Act 27
その道は当然ながら、何のモンスターも出現しない道であり、20分もしないうちに外に出ることが出来た。
「グレナ君‥‥‥本当にありがとう」
こんなハプニングに合うとは思いもしなかった。しかし、故に彼の助けを得るという稀有な体験をすることが出来た。
「ううん、全然何もシてないよ」
グレナクレイはそう言って、スピネルの手を取る。
そして、掌を開かせ、そっと何かを握りこませた。
「大したモノじゃないケド。昔カラ、一族に伝わる、お守りね。またここ来てよ、歓迎スルよ!」
スピネルは手を開き、そっと中を確認した。
「わあ‥‥‥!」
それは美しい鉱石だった。球体をしたそれはスピネルと同じような色合いを持って陽光にきらめいている。
ピンポン玉より少し小さい程度の大きさのそれは、何か存在だけで不思議な力を放っているような気さえした。
「ソれは、ヒトの心を貰って輝く、言われてる。ボクらは大地の祝福って、呼んでた。あなたに、きっと幸セ、もたらスよ」
あなたウツクシイからね!そんなことをしれっと言って笑うグレナクレイ。
言葉をなくしてあわあわとスピネルは周りに助けを求めるが、面白がることを追及する彼らは基本的に見守るばかりである。
「グレナ君はおませさんねー」
シバがそう言ってにこにこ笑うと、きょとん、としてグレナクレイは首を傾げる。
「ボク、今年で18になるよ?」
「嘘っ」
人は見かけによらない。そんな教訓を新たに得た四人であった。
バイバイ、と手を振って再び穴の中に引き返していく彼を見送る。
その姿はゆっくりと洞穴の狭間に溶けて、見えなくなった。
ポーン。
突然、四人の耳に電子音が響いた。
――特殊クエスト、『遺跡人との交歓』条件を達成しました。
「え、何だ?」
突然のことに戸惑うエト。身に覚えのない事態に皆戸惑っている。
「なんかクエスト達成って‥‥‥どういうこと?」
シバも首を捻っている。そんな中、スピネルが大慌てで達成クエスト一覧の項目を見る。
・『遺跡人との交歓』(特殊)
条件:初回探索時にシエンダ洞穴ボス(テライオン)を一定時間内に撃破後、ワイズ・ルインホビットを救出する。
報酬アイテム:能力中上昇(Luc)、大地の祝福(備考:もっとも好感度の高い人にのみ)
「これは、まさか」
「はー」
スピネルが可視化して皆と共有したデータを見て、シバもあっけにとられたように素っ頓狂な声を上げる。
「なんじゃこれ。すごいなあ。ここまでイベントで作りこんでるの?」
「しかもそれ以外にも下位互換クエストまで仕込んでるとか」
ちなみにそちらの下位互換クエスト『遺跡人との交流』は初回探索時にアースゴブリンリーダーを撃破後、ルインホビットを救出、と言う条件であるようだ。
どちらにせよ探索一回目でボスを倒したりレアMOBを倒す、などと言うことは普通ならそうそうない。大体の人間がシエンダ洞穴で発生する一般クエストを受け、レベルを上げ、様子を伺いながらボスに挑むのだ。
まさに、今回は偶然に偶然が重なったと言えよう。
「スッピーは無茶苦茶だー」
「私のせいだけじゃないですよ!?」
ぎょっとしたようにスピネルが反応する。
しかしそれでもハルタチもエトもどこか不敵な笑みを浮かべながらこう受けるのだ。
「でも、お前がお前だからなんだぜ」
「すげーすげー」
うう、と唸ってひとしきり困った後、絞り出すように言葉を選び、結局、私いいこと言われてる感じがしないです、と答えたスピネルであった。
そうやってひとしきり騒いだ後、ふ、と誰ともなく溜息をついた。
「太陽だね」
「うん」
そして黙る。鳥の声、微かなざわめき、木立を抜ける風。誰もが、ああ、外に出てきたのだ、というその事実を噛みしめているのだ。
スピネルはずび、と鼻をすすった。なんとなく泣きそうになったのだ。
それを見て小さくシバが笑う。
「ぼろぼろなのが目立つなあ」
薄く茶に汚れ、よれよれになった服をつまみ、エトがパタパタと土ぼこりを払った。
「帰ろうぜ」
「はーい」
ゆっくりと、しかし確実な歩みで彼らはログスポートへの道を進みだした。
時々道端にしゃがみ込むシバが薬草を確保するのを手伝いながら。
*
短くなりましたが、きりがいいのでここでいったん切ります。
やっと 本題に 入れる!




