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スキマ産業奮闘記―In The Cradle  作者: 狩山 宿
Ⅰ. 揺籠と社会人
9/63

Act 9


さて、四人でパーティーを組んでの初の実戦である。ついでに出立前に機関に立ち寄って、期間無制限依頼である『クォートリズの駆除』も受注した。

クォータリズは人より少し小柄なトカゲ型の亜人である。基本は素手だが、時折棍棒のようなものや、冒険者が落とした古い短槍、片手剣を持っていることもある。討伐の際に持ち返るべきシンボルアイテムとして、鋭い爪や鈍い緑色の鱗を残すことがある。

基本的には数ばかりの烏合の衆といったような単純な戦法しかとらないものの、クォータリズヘッドという若干レアなリーダー格の敵が混じっていると、取らなければならない対応が大きく変化する。

さて、気を張りながらも高揚した様子の一行は、時折群がってくるプチニュートを適当にあしらいつつ、特に大したアクシデントもなくヘイカル湖を左に眺める辺りまで辿りついた。道中はまだまだ初心者プレイヤーが騒がしく飛び回っていて、アクティブモンスターがほとんど向かってこなかった、というのもある。

しかしながらこのヘイカル湖周辺となってくると敵の強さも変化し、前情報の通り人もまばらであるようだった。

「よーし。確認するよ、クォータリズはアクティブだけど、認識範囲が狭いから、姿を発見した時に私が魔法を撃ってひきつける、と」

シバの言葉に頷いて、エトが続ける。

「そうしたら俺がストッパーになって、あとはみんなで一匹ずつ集中的にのめせばいいんだよな」

「そうそう。でも俺の魔法にも注意してくれ。お前に向かって撃つかもしれん」

「いや、ちゃんと当ててくれ頼むから」

不自然な間を一切作らない、エトの真顔での応答がすべての返答を封じ込めた。

「‥‥‥えーっと。がんばりますよ?少なくとも私は。後ろから刺されないように」

おずおずとスピネルが言うと、うむ、とエトが渋く唸った。

ハルタチはちょっと拗ねたような表情で命中率が少し低いだけなのになあ、などと不安になるような言葉を呟いている。

「それじゃあ、あのあたりにいるのやる?」

「お、もう見つけたのかよ」

前方を指すシバに皆が了承を返す。

「いくよ。――スリー‥‥‥トゥー‥‥‥ワン‥‥‥ウィンデ!」

シバが風の基礎魔法をちょうど草が深くなっている場所に向かって放ったのが、戦闘開始の合図だった。

其処から一、二、三体のクォータリズが気勢を上げながら飛び出し、各々が臨戦態勢をとる。

「せいやぁ!」

突撃するエトがまず先頭に立っていたクォータリズに向かって勢いよく膝蹴りを放った。

「そこ!」

のけぞったところにスピネルがウォーハンマーの一撃を脳天に叩き込む。

と、隙を見計らってか爪を突き刺そうとした右のクォータリズをエトが牽制する。

「ファイアバルテ!」

瞬間、複数の火炎弾が勢いよくクォータリズたちに降り注ぐ。

ハルタチが唱えたのは火の中級魔法だ。「バル」系の上位呪文に当たる。

熟練度の上昇に伴って覚えた魔法なのだろうが、それにしてもこの上昇速度はでたらめといっていいだろう。

エト、スピネルの両名は火炎弾を見た瞬間に横に飛んで事なきを得たが、間に合わなかったクォータリズたちは火の雨に撃たれ、甲高い悲鳴を上げた。

一体はその猛攻に耐えきれずに途中で命尽きたようだ。

「せぇの、フルスイング」

「ウィンデ」

クァァ、という哀れなかすれ声とともに、残された二体も最初のクォータリズと同じ運命をたどった。

「おー。‥‥‥ドロップは、と。鱗、鱗、爪。まぁこんなもんか。パーティー初勝利おめでとー私たちー」

ドロップアイテムを仕舞い、振り返ったシバがにかっと笑って見せた。

「そこそこ余裕だったかね」

ハルタチが余裕綽々に言うが、前衛二人は顔を見合わせて全力で首を振っていた。

「怖かった‥‥‥」

「ああ‥‥‥」

「まさか初っ端から当たらないと決めてかかってくるとか」

「命が足りない‥‥‥」

「う、うぉ、俺だって、一応気にしてはいるんだぞ‥‥‥」

珍しく真面目にリアクションを返すハルタチ。

一瞬気まずそうに頬を掻き、びしりと折り目正しく頭を下げて。

「まぁすまん。避けてくれ」

「結局それか!」

ああ、後衛でよかった、とその様子を見てそう考えたシバに罪はあるまい。


とりあえず一度戦った感じだと各自の消耗はそれほどでもなかったため、シバが小回復魔法『ヒール』で若干リカバリしつつ、四人は継続してクォータリズを狩ることにした。

それなりに得られる経験値も割が良く、パーティー補正もかかっているため実に景気よく成長していく。

時々ハルタチの魔法が流れ弾のように飛散してくるのを避けるのも、前衛二名は慣れつつあった。

二時間程度その辺りで暴れた結果、各人のステータスはこのようになっていた。



名称:スピネル・ヤーディク

種族:ライカ・ヒュー(獣人)

Level:9

HP:450

MP:110

Str 40

Dex 38

Int 13

Vit 27

Agi 25

Luc 29


名称:ハルタチ・ノーム

種族:ノスタ・フェアル(鬼精)

Level:9

HP:270

MP:620

Str 15

Dex 27

Int 50

Vit 20

Agi 27

Luc 30


名称:シバ・ロキノ

種族:フェアル・ヒュー(半妖精)

Level:9

HP:340

MP:330

Str 15

Dex 38

Int 38

Vit 24

Agi 36

Luc 25


名称:エト・ラビットハート

種族:ノスタ・ライカ(獣鬼)

Level:9

HP:590

MP:115

Str 42

Dex 28

Int 12

Vit 44

Agi 28

Luc 24



それぞれレベルも9になり、スキルも複数覚えた。

まず、スピネルはこの戦闘以前に取得していた打撃系武器の強撃系スキル『ストライク』と、範囲型の『フルスイング』の他、『ツインブレイク』という二連撃の技を習得した。また、スタンを付与することもある『スタンプ』と一時的に数歩のみテンポ良く動ける、『ステップ』という補佐スキルも得たようだ。

『ツインブレイク』はシステムのアシストで強力な攻撃を素早く二度繰り出すというものである。ただし、その使い勝手の良い性能故に連続使用には若干のタイムラグを必要とするという制限が課せられている。『スタンプ』は通常の打ち下ろし打撃に一定確率でスタン効果を付与するようになるパッシブスキルである。当然打撃武器に限るが。

シバは順当に風魔法の熟練度を伸ばし、『ウィンデイル』という強風を鎌状にして飛ばす初級魔法を得た。さらには水系の初級魔法『ウォートバル』、そして毒などの状態を一時緩和する治癒魔法の『キュイ』も習得するこが出来た。

またレベルアップに伴い『ヒール』の性能も上昇している。とはいえ、やはりヒーラーとしての適性に関して言えばピュア・フェアルには叶わないだろう。

シバの面白いところは、アイテムを拾っているときに『初級鑑定士』というスキルを得たことである。他の3人はこのスキルを手に入れられなかったので、取得には何らかの条件があるのかもしれない。このスキルを得ると、アイテムの正式な名称や用途がなんとなくわかるようになるのだという。そのうち何かに使えるかもしれない。

ハルタチの場合はいろいろと特殊である。とにかく、炎の場合はすでに『ファイアバル』を習得していたほど魔法に関する適性がある。故に、それからの戦闘は試し打ちと称していくつかの基礎魔法を唱えていたのだが、その後しばらく経った時にはそれらの魔法の攻撃系初級魔法を大体使いこなしていた。命中精度は、推して知るべし、という残念な結果もついては来るが。

魔法の属性は火、水、風、大地の四種が根幹をなしている。大体の魔法は厳密にいえば四分類される、と言っても言い過ぎではない。ただ細かく見れば水と風の派生と言える光――治癒魔法も光の分類に属する――や、風と火に高い適性を持つことが使うこともあるという雷などと言った例外もないではない。

とりあえずハルタチは四属性の初級攻撃魔法を放つだけはできるようになったのである。

そしてエトはチュートリアルで得ていた『受け身』のスキルのほか、格闘系の『迫撃』、『気功術』、『回し蹴り』というスキルを手に入れた。

『迫撃』はまさに拳による強撃系スキルであり、『回し蹴り』もまた範囲型スキルである。これらのスキル取得状況はスピネルと似た傾向にある。

だが、『気功術』は一風変わったスキルで、戦闘中に任意で防御と攻撃どちらにも用いられるように切り替え可能となるスキルである。

使用を意識し攻撃に重点を置けば攻撃力の底上げをすることが出来る。また、敵の攻撃の際、とっさに攻撃を食らう部分を意識して発動すればダメージの軽減を図れるのだ。

若干使い勝手の難しそうなところではあるが、使いこなせさえすれば有用なスキルであるだろう。

また、これはスピネルにも言えることだが、エトはなぜか『気配察知』というスキルを手に入れていた。前方だけでなく後方の気配も敏感に察知できるというこのスキル、物理攻撃だけでなく魔法にも反応が可能となっている。

誰のせいで、とは今更説明する必要もない話である。




魔法にも当然ESとISが関わります。

ただしISによってESの熟練度上昇に補正がかかることは往々にしてあります。

ハルタチは範囲魔法を高い威力で出すことが得意です。

一方のシバは集中する時間や詠唱を短く抑え、手数を多くするのが得意なようです。


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