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スキマ産業奮闘記―In The Cradle  作者: 狩山 宿
Ⅰ. 揺籠と社会人
13/63

Act 13

そんなわけで一回目の収穫を分類し、分配し、いよいよ熟練度上げである。

ログスポート内にある無料レンタル工房の一角で、よっしゃ、と腕まくりをしつつスピネルとシバは膨大な材料に向かっていた。

生産系のスキルの使い方はちょっと複雑である。

目の前に材料を置き、まずその材料から作れるアイテムをメニューで選択する。

そして鍛冶や加工なら材料をハンマーで叩くことで、魔工と調薬ならMPをほとんど消費しない専用魔法の『ステラ』を使うことによって発動する。

つまり熟練度上げをしようということになると、スピネルはハンマーをひたすら叩き、シバは『ステラ』を延々唱え続ける、ということになるのだ。

そういうわけで、スピネルは発見してきた鉱石のうち、最もグレードの低い鉄鉱石を傍らにごちゃっと置き、適当な分量を手にとっては、がつん、と武器でもあるウォーハンマーの平らな方の部分で叩いていた。生産スキル用のハンマーとして決まった道具を持っていなかったため、流用できそうな手近なものを選んだのだ。

最初に作るのはアイアンインゴッドである。武器にするにも防具にするにも加工しやすくなるので、取ってきた原料をまずはこのようにしなければならない。ちなみにこの作業は加工と鍛冶のどちらの熟練度も少しずつ上昇する優れものである。

とにかく延々と、延々と、かんかんかんかん叩いているのだが、成功と失敗を繰り返して熟練度を上げる作業である。本人以外は手持無沙汰だ。

シバもその横でハンマーの音をBGMにしながらずっとステラを唱えては調薬作業に没頭していた。

これもまた成功と失敗を繰り広げつつ、単調な作業である。

「時間かかりそうだな」

ぼそ、っとエトが呟いた意図をハルタチもうまく汲んだ。

「もう一回行ってくるか」

「だな。終わるまでにはもうちょっと持ってこれるだろ」

そんな見事なアシストが功を奏し、生産スキル上げはエトとハルタチがあと三往復するまで続いたのだった。

スピネルはインゴッドの後は木材加工をし、鍛冶と加工の熟練度を中級まで伸ばしていた。

シバは魔工の方にも若干適性があったことがわかり、最終的には魔工は中級の一歩手前の初級Ⅲまで、調薬は中級に上げることが出来ていた。

中級まで上げることが出来れば、大体Lv15~20くらいまでの装備品はそれなりのものが作れるようになるだろう、というレベルになる。

「頑張ったぁ‥‥‥」

これと言って戦闘をしたわけでもないけれど、何となく疲れたような気がする。

ふう、と一息つきたいところだが、まだスピネルには仕事がある。

余った材料からの装備づくりである。当然足りない素材はまた遠征してこなければならないのだが、その辺りは仕方ない。

ちなみに体の大きさに合わせて材料が増えたり減ったり、ということはない。

装備品は装備者によって大きさが伸縮する不思議な機能がついているからだ。

「じゃあ装備作成のほうに入りたい、というところなんですが」

「ですが?」

ちょっと考えてスピネルは言った。

「ウォーハンマーで装備を作るより専用の道具で作りたいです‥‥‥なので、道具の方を先に作ります」

確かにそうだ、スピネルのおともは延々と戦闘用のウォーハンマーだった。

「おぉ。じゃぁちゃっちゃとやってくれ」

ハルタチが促す。

「では失礼しまして」

スピネルがまず木材に向かってハンマーを振り下ろす。すると木材は仄かな光に包まれ、それが晴れた時には一本の細長い棒になっていた。

そうして出来上がった棒の横にスピネルはアイアンインゴッドをごちゃっと多めに積み上げる。

「よっしゃ。いきますよー!」

振りかぶったウォーハンマーが火花を上げてアイアンインゴッドと衝突する。

「え」

「おお‥‥‥」

柔らかな光を放つその物体は、インゴッドの量からは考えられないほど小さかった。

だが、硬質な輝くを放つそれは間違いなく高い硬度と丈夫さを秘めている、ということを知らせるのには十分な存在感を纏っていた。


鍛冶・加工鎚 鍛冶師の一打 Lv3 Atk 50

素材:硬鉄、軟木

特殊効果:鍛冶、加工成功率小上昇


鍛冶スキルが上がったからか、自分が作ったからだろうか。今度は武器のステータスがわかる。

スピネルは知れず、顔がゆるんでいくのがわかった。やはり、成功というのはいいものだ。

「準備完了です!」

「やったね、じゃあ俺から」

「違うし。私からだし」

「待てお前ら。順番を決めないうちにうやむやにするな」

えー、とハルタチが渋る。ぶーぶー、とシバが可愛らしくブーイングを飛ばす。

「なんでここまで来てお前らはまたもう‥‥‥」

無意識だろうが胃をかばうエトに現実での苦労が垣間見える。

「まあ好きにしてくれ。材料足りなさそうなら結局取りに行かなきゃいかんのだし」

やれやれ、と言わんばかりのエトにスピネルは苦笑して、結局最初はある材料で出来そうなものから作っていくことになった。

「とりあえず防具は、エトさんは金属系の鎧で、シバさんが革のサポーターと布の服。ハルタチさんも同じ感じで革サポーターと布ですね。布っていうと、モンスターの毛から加工して作れると思います。武器のプランとしてはエトさんが拳系で‥‥‥シバさん、私が材料作ったら、残りの工程はそちらになりますよね」

「そうだねえ、木の部分以外は全部魔工だわ。うん、じゃあそれ作ってもらったら私自分で杖作るね」

「はーい。じゃああとはハルタチさんの武器ですけど、杖系扱えます?」

えー、と言ってハルタチは若干悩みだす。しばらくメニューを眺めては首を傾げ、難しい顔をして呟いた。

「いや、駄目だな。魔力補助どころか、逆に魔力に制限が出そうだ」

「ふむむ‥‥‥それじゃあ今のところは保留で。まあ結局やっぱりどうしても革は必要ですけど、丁度リザードマンの鱗があるので、ちょっといいものにしつつ革消費を抑える感じで行きましょう。そういうわけでエトさんの金属鎧から作らせていただきますね」

「よろしくな」

頷くエト。ちょっとハルタチは不満そうだったが、まあそれはそれ、さっと切り替える。

「ほんじゃあその間俺、動物乱獲して毛刈りと皮剥いで来るわ」

「はいー」

パタパタと手を振ってハルタチが出て行ったのを確認して、よし、とスピネルは深呼吸する。

アイアンインゴッド、なめし皮、リザードマンの鱗を置き、スピネルはずっしり重いハンマーを振り上げ――そして重力に従って打ち下ろした。


金属鎧 ライトアーマー+ Lv3 Def 77

素材:鉄、革、蜥蜴の鱗

特殊効果:素早さ小上昇


「おっ。プラスがつきましたよー!」

「プラスがつくとちょっといいのか?」

ええ、とスピネルは頷いた。

「使用した素材の相性とかあって付いたり付かなかったりするんですけど、素の数値が上がったり、別に特殊効果がつくことがありますね」

そうかー、と出来上がった鎧を手にとってエトはご満悦だ。

「次はシバさんのロッド部分、っと」

ガツン、と叩いて出来上がったのはシバの身長ほどもありそうなひょろりと長細い棒だ。

「おわぉ。こんなおっきい?」

「の、ようですねぇ」

シバも若干予想外のサイズだったらしい。受け取りはしたものの、どうやって扱おうかと四苦八苦している様子がどこか微笑ましい。

「これに魔石を入れるんだよね、えーっと、精晶石が材料?ってことは最初は晶石か」

ふむー、と考えるシバ。

「足りなさそうだね。私も調達してくるー」

「あら。いってらっしゃいませー」

シバもとことこと現地調達に行ってしまった。


成功率と性能はDexとLucに左右されます。

生産系スキルの熟練度は、

初級Ⅰ→初級Ⅱ→初級Ⅲ

→中級Ⅰ→中級Ⅱ→中級Ⅲ→中級Ⅳ

→上級Ⅰ‥‥‥

という感じに上がっていきます。

作れる装備のレベル帯も比例して5レベル刻みくらいで変化していきます。


魔工は作成者の得意な属性によっても若干出来栄えが変わるので、適性以外にもそこそこ難しい問題があります。

要は、自分で作ったものは結局自分で使うのが一番確実で、その人それぞれに合わせるのを作るのが少し苦手という癖のあるスキルなのです。


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