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スキマ産業奮闘記―In The Cradle  作者: 狩山 宿
Ⅰ. 揺籠と社会人
19/63

Act 19

すぐさま後列ではハルタチが左腕をかざし、早口ながらも真剣に詠唱を始めた。

「畏む、源、空とヒトの橋、――」

ずいぶんと大がかりな呪文のようだ。炯々と指輪が光を放ち、魔力の強さを教える。

「シッ!」

そしてそれとほぼ同時にエトが拳部分に気功を纏う。相手に攻撃をさせる間もなく、打倒してしまわんとばかりに凄まじい迫撃の連打でテライオンを攻め立てていく。

「はあっ!ツインブレイク!」

ギイン、ギイン!という硬質な音が二回連続で続いた。スピネルはとっさにエトに向かって蹴りを放とうとしていたテライオンの脛に攻撃を行い、モーションを防ぐ。

「助かる!」

と叫んだ刹那、エトはテライオンの異変に気付いた。

「避けろ!」

強烈な光の刃がテライオンの顔面から放たれる。

エトはテライオンの膝を踏んで駆け上がり、急遽アッパーでその軌道を無理やり変えるが、当然無事では済まない。巻き込まれたエトはかなり大きめのダメージを食らってもんどりうって落ちてくる。

「ヒール!!」

いいタイミングでシバのアシストが決まり、癒しの光を浴びたエトは生き返ったと言わんばかりに勢いをつけて立ち上がった。そして、取るものも取りあえず振り返ると、大音声でシバとハルタチに呼びかける。

「あのレーザー、攻撃レンジが長いぞ!後ろも危ない!」

「了解っ」

詠唱を続けるハルタチは返事を返すことはしなかったが、確実にその顔は引き締められた。

「水が弱点だろうってのはわかるんだが、な」

エトと並んでいるスピネルも顔が曇っている。予想以上にダメージの通りが悪いのだ。

魔法使い二人に頼った戦闘になるとどうしても長引き、負担が大きくなる。

そうこうしているうちに、再びテライオンが強烈な蹴りをスピネルに放つ。

これは受けきれないだろう、と悟ったスピネルは多少のダメージを覚悟で敵に鋭利な刺突面を向けてしっかとバッシュピックを構え、衝撃に備えた。

「ぐっ」

押し殺したように息を漏らしながら、しかしそれは無事成功したようだ。

ダメージをそれなりに受けはしたものの、テライオンのHPも減少している。カウンター成功、と安心したようにスピネルは息を吐く。

と。そこでスピネルはあることに気付いた。テライオンの動きが少し鈍った、か?

今どこに攻撃を当てただろう。ふと見て、テライオンの傷を確認して、そして思い当たる。

スピネルの頭の中で、かちりと鍵が合わさったように疑問が氷解していく音が聞こえたような気がした。

そしてスピネルは勝ち誇ったように声を張り上げる。

「白い光の部分、攻撃通ります!」

「おお!」

どうやらテライオンの弱点は四肢にそれぞれある白く輝く部分らしい。

「よし、よく見つけた!集中攻撃だ!」

エトが気勢を上げる。再開した攻撃はテライオンの膝にある一点を狙うものになった。

「‥‥‥収斂する‥‥‥清流は、濁たる暴流となる、ウォートブロウ!!」

丁度詠唱を終えたシバがぎり、と歯を食いしばって魔法を放った。

凄まじい勢いを持って水が獲物に向かって走る。

「行け!」

ところがシバはそれだけでは終わらない。

当初は胴体を狙っていたのだろうその魔法に、シバは力を込めて杖を握り、再び魔力のこもった言葉を乗せたのだ。

杖の先端の魔石が強い輝きを放つ。

すると、直線を描いて飛ぶ水塊は急に角度を変え、なんとテライオンの激しく動かされている左腕を打ち据えたのだ。

「ヂヂッ!――ヅー」

それはテライオンの悲鳴だろうか、ノイズ混ざりの電子機器のような音が周囲に響き渡った。

見事にその一撃でテライオンのHPが削られていく。瞬時に狙いを切り替えていくなど、何ともまた器用な技だ。

すげーなあ、おい、とエトが思わず漏らし、がぎん、とテライオンの足を気功を纏った足で蹴った。

だが、当然テライオンは一撃や二撃でそうそう怯むということがない。拳を振り回し、立て続けに目からは強烈な熱量を持った光を放つ。

ビームと呼んでも差し支えないであろうそれが後衛に致命傷を与えることだけは避けなければ、と前衛二人はとにかく苦心しているのだが、特に最後の手段として体を張って止めに行くエトは必死の体だ。

今も少し避け損ねたエトとスピネルはHPを3分の1以下まで削られ、慌てて平癒丸を噛み砕く。

味も何もそんなことに構っていられず、二つほどを一気に口に放り込んだせいで少々咽るスピネルに、シバがごめんよ、味もう少し何とかするよ、と慌てて語りかけているのが緊張の漲る戦闘だというのにどこか笑いを誘うのだが。

テライオンはそもそもボスだけあり、通常の攻撃でさえかなりの攻撃力を持っているようだ。その上防御力も相当高い。

足元でヒット&アウェイを繰り返しているつもりでも、エトとスピネルには確実なダメージが蓄積していた。

「して――盟約を針と為し、破りし者、喉を突く」

ハルタチの通る声が、突如としてエトとスピネルに向けて鋭く訴えかけた。

「頼む、早くっ、退いてくれ!」

切羽詰まった調子に緊急を悟った二人は、もう後方を確かめることをせず、ただ土煙を上げて左右に散開する。

テライオンの拳が急に目標を失って空を切った。

「ウォートスピアラー!」

針の雨。いや、雨の針か。地面と平行に銀の光を纏って、無数の鋭い刃がテライオンに降り注ぐ。

「ヅッ、ザザッ、ザーッ!!」

弱点という問題ではなく、もはや敵も味方もない無差別攻撃。

容赦のない魔法がひたすらにテライオンに牙をむく。

ハルタチは――ただ、ひたすら真剣な表情で右手をぴんと翳し続けている。

明らかに自らの魔力という魔力を放出する気だろう、もともと色白であるハルタチの顔から見る見るうちに血の気が引いていく。

時折思い出したように左手に握れるだけ握った滋養丸を噛み砕いているが、そのごり、という音すらどこか生々しい。

ぞっとするほど無慈悲に放たれ続けているそれに、スピネルは思わず戦慄した。

それからどれくらい経っただろうか。ひゅう、とハルタチは笛のような息を吐き、軽くよろけながら突如として豪雨は止んだ。



アクションをきちんと描こうとするとどうしても展開が長くなります。

ドラゴンボールの魔神ブウ編のようなものかもしれません。

結局一週見逃しても話が通じるマジック。

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