Act 14
「では続きと行きまして。エトさんの武器行ってみましょうか」
「お、連続か。いいのか?」
材料の問題もありますしねえ、とスピネルが苦笑する。
「ナックル系かカタールにするかで悩みどころなんですけど」
「そうだなあ。今のところはナックル系で作ってみてくれるとうれしいな」
了解です、とスピネルは首肯し、今度はアイアンインゴッドではなくカッパーインゴッドと鉛の原石を取り出した。
「エトさんなら総金属でも振り回せますよね?」
そして、打ちぬく。
キィン、という澄んだ音を響かせてまろび出たのは、柔らかく黄色に輝く拳が一対。
闘拳 ブラスナックル Lv3 Atk 80
素材:真鍮
特殊効果:連続攻撃
「なんか、装備だけで一気に強くなったような気がするな」
ふふっと笑うエトの瞳はきらきらと輝いている。
早速鎧とナックルを身につけてご満悦のようだ。
「うお。‥‥‥なんかド派手な奴がいる」
いつの間にやら入口には若干引き気味のハルタチが立ちすくんでいた。
確かに、今のエトは金属部分が多いのでピカピカ光って目立つだろう。そうやって森の中を駆け回るエトを想像して、スピネルも一瞬ふっと笑ってしまった。
「じゃあ、いい感じにハルタチも帰ってきたし、今度は僕が試し打ち兼ねて素材とってくるかな」
ありがとうな、といってすうっとハルタチとすれ違うエト。その動きは金属を多く纏っていても以前と変わらぬ軽やかさだ。さすが獣鬼である。
「いいなあ。なー、俺にもスマートなのいっちょ頼むわ」
「はいー。じゃあ布多め、内側に革を張った感じので」
ハルタチがインベントリからばっさばっさと出したモンスターの毛と皮をとりあえず分類し、そこから適当な分量をスピネルが作業台に置く。
「ていやっ!」
がきんっ、と作業台にハンマーが撃ち込まれると、もそもそっと毛と皮の塊が光り、平たく伸びて――ひらり、と一枚の服となってスピネルの手元に落ちた。
「思うんだけどさ、鍛冶はいいけど服もこうなのってなんか、こう」
「言いたいことはわかります‥‥‥」
確かに違和感はないではないが、まあそういうものだ、と思うしかない。
皮衣 レザーローブ Lv3 Def48
素材:獣の皮、獣の毛
特殊効果:魔法威力小上昇
「お、魔法威力上がるんじゃん。そしてなんかちょっとこの鈍い赤な感じがオシャレ」
どうやら気に入ってもらえたようだ。
分かりやすく小躍りしているので、スピネルもつられそうになる。
「よかった。性能もそこそこですし、結構いい感じだと思いますよー」
「そっかー。また俺が大活躍できるね!あ、そうだ。スッピーにお願いがあるんだけど。皮でブーツとか手袋も作れるよね」
ハルタチの問いに一瞬きょとん、としてスピネルは聞き返す。
「ええ、できますけど?」
「うん、いい感じに材料あるじゃん。みんなの分作ってくれるとうれしいかな?もちろんスッピーの分も材料はあると思うんだ」
しばし固まって疑問符を浮かべるスピネルだったが、フリーズから解けた後はちゃんとハルタチの意図に気付き、なるほど、と合点してにっこりと頷いた。
「安全靴と軍手ですね?」
「言うなよー」
ハルタチがスピネルの頭を小突く。
スキマ産業Aチームは屋内だけでなく、屋外の販売販促、その他さまざまな体を動かす系の雑用も慣れっこなのだ。
故に、何故か四人はマイ作業服にマイ安全靴、マイ軍手を社内に常備している。
ハルタチはふとそれを思い出したのに違いなかった。
「お任せくださーい」
上機嫌でスピネルがハンマーをふるう。がっつんがっつん叩くその音すら普段のデスクワークのタイプ音を想起させるようだ。
あっという間に4揃いの丈夫そうなブーツと手袋が出来上がった。
革靴 ワークグローブ Lv2 Def20
素材:獣の皮、鉄端材
特殊効果:なし
革手袋 ワークブーツ Lv2 Def25
素材:獣の皮、鉄端材
特殊効果:逃走確率上昇
「あは、逃げ足が速くなるのかよー」
「ほんとですね!」
仕事をする者とは、結局逃げ足の速いものが優れている、ということなのだろうか。
だとしたら、ちょっと深いけどちょっと嫌だ。
ハルタチもスピネルも初期装備のサンダルもどきを脱ぎ捨て、ワークブーツに足を通し、ワークグローブを装着する。
「配管工にでもなれそうだなあ」
「ぶっ」
水道系のトラブルにいち早く駆け出していけそうなその姿は何となくコミカルで、結局どこに行っても変わらないんだなあなんてスピネルは思ったのだった。
「ただいまー。おや、何だいこの手袋と安全靴は」
「安全靴って即答かよー。さすがシバ」
「って、やっぱり安全靴かい」
とことこと歩いてきたシバは、できたてほやほやの無骨なブーツと手袋をじいっと眺めて、複雑な表情を浮かべた。
「なんかこれ見ると秋に現場で作業してた時思い出すのよねえ」
でもシバはちゃんとそれらを身につける。さすがスキマ産業のチームメイトだ。
「くそう、動きやすいじゃない。流石スッピー‥‥‥侮れん」
「いやーそれほどでも?」
十分な技術だぜお姉さんー、とシバはスピネルに言葉を放り投げつつ、作業台にざらりと晶石を投げだした。
「私もやるぜー。やってやるぜー。――ステラ!」
鈍い光を放る小石の山がだんだんと圧縮され、野球ボール大になる。
光が止んだころには、それは精晶石と呼ばれる魔力を含んだ石へとなっていた。
「よっしゃ。んでは次、と」
すうっと目を細くし、両手をかざしたシバは、今度はきちんと詠唱を始めた。
「混沌の渦、回転と新生よ。生成せよ、ステラ!」
バッ、と強い光が一瞬辺りを満たした。ハルタチとスピネルが思わず目を覆うが、シバはそれにも頓着せずひたすら両手から出る白い糸のようなものを精晶石につないでいるようだった。必死な形相、均衡と緊張――
が、数瞬ののち、それはいきなりすべて消え失せた。
「ひー。ひー‥‥‥怖かったよー。出来たよー」
作業台に転がるのは奇妙に鋭くカッティングされた透明度の高い石。
中には文字のようなものが時々踊っている。
「Lv3魔石だよー。成功するかギリギリだった!」
やり遂げた表情でシバはブイサインを作った。
「おめでとうございます!」
「おー、やるじゃん。くれよ」
「やらねーべ!?」
思わず変な方向に訛るシバ。
あはっ、とハルタチは思わず笑い声をあげた。
「さて、あとはロッドとの融合だね。いっくぜー!」
そうして出来上がったものがこれである。
長杖 光の魔杖 Lv3 Atk62
素材:魔石(光)、軟木の長杖
特殊効果:魔力小上昇、治癒効果上昇
ちなみに出来上がった後に扱いやすいようにとスピネルが革を巻いて握りを作った。
シバは嬉しそうに、作ってよかったなあ、よかったなあ、とはしゃぐことしきりである。
「嬉しそうなおねーさん、防具作りますよー。どんな感じがいいですか?」
「おー!じゃあ動きやすそうな感じでなら何でも!」
「了解でーす」
くるっとハンマーを手の中で回転させ、皮と毛の中に振り下ろす。
「ねえ、スッピー。服もこれなんだねえ‥‥‥」
ですよねー。
ハンマーで服を作る不思議。誰もが抱く疑問なのであった。
皮衣 レザークロス Lv3 Def54
素材:獣の毛、獣の皮
特殊効果:命中小上昇
ワンピースのような風合いの服だが、きちんと守るべきところには革の補強が入っている。
それでいて動きを阻害しないようにできているので、戦闘に用いるのには適していると言えるだろう。
「ありがと!あ、でもこれ多分魔術加護つけられるね。つけちゃお」
シバはそう言いながらごそごそと素材の山の中から精晶石を取り出した。そして簡易詠唱でステラを使うと、ずぶずぶとレザークロスにその精晶石を埋め込んでいった。
レザークロス-加護(小) Lv3 Def56
素材:獣の毛、獣の皮、精晶石
特殊効果:命中小上昇、防御小上昇
「え、すごい!シバさんそれ魔工で出来るんですか?」
「うん、できるー」
なるほど、とスピネルは納得し、シバの持っているレザークロスを改めて見る。
すると、右の袖辺りに不可思議な文様が一部入り、確かにそこから加護が発生しているのだ、ということが分かった。
「じゃあ俺のもやってくれよー」
ハルタチがわさーっと自分のローブを脱いでシバに投げ渡す。
「ぶへっ。びっくりした!でもいいよー。出来は保証しない!」
「保障しろよ!」
さて、パンパンとそのローブを広げ、同じように精晶石を置くと、すっと静かに息を吸って手を精晶石に当てる。
「混ざれー、ステラ!」
「なにそれ適当」
全くやる気を感じられない詠唱ではあるが、ちゃんと無事に成功したらしい。
皮衣 レザーローブ-加護(小) Lv3 Def50
素材:獣の皮、獣の毛、精晶石
特殊効果:魔法威力小上昇、命中小上昇
命中がついたねえ、とのほほんとシバは笑う。
「よかったね、スッピー。これで後ろから刺される心配がちょっと減ったよ!」
「ええ、さすがですシバ先輩!」
しっかと握手を交わす二人。さすが、麗しき先輩後輩関係である。
衣類作成は加工に属するのですが、なぜかハンマーを使用します。
なんとなく力いっぱい打つのが躊躇われますね。
エトは装備の想定的にはヒット数でヘイトを稼ぐ系統の壁キャラを目指すようです。
シバはなんだかんだ言いながら攻撃にも使えるけど治癒にも使える武器を作りました。仲間思いですね。苦労しただけのことはあります。
光魔術は風と水からの派生なので、今までの魔術の威力の底上げにも使えます。一石二鳥の武器です。




