変わった先生
塾では人気の若い男性教師が4人いた。
安住先生、佐澤先生、赤川先生、森先生だ。
かすみは4人とも、それぞれに絡みを持っていたが
森先生との絡みはかすみ自身よくわかっていなかった。
森先生との出会いは英語の授業の振替だった。
森先生はモデルのようなスタイルと女の子がうらやましがるほどの顔のサイズが小さかった。
そして何より健康的に焼けた肌から『サッカー少年』という言葉が滲みでていたと言っても過言ではなかった。
結果かすみは思った。
こいつは高校時代チャラチャラしてたんだろうな、と。
チャラチャラしてきた、と確信したかすみはつい安住先生と話すときと同じようなテンションで森先生に話しかけてしまった。
すると
「おまえ、うるさい。」
それだけ言い捨てられたのだ。
かすみはさすがに悲しくなった。
この人の振替授業はもう受けられないな、とも思った。
その日以来、森先生とかすみは口を聞いていなかったがしばらくして授業の振替を行うことになったとき。
担当が因縁の森先生だった。
舟橋先生に担当が発表されて、かすみは絶句した。
一時間半も森先生の横で黙っていなきゃならないのかと思うと恐ろしくなった。
かすみは結衣に今日の振替授業が森先生だと言うこと告げた。
結衣にその話をするかすみの顔には力がなかっただろう。
「いーやーだー!一時間半もあの人と…ほんと嫌!」
無駄な抵抗をめいいっぱいするかすみを見て苦笑いした結衣は
「かすみちゃん…森先生嫌いなの?」
と、聞いてきた。
「いやぁ…嫌いってより、恐い。だって、あっちは明らかに私のこと嫌いだもん。」
かすみはそう言うと机に顔をふせた。
「どしたのー?」
かすみはハッと顔をあげた。
やはり、期待した通り赤川先生であった。
「師匠〜!助けて〜!これから森先生の授業なの〜!恐いよぉー!」
と訴えると、噂をすれば影。森先生本人が現れた。
「僕がなんっすか?」
言い方にトゲを感じた。
かすみは思いきったというか、なんというか…口を開いてしまった。
「森先生…私のこと嫌いでしょ…?」
赤川先生は状況が掴めていないようだったが、森先生へと視線を移した。
結衣もかすみの発言にびっくりしたようで、目が泳いでいた。
「はいっ!嫌いです!」
と、爽やかな笑顔で森先生はかすみに笑いかけた。
かすみは完全に心が折れた。
なんで、そんなこと聞いたのかと自分を責めるかすみであった。