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スキマ産業奮闘記―In The Cradle  作者: 狩山 宿
Ⅰ. 揺籠と社会人
32/63

Act 32


一方スピネルは、ゆっくりと中心部に戻るべく歩いていた。

駄目だ、見つからない。一体どこにいるのだろう。そのような思考の海に没入していると、ふとスピネルは向こうから戻ってくる見覚えのある人影に気付いた。

思わず声を張り上げ、手を振る。

「ガルファさん」

するとあちらも気付いたようだ。同じく手を振りかえしつつ、小走りでスピネルに駆け寄る。

「うん。スピネルさん、だったね。見つかった?」

「いいえ‥‥‥」

しょんぼりとうなだれるスピネルに、ガルファも肩を落とす。

「どうしたんだろうな」

既にハルタチからは見つからなかったのでもうすぐ戻る、と言うメールが届いている。

エトも実は先ほどスピネルとすれ違っており、難しい顔をして唸っていたので、おそらくはハルタチと同じような状況であろうことが伺えた。

シバからは今のところ何の連絡もない。まだ探し切れていないのかもしれないが、それもまた見つかっていないというのと同義に当たるだろう。

「ですね。どうしたらいいんでしょうねえ」

スピネルは若干途方に暮れたようにメールを覗き込んでは考え込む。

ガルファもつられて同じようにメール画面を開き、そしてはた、とその動きを止めた。

「あれ?」

スピネルが怪訝そうにガルファを伺うも、ガルファはまるで能面にでもなってしまったかのように白い顔で一点を凝視している。

そして、瞬時にその形相が般若へと豹変した。

「ガルファさん!?」

だん、とガルファは力いっぱい槍の石突を地面にめり込ませた。

「行かなくては」

ぎりぎり、と歯を噛みしめるガルファ。怒りを中心とした、限界を超えるほどの感情の揺れに全身がわななくように震えている。

「スピネルさん。道具屋の横、倉庫裏。ハルタチさんとエトさんにもそう言って。念のためシバさんに安否確認の連絡もしてみて。自分は先に行く」

しかし、逸るガルファの服の袖をスピネルは瞬時に掴み、その場に押しとどめる。

「何を!」

止めてくれるな。ガルファの膨れ上がる怒りに一瞬スピネルは怯むが、聞くべきことは忘れない。

「何があったっていうんですか!」

「‥‥‥ミナが助けを求めてきたんだ。今、自分の代わりに女の人が捕まっていると」

スピネルははっ、と息をのんだ。

捕まっている。一体それがどういう状況でそうなったのかわからないが、けしてまともな状況だとは思えない。

最初ガルファの相方を女性と考えなかったように、現状女性のプレイヤーはそれほど多くない。

そうだとすると、ミナカタのかわりに捕まっているという女性が誰か、と考えた時、容易にそれは想像できた。

「シバさん」

だから、ガルファはシバに念の為連絡をしろと言ったのか。

もしかしたら、危険な目に合っているのが、シバかもしれないから。

「助けて。死にたくない。ミナがそう言った」

ガルファをつかむ力が緩み、ぱたりと力なくスピネルはその手を放した。

そしてガルファはもう何も言うこともなく、ただ疾風のように駆け出して行った。

「スッピー、どうした?」

はっとしてスピネルは、横手の道からきょとんとした顔で出てきたハルタチを視界にとらえる。

「ハルタチさん‥‥‥!」

駄目だ、泣きそうになってしまう。スピネルは言葉を見失いそうになりながら、懸命に現状を説明した。

「ミナカタさん、見つかったけど、危なくて。シバさんが、トラブルに、巻き込まれた、かも」

「は?」

「急がなきゃ。道具屋の横、倉庫裏。エトさんにもメール」

わたわたとメニューを立ち上げ、メール画面を開くが、動転してしまってなかなか思い通りに操作ができない。

「おい。僕ならここだ」

へ、と間の抜けた声を上げてスピネルが動きを止める。確かに、ハルタチの横にはエトがぬっと突っ立っていて、困ったようにスピネルを見下ろしていた。

きっと初めからいたのだろうに、見えていなかったとは。どれだけ自分は混乱しているのだろう。スピネルはそう思って苦く自嘲した。

「慌てるな。ちゃんと聞いたぞ。行こう」

そしてエトはスピネルの手を引き、過たず目的の場所へ、倉庫裏の路地へと駆け出し始めた。

ハルタチもスピードに乗って二人と並走していく。

「で、結局どういう状況なんだ?」

走りながら、ハルタチがスピネルを余計に慌てさせないよう、慎重に言葉を選びながら柔らかく問う。

それでも道行く人を顧みず、時に派手にぶつかりながら邁進していくその姿からは冷静と言う言葉のひとかけらも似合そうにはないのだが。

「え、えっと」

まずい、とスピネルは困惑した表情を浮かべた。肝心な部分を聞きそびれたのだ。

「しかたねーな。まあ、行けばわかる」

ハルタチはぐっとスピードを上げ、ずんずんと先に進んでいく。

僕らも急ごう、とエトもスピネルの手を引きながらスピードを上げた。


蛇足。


『MMO 男女比』で検索をすると、2009年の時点で、

男:女 = 7:3

と言うの現実的な数字なのではないか、と言う話が出てきました。

最近の傾向を見ると個人的には6:4ぐらいあるんじゃないかと言う気もしますけれど。

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