かすみの過去
かすみは去年まで学校のいちばん勢力の強い女子グループにいじめられていた。
かすみはある1人の女の子に嫌われていたのが、その女の子はグループ規模でかすみを嫌うように仕向けていじめへと発展させたのだ。
大声で罵声を浴びさせられたり、囲まれて髪を引っ張られたりと
いじめ漫画で目にするようなことをかすみは受けていたのだ。
お世話になった中3の先輩の卒業式を控えたある日、かすみはそのグループのリーダーに廊下に呼びだされた。
「おい、田島!ちょっとこい」
「え…何で行かなきゃいけないの?」
かすみは少なからず、彼女に呼ばれるということはなにか悪いことが起こるとわかっていた。
「いいから!早く!」
反抗しても聞く耳を持たない彼女はかすみの腕をぐいぐいと引っ張り、廊下へと連れてだした。
廊下へかすみが連れて行かれると他のクラスの女子が小さく悲鳴をあげた。
かすみは自分に向けた悲鳴だと思った。
そして、自分はこんなに嫌われているのかと悲しくなった。
彼女は廊下の真ん中で引っ張り続けたかすみの手を離した。
すると人が集まってきた。かすみは何が起こるのかわからなかった。
「…なに?なにがしたい…」
そう言いかけたときかすみは思わず目をつぶった。
これが人間の反射なのだろう。
ーバシャッ。
かすみを呼び出した彼女の手には青いバケツを持っていた。
その中には水が入っていたのだろう。
かすみは洗ったばかりのセーラー服から水が滴るのを感じた。
「ハハッざまぁみやがれ!」
そう高らかに笑う彼女の声が廊下にかすみの頭にと響き渡った。
そしてかすみは自分が置かれている状況を理解した。言葉がでてこなかった。
気が付くとと足から力がぬけ、びしょびしょになった床に座りこんでいた。
かすみは泣いているのか、ただ頭からかかった水が顔を伝わっているのかわからなかった。
かすみがまえ泣いたのはもう半年以上まえのことだった。
今まで怖くて思い出さないようにしていた記憶は半年たったら、淡々と頭の中に整理することができるようになっていた。
「はぁ…」
思わずため息をついた。
今日は疲れたな、と思った。
「田島さん。」
急に教室のドア前から声がした。
声の主は佐澤先生だった。
佐澤先生の顔をみて、結衣の顔が思い浮かんだのも言うまでもない。