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スキマ産業奮闘記―In The Cradle  作者: 狩山 宿
Ⅰ. 揺籠と社会人
18/63

Act 18


奥に行っても、敵の数は多いもののそれほど強敵が出てくるというわけもなく、全く苦戦することもなくやいのやいのと明るく騒ぎながら彼らは深層へと進んでいた。

道もやはり初期のダンジョンゆえかそれ程複雑でもなく、迷う要素はほぼない。

1時間ほど進んでも敵の種類もそれほど変わり映えなく、一つ挙げるなら大地魔法を使うアースゴブリンが出現するようになった位である。

現在もロックスライムとケイブバットの混成群を相手取っているが、危なげなく立ち回ることが出来ている。

「ダンジョンっていうのはやっぱり複数人で行くように考えられてるからな。ソロとかペアだとこの敵の数は苦戦するんだろうが」

金属塊のような拳を振り回しながらエトが獰猛に笑う。

ピックで器用に攻撃を防ぐスピネルもですねえ、と呑気に返事をした。

「レベル的には適正なんじゃないです?ほら、私たち装備きちっとしたし」

「ああ、それはあるかも」

うん、と納得したエトだったが、そのきりっとした顔が一瞬がくんと揺らぐ。

するとどうだろう、エトはがくりと力が抜けきったようにしゃがみこんで、右足を抱え悶絶し始めた。

「え、ちょ」

「あちゃー。すまんー」

ハルタチの放ったウォートピアス――鋭い水の針が、エトの右ふくらはぎに見事命中したのであった。

「ハルタチさああぁん!」

スピネルも思わず半泣きである。

「おい。お前あとで〆る‥‥‥」

どうにか立ち直ったエトだが、完全に目は据わっていた。あとが恐ろしいところである。

ひー、と若干ハルタチも顔が引きつった。

「ウォート、ウォート、っと。ほれ、この最低限な力で敵を打ち落とす省エネを見習えー」

シバがニヤニヤ笑いながらハルタチを見やる。

くそうー、と真剣に地団太踏んで悔しがるハルタチ。

がり、っと平癒丸を噛み砕き、げっそりした顔のエトが戦線に復帰する。

力任せにロックスライムを踏みしだき、安定を失ったケイブバットを重量に頼ってしたたかに殴っているその姿はまさに悪役と呼んでも何ら差支えなさそうである。

オーバーキル気味に敵を殲滅したエトは深い息を吐いて、それからくるりと勢いよく振り向いた。

「ハルタチぃ」

「あぐ」

ハルタチの方に軽く腕を回したように見えるエトだが、腕はどんどんと首筋に向かって締まっていく。

まさに文字通り締め上げているのだ。

「な?」

にっこりとエトが笑う。黒々としたオーラが見え隠れする素敵な笑顔に、ハルタチはこくこくと勢い良く頷いた。

「よし」

そしてぱっと手を放し、エトはそこから数歩離れた。

ぐえぇ、と唸るハルタチは心底疲れ果てた表情でエトを見ている。

「割といつも思うんですけど、男性陣の肉体言語での会話って不思議ですよね」

「そうねー。七不思議の一つに入れてもいいよねー」

女二人はそうしてのほほんと二人を見ていた。

割とよくあることなので、実のところあまり気にしていないのである。

「そういえばさ、俺ら結構奥まで来たよな?一番奥って何かボスとかいるの?」

ハルタチがシバに問う。

「うん、なんか情報見てると、巡回する中ボスと一番奥の大ボスがいるみたいね。中ボスが『アースゴブリンリーダー』で、あんまりでないみたい。レアMOB扱いだね。大ボスは『テライオン』っていう岩のゴーレムだわ」

「ゴーレムかあ、的が大きいんならはずさねーよ?」

信頼性のない一言である。白けた視線が三対ハルタチに向けられるが、にっこり笑ったままハルタチは棒読みでこう続けた。

「てへぺろー」

沈黙。

「ないわ」

「ないな」

「いや、ないですわー」

すたすたと歩き去るスピネル、シバ、エト。

「すんませんでしたー!」

愛嬌とは自分より強いものを倒す柔らかい武器、という言葉もあるけれども、いい年をした男が愛嬌を振りまいたところで何の足しにもならないのである。

「まったく。魔素の色が濃くなってきたからボス部屋もうすぐでしょ。なんだかんだでついちゃったんし、どうせなら真面目にやろう」

シバが軽く呆れながら先を指さした。

なるほど、確かにもう少し行ったところには開けた空間が見える。

「うわー、緊張しますねー‥‥‥」

「ああ、何となく怖いな」

スピネルが素直に緊張を訴えるのに対し、エトは相変わらずの恬淡とした表情でついと肩をすくめて見せる。

「まあいつも通りやろう」

力付けるようにニヤリとした笑みを浮かべて、エトは行こうか、と皆を促した。

「はいっ」

そうして岩の大広間に、彼らはゆっくりと踏み込んで行く。


そこには、彫像のように壁の中に埋もれている模様のようなものがあった。

人に近い形をしたそれは、アニメなどでよくデザインされるロボットのような雰囲気を持っている。

身構えながら四人が少しずつそれに近づいていくと――突然、模様の中の空洞が発光を始めた。

まるでなにかの図形を描くかのように、右上に、右下に、左上に、左下に存在する空洞が白く染まる。

そして最後に。

上部にある一対の隙間に、これまでとは違う色の光がポウっと灯った。

それはほかの部分と比べてけして明るくはないが、その輝きからは明確な意思があることが伺える。

緑と青が混ざったような不思議な色を持つ瞳の、そう、それはまさに岩の巨人。

なるほど、それはまさしくこれまで知り得ていた概念とは違う形の生命であった。

ガガ、ゴゴ、という岩の擦れる不穏な音と地響きが満ち、埋もれていた模様が浮き上がるようにしてそれは現れる。


BOSS テライオン


ヅ、ヅーという電子音のようなものが響き渡り、そして岩の巨人はずしん、とそこに一歩を踏み出した。

引き返せぬ強敵との戦いの始まりである。



レアMOB<ネームドMOB<ボスMOB

で強さが上がっていきます。

レアはそもそも見つけるのが難しいほど出現率が低く、ネームドは出現率が高めです。

ボスは特定のダンジョンの最奥にいます。


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