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スキマ産業奮闘記―In The Cradle  作者: 狩山 宿
Ⅰ. 揺籠と社会人
15/63

Act 15

「戻ったぞ。しかし、仲いいよなーお前ら」

苦笑しながらエトが戻ってきた。輝ける金属の鎧と拳のお蔭で、威圧感は五割増しだ。

「お、おかえりなさいー。どうでした?」

にやーっとエトの表情が嬉しそうに崩れる。残念なことにその表情で威圧感は三割引きになった。

「どうでしたもなにも。ぜんっぜん違うぞ。本当に、ぜんっぜんだ!もう今までがなんだったんだと思えるほどだぞ」

「マジで!」

ハルタチが興奮してはしゃぐ。

「防御も攻撃もずいぶん底上げされた。初期装備であそこまで行ったって、結構無茶だったのかもなあ」

そういわれればそうかもしれない。一応多少強い敵が出る、と言われるところなのだし、それなりに準備してから本来行くところだったのだろうか。

「とりあえず、おみやげな。スッピーの分の素材がなくなったら悪かったから、必要そうなものは揃えて持って帰ってきたつもりだけど」

「まさかの三人とも呼称がスッピーで定着とは‥‥‥!」

エトだけはなんとなく信じていたのだけれど。がくーっと一瞬スピネルはうなだれ、しかしちゃんとすぐ立ち直った。

「あ、お土産ありがとうございますー。鉄と銅、ああ、錫も持って帰ってきてくださったんですねー。皮もある。そうだ、エトさんにもお土産が。左手をご参照ください」

なになに、とエトが指された通り左を見ると、ピタッと束の間の硬直の後、ひどく脱力したようにその場にしゃがみ込んだ。

「ハルタチさんプロデュースだぜー」

「誰の入れ知恵かと思ったが、予想通りすぎる‥‥‥」

はーあ、と仕方ないなあと言わんばかりにため息をついたものの、エトもちゃんと用意されたワークグローブとワークブーツを装着した。

「ほんっとうに仕事思い出すじゃねーかこれ」

「ですよねー。私もこのフィット感に最初マジでビビりました」

シバも真面目な顔でうなずく。なんだかんだで使いやすいのだ、やはり。

「ありがとうな、スッピー。グローブはめるとナックル滑りにくくなるわ。結構いいな」

予想外の効果も表れたようだ。みんなの笑顔に、やっぱり生産はいいなあと思うスピネルだった。

「じゃあエトさんのお土産に甘えまして、私も自分の分作りますね」

がんばれー、とシバが笑顔で声をかける。

シバも何やら思い立ったらしく、余った材料を再び作業台に乗せ始めたようだ。

それを横目でちらりと確認し、スピネルはまず自分の防具について考える。

前衛故に鎧型が適当だろう。でも、金属の比率が少なくないと、動きが阻害されそうだ。

エトの物よりももっと軽い軽量の革鎧。

スピネルは出しかけた金属を片付け、リザードマンの鱗と皮を置いた。そして少し首をひねり、皆に問いかける。

「一応確認させていただきたいんですが‥‥‥前回の戦闘で得たドロップの『濁緑の鱗』を一個だけ使いたいんですけれど。いいでしょうか?」

「いいんじゃない?」

「良いと思うよ」

了承を得たスピネルは若干ほっとした顔をして、新たに緑の濃い鱗を一つ置いた。

ハンマーを構え、息を吸い、吐く。自然なフォームでスピネルはそれを素材の中に打ち込んだ。


革鎧 スケイル・レザーアーマー Lv3 Def68

素材:獣の皮、リザードマンの鱗、鉄の端材

特殊効果:状態異常発動率減少


濃茶のレザーアーマーだが、右肩と左胸の部分にアクセントのようにリザードマンの緑の鱗が輝いている。

早速その鎧を身につけるスピネル。くるりと体を動かして着心地を確かめるそのさまは、フットワークも軽く、前衛として心強く立ち回れそうな様子を想起させた。

「いいねー!」

「えへへ。ありがとうです!多分濁緑の鱗は状態異常耐性がつけられるのかな、って感じですね」

「ほほう。じゃあ私の出番かね?」

魔工ならまかせんしゃい、とシバがわきわきと怪しげに指を動かす。

「そうですね、アクセサリーか何か作れればかなりいい感じです」

「ほいよ、じゃあ後でやってみよう」

うっしっし、と楽しそうな声を上げるシバも、なんだかんだで生産を満喫しているようだ。

さて、と考えてスピネルはちらりとウォーハンマーを確認した。次はスピネル自身の武器を作り直さねばならない。

もともとあるウォーハンマーをベースにし、改造するような形で新しい武器にしよう。

鉄製の武器はあまりに重いので総金属で作るような武器には向かないが、木と組み合わせて作り、金属部分も少ない軽打撃武器になら適性のある素材となる。

幸いにして熟練度上げに用いたアイアンインゴッドの在庫は十分だ。

ごとごと、とまたしてもハンマーを作成した時と同じように作業台に大量のアイアンインゴッドを積む。

そしてそこにウォーハンマーを重ね、木材を加えた。

「だあっ!」

力いっぱい叩けばそれはまたしても圧縮され、輝きながら小さく小さく縮んでいく。

輝きの中から現れた新たな武器は、鈍く輝いてスピネルが手に取るのを待っているかのようにそこにあった。


鎚 バッシュピック+ Lv3 Atk73

素材:純鉄、柔木

特殊効果:攻撃力小上昇


「よっしゃー!」

自分の武器にプラスがつくことほどうれしいことはない。しかもそれを実践ですぐさま使おう、と思っているときには見事にその嬉しさが相乗される。

「おめでとーう」

ハルタチがへーい、とハイタッチを要求してきたので、ノリノリでスピネルが答えると、エトもほれ、と両手を差し出してきた。ぱあん、と小気味よい音が続いて響く。

今度の鎚は多少洗練されたデザインになっているので、ピッケルを持ち出してきました、と言わんばかりの前回よりは余程武器らしくなっている。

「うひひ、やっぱ自分の武器を作る喜びは格別ですにゃあ」

にへら、と緩んだ表情を作るスピネルだったが、その緩んだ頬はすぐに結構な勢いでつつかれて思い切りへこまされたのだった。

「ぷげっ。にゃにお」

「うふふふふ。何かを作っていたのは君だけではないんだぜ。見よー」

そんなシバがやり遂げた、という表情で掲げたのは、スタイリッシュな雰囲気の指輪。

白銀色の地金が鳥の翼の形になり、少し緑のかかった透明な精霊石を包んだようになっている。割と男性でもつけられるようなファッションリングを思わせるデザインだ。

「属性入れなくて、純粋に魔力だけを込めるだけこめてやったんだぜ。多分これなら使えるんじゃない?」

そしてぽーんとそれを投げて――投げ渡された先で慌てて受け取ったのは、ハルタチ。

「いやん。プロポーズだわー」

思わず体をくねらせ、オネエ言葉を使って恥じらうハルタチ。

ただ顔も真っ赤になっているのでこれは照れ隠しで、本当のところはかなり嬉しいのだ、間違いない。

「はいはい給料三か月分じゃないけどね。あと小人が渡したあれだから力に魅入られておかしくならないようにね」

「火山に捨てに行かされるのかよ!?」

有名なファンタジーを思い出して一瞬びくっとしたらしい。何処か小動物じみたその動きは見た目に似合わず可愛らしい。

そんなこんなで、ハルタチは若干挙動不審になりつつ、指輪をおずおずと右の中指にはめたのだった。


指輪 フェアルリング Lv3 Atk68

素材:精霊石、ブロンズ

特殊効果:MP上昇


効果を確認し、じっと指輪を見つめ、それから視線をシバに移したハルタチは。

「‥‥‥こ、こんな指輪で喜ぶほど、安い男じゃないんだからねっ」

「ちょ、ツンデレかっ」

残念ながら発言の主はいい年の男だ。

頬まで染めても余計に残念なだけである。

余談ではあるが、このハルタチのリアクションに最もダメージを受けたのはエトであったということを、申し添えておこう。



装備が充実したところで、いよいよダンジョンに挑みます。

ここから怒涛の展開を現在は予定していますが、さて、どうなってくれるやら。

彼らが自由に物語の中で跳ね回るので、現状既に想定外のこともちょいちょいと起こっています。

要はこれだけ書いておいてまだログアウト不能になっていないということなんですけどね‥‥‥

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