昼休みの時間
読み耽るばかりで書くのをサボってました。
前話タイトル変更してます。
ツンデレ演じてみましたっ・・・てことにして無理矢理ゴマ化すアトミ。本当に誤魔化せたかどうかは追求しないで欲しい。このままではツンデレというよりヤンデレ扱いされることの方が容易い。
竜斗にばかり意識過剰にならないように、彼以外の対象を探そう。
他の男子は、ダメだ。隠れて弁当食う奴。ラノベ読む奴。十五、六歳の男なんぞ、10分毎にエロい妄想に取り憑かれている。
女子は女子で、SNSの投稿ネタ書いたり、イラスト描いたり。男子ほど露骨な肉欲を燃え上がらせはしないけれど、満たされない情欲に由来する嫉妬や虚栄が見え隠れする。
男子も女子も生徒はパス。先生は、・・・先生にしてみれば、俺の授業に集中してくれよってか。英語の先生、ソォリィ、フォギヴミィ。ぃやぁ、でも、竜斗君への想いを紛らわせてくれるほど魅力的な授業ではないのよ、残念。
いちいち個人情報を覗き見ることになってしまって面倒なので、最初から人間は無理。
教室の外の木とか見てたら余所見すんなとか言われそうだし、その木に思い出のある人の記憶に感応してしまうかもしれない。首括った人の噂は無かった筈だが・・・
手元のシャーペンとか消しゴムとかに集中するのも・・・実は本気で集中すると文具コーナーの店員とかメーカーの工員とか実在の人物の記憶が見えてしまう・・・これも面倒くさい。
外を見ることを避けるのなら、内に引き籠るほか術は無しか。
昨日のように、そう、昨日お店で妹と竜斗を誂っていたときの自分、未だ彼を異性としては意識していなかった昨日の自分にフォーカスしよう。
・・・・・・
そうやって取り敢えず精神的余裕を取り戻すアトミ。竜斗も彼女の視線に反応しなくなった。
どうにか踏み留まってヤンデレルートを回避できたか。やれやれ。
午前の授業終了のチャイムが鳴る。各自弁当を出したり、売店へ走ったり学生食堂へ向かったり慌ただしい。
竜斗とトオルは衣理が作った弁当を自分の机の上に出す。
アトミも弁当持参だがミサキと落ち合うために屋外に出る。
中庭にあるベンチに腰掛ける倉城姉妹。
いつものように無言の会話。竜斗を攻略する作戦会議のようなものが始まる。
「今度、彼を食事に誘おうか」
「食事ぐらいはできるわよね」
「まあ最初はグループ交際の体で・・・」
「あの従弟少し煩いけど、居てくれた方が間が持つからね」
二人が弁当を食べ終える頃、妹が空を見上げて呟く。
「お母さんが来る。今日はハト」
ぱたぱたと羽音が聞こえた方を見る姉。
「そうみたいね。飽きないわね」
どうやら姉妹の母親が鳩を操って娘達の学校を覗きに来ているらしい。
昼休みの後は体育で、武道の選択教科の時間。竜斗達が通う高校では柔道か剣道を選択する。竜斗とトオルは柔道、倉城姉妹は剣道を選択している。昼食後、それぞれ向かう先が校内の柔道場と剣道場に別れる。
柔道場へ向かう途中、どこか違和感を覚える竜斗。昨日の占い喫茶からの帰りに背後に感じたのと同じような気配が、中庭に植えられた並木の中の一本から漂ってくる。見ると、木の枝に停まった一匹の鳩がこちらを見ている。
祖父が言っていた「邪気」を帯びてはいるが、結界を張るまでも無い「雑魚」のような気がする。結界より、祖父の真似をして邪気を祓ってみたい誘惑に駆られる竜斗。
(えーと、リン、ピョウ、トウ・・・・)
両手の指に一本ずつ気を込めてゆく。
(・・・レツ、ザイ、ゼン!っと)
この手技は二本指の手刀で格子模様を描くように縦横に切るのが普通なのだが、けさ教わったのは祖父のオリジナルヴァージョンで、力を溜めて圧縮し、一気に放つ。
(ていっ!)
祖父は剣を振り降ろすような動作だったが、竜斗は両方の掌で見えないボールを投げつけるような格好になってしまった。
竜斗が技を放った直後、鳩は驚いたように羽ばたき、そのまま飛び去って行った。墜落することはなく、糞を落としただけだった。
(これでは痛い中二病患者に見られるだけか)
技の手応えは感じたのだが、人目を気にする竜斗。
「オゥ、『カ×ハ×波』でスか?」(伏せ字になっていない)
トオルは面白がっている。平和な昼休みだ。(?)
一般に鳥類は、飛行の妨げとならないよう、糞尿は貯えずに垂れ流す。竜斗の技に驚かされて鳩が飛んだ時、例の喫茶店の二階にいた倉城ミヤも椅子から飛び上がった。今回、転げ落ちはしなかったものの、・・・
「ッポゥ、漏らしちまったじゃないか」
文字通り鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、
「ッポゥ、今度から尿漏れ対策が要るのかねぇ」
着替えの下着を探す母であった。
今後は週1〜2回の更新を目指したいです。