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グリーンスカイ  作者: KOBO
プロローグ
6/19

星の弓矢

ミーレンス大陸 バリアン地区

A.M.1.30

バックスは、既に暗闇には慣れていた。一寸先も見えない漆黒の闇を歩くのも、バックスにとっては車を運転するぐらい簡単だった。それぐらい長く、バックスは暗闇の中で暮らしていたのだ。手に持っているたいまつの光も、今のバックスにとっては明るすぎるぐらいだ。バックスは、一歩一歩、足音を忍ばして歩き、常に腰からぶら下げた刀に手を添えていた。いつでも戦えるように。

しばらく行くと、住宅街の廃墟に出た。ここはよく通る道で、あまり危険が少ない。だが、油断は禁物だ。

 自然と、刀を握る力が強くなる。

 その時、目の前に二つの光が現れた。二つの光は、ゆらゆらと揺れながら、バックスに近づいてくる。やがてそれは松明の光だとわかった。現れたのは、松明を持った二人の男だった。相手もこちらの存在に気づいていたらしく、片手に拳銃を構えていた。

よく見ると、二人とも黒色の防弾服を着て、首から特徴のあるペンダントをかけていた。星の上端が欠け、そこに矢が打ち込まれている形だ。ダイアーは、そのペンダントに見覚えがあった。アロースターだ。

 全世界ブラックアウトの日、政府機関は数年で消滅した。やがて、独立した組織、アローが大陸を支配した。 そんな中、警察に変わって生まれたのが、アロースターだ。アロースターはアローの傘下にあり、それでいて独立した組織でもあった。基本的に行っているのは、地区の管理、街の秩序の統制だ。だが実際、内部は腐りきっていた。地区の管理もずさんで、街はほとんど無法地帯と化していた。そんなアロースターは、ライバル意識からか、元警察を敵対視していた。

バックスは、軽く頭を下げて通り過ぎようとした。すると、アロースターの一人にものすごい力で腕を掴まれた。

「なにするんだ」バックスは手を振り払って言った。

「身分証を見せろ」ハンチング帽をかぶったほうの男が、バックスに拳銃を向けて言った。

バックスは、逆らってはいけないと思い、嫌々、リュックサックから身分証を取り出して男に見せた。男が身分証を奪いとり、松明の灯りでそれを照らした。

「バックス・アーティ...元警察か」

バックスは嫌な予感がし、身分証を取り返してズボンのポケットに入れた。「もう行っていいか」

「その刀はどうした」男が、バックスの腰にさしてある、刀を指差して言った。「どこで手に入れた」

「私の家に元からあった物だ」バックスは、刀を握りしめる手をよりいっそう強めた。「それがどうした」

ハンチング帽の男が、拳銃の銃口をバックスの頭に押し付けて言った。「お前を大陸の反乱フェーズ3と判断し、コアに連行する。おとなしくしろ」

やっぱりこうなった。バックスはそう思った。アロースターは普段、銃や剣を持った一般人を見かけても、何事もないように素通りするのに、そいつが元警察だと分かれば、なにかと難癖をつけ、自分の地位を使ってそいつを逮捕するのだ。やはりこいつらは腐りきってる。

「さあ、両手を出せ」男が、手錠を持って近づいてきた。

 バックスは必死に考えた。

 このままこいつらに逮捕されたら、息子はどうなる。この世界じゃ、子供一人では生きていけない。だったら逃げるか。しかし、既に顔も名前も知られてしまった。今さら逃げたとしても、もう遅い。ならばこの二人を殺して、誰にも知られずにこの場を去るか。だが、相手は二人でこっちは一人。しかも相手は銃を持っている。一人では、到底太刀打ちできない。状況は絶望的だ。

バックスは、どうにかならないかと頭をフル回転させながらも、ゆっくりと刀から手を離しかけた。その時、ハンチング帽をかぶったアロースターが、口から血を吹いて、その場に倒れこんだ。松明が転がり、バックスの足元に転がってきた。手錠を持った男が呆然としてると、突然その男の眉間に矢が突き刺さり、声も出さずに地面に突っ伏した。倒れた二人のアロースターの後ろにいたのは、弓矢を構えたバックスの友人、ディアナだった。


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