするような意図も読み取れる。『闇聲會』とは、『闇の声』の影響力を強化し、声の主の影響圏を拡大しようとする組織だろうか。
今は協力する振りをして情報収集を優先しようというのがアトミの考えだが、姉が魔術に関わろうとすることに、ミサキは不安が拭えない。正直、嫌な予感がする。
灯下さんの説明によれば、祖母が受け継いだ『魔術』は、『魔界』の力を借りて『魔力』を引き出す技術であり、『魔神』を召喚する儀式も含まれると言う。
アトミは元々、憑霊体質というか暗示に懸かり易いというか、いわゆる霊的なモノの影響を受け易い。召喚した魔神に姉が感応したりすると厄介である。
「竜斗君がいたら心強いんだけどね」
竜斗には憑き物を祓う能力がある。だが、流石に来てもらうのは気が引ける。
「彼の写真だけでも効きそうな気がするんだけど」
「画像だけでも、お願いしてみない?」
待受画面にして御守りにしたいので…と、ミサキが竜斗にメールで依頼すると、気合いの籠ったカメラ目線の自撮り画像が送信されて来たのだった。




