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ハーレム・フラグ?

2014.10.9 加筆改稿。併せて前話も改稿。

 朝稽古を終えて朝食を済ませ、学校への道を急ぐ竜斗とトオル。

 今朝は少し遅くなった。いつもなら後ろから忍憮に追い越されるところだが、逆に追いかけている気がする。彼女の気配を探ってみよう。果たして、後方ではなく前方を歩いている。彼女にしては中途半端な速度である。

 このまま距離を保って忍憮とツーショットになるのを避けるか些か躊躇ったが、逃げ腰が性分に合わない竜斗は、追い付き追い越すことを選んだ。果たして、彼女の背中が見えた。


「オッス、ノブ」

 背中越しに声をかけられ忍憮が振り返ると、竜斗が微笑んでいた。

 気配を探り当てたことに満足して思わずニンマリしてしまった竜斗だが、彼の笑顔は彼女にとって好意を示すサインに他ならない。

「おはよう!・・・もうミサキと食事に行ったのか?」

「あ、あぁ。アトミさんとかトオルも一緒だったけどな」

「そ、そうか。今度はオレの番だな」

 一緒に食事するのは嫌でないのだが、長話になると、また『オレの婿』とか口走りかねない忍憮だ。


「えぇっと、今まだ俺の背中を触るゲーム続けてんだけど、ノブも参加するか?」

「おぅ?、この前のリベンジか!」

「今から校門くぐるまでに、その木刀の先が触ったら何でも言うこときくぜ、一個だけな」

 そう言って忍憮の前に進み出て背中を見せる竜斗。

「よし、触れたらオレとデートしろ!」

 その肩に木刀の先が届くかと思った刹那、彼の姿はブレるように彼女の視界から消える。気が付けば数歩前を歩いている。

「待て、逃がさんぞ!」

「リュウトのニンジャ・ウォーク、スゲーはやいでス」

 トオルはまた置いてけ放りで、木刀の追撃を躱し続けた竜斗は校門に辿り着いた。

「んじゃまたなっ」

「くっ、オレとのデート・・・」


 悔しがる忍憮の視線を背中に感じながら、そのまま生徒達の間を縫うように駆け抜けて行く竜斗。あの人波の海割れを見ることは免れたものの、若干の後ろめたさが残る彼は、土曜の夜にミサキの唇が触れた頬を指で軽く掻いていた。



 教室に入ると、アトミの席にミサキが座っていた。…かと思ったが、よく見るとアトミだった。妖しい光を宿した目を髪で隠しているのが右なのは姉の方だったはずだが、何故か見間違えた。


「お早う・・・アトミさん、だよね?」

「お早う竜斗君・・・私は、アトミ?」

「何故に疑問形?…あ、もしかしてミサキさんが入っちゃってるアトミさん?」

 頬を紅らめながら竜斗を見る眼差しが憂いを帯びていた。

「そうね。昨夜(ゆうべ)二人で考え事してたから・・・」


 あのヒモトさんが去った後、姉妹は自分達の出生に関わる秘密について考えを巡らせ、想いに耽るうち、将来に対し悲観的になってしまった。

 特に、ミサキの恋愛に対する喪失感のようなものに深く共鳴してしまっているのが、今朝のアトミだった。


「何だか知らないけど、アトミさんが何処(どっ)か行っちゃってるみたいだね・・・おーい、アトミさーん、帰って来ーい!」

 竜斗は深い考えも無く、何となく直感的な思い付きで、アトミの耳元で指をぱちんと鳴らした。

 それは自己催眠解除の暗示と解釈できるのかも知れないが、祓魔術の心得があると彼女が信じる、竜斗の言葉と動作は予想以上の効果をもたらし、アトミは再び本来の瞳の輝きを取り戻した。


「また助けてもらっちゃったわね、竜斗君・・・」

 我に帰ったアトミは、感謝と尊敬に溢れる眼差しを彼に送っていた。

(いつかミサキが竜斗君と結ばれる日が来たら私も…)

 言葉は声にならず、彼に届くことは無かったが、何か引力みたいなものを感じる竜斗だった。


「えーと、ミサキさんの方は大丈夫かな?」

「うん、本人は私ほど過去を引きずらない…ってゆか未来を引きずってないから。ありがとう」

「『未来を引きずる』も、面白い日本語だな」


 僅かな時間に何が起きたか全く知らないトオルがやって来て自分の席についた。




 その日の放課後、竜斗の携帯端末がメールを着信していた。

『ミサキです。

 お店でも学校でもありがとう。本当に助か

 りました。お世話になってばかりですが、

 お世話になりついでに御願いがあります。

 竜斗君の画像を一つ、送って頂けませんか?

 待受画面にして、お守りにしたいのですが。

 姉がまたあんなことになりそうなときとか、

 見るだけで立ち直れる気がするので。』


 『お守り』か・・・ミサキから先に画像セクシーショットを送ってもらってる御返しという訳ではないけれど、とにかく・・・お安い御用だぜ。


 二本指の刀印を構え、気合いの籠ったカメラ目線で自撮り。画像添付して返信した。




 その夜、竜斗は異世界に転生する夢を見た。竜斗は勇者で、トオルが従者。勇者を召喚した女王が忍憮で、魔王を倒して自分の夫になれと言い、ついでに伊部舞や山岡花も側室に迎えよとも言う。魔王に囚われた夢魔族という設定の倉城姉妹もいて、開放された暁には二人とも竜斗のハーレムに加わることを望んでいた。

 目覚めて夢と気付き、何とも呆れた話だと思っているうちに再び眠りに落ち、見た夢も忘れてしまう竜斗だった。


ここいらへんで一区切りとさせていただき、このあと少しずつファンタジー色を強めようかと思います。今回までが『序章』、次回から『魔界編』みたいな展開になればと期待するのですが、どうなることやら。


あっ、それと、10月から、タイトルも仮題のままじゃなく、改題する予定です。

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