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い、いやいやいや。
色々思うところはあるものの、何時までも見た目に気を取られている場合ではない。
第一印象が大事なのに、これじゃ既にマイナススタートだ。
「すっ、すみません! つい……」
しかし、慌てて取り繕うように頭を下げた俺を、可愛い顔した先輩は許してくれなかった。
「何が"つい"だ。確かに、私の見た目は幼い。それは自覚している。だが、だからと言って脳内垂れ流しで良いのか? あまりに浅薄だ。それから、その服」
「ふ、服?」
矢継ぎ早に責められ、狼狽えるばかりの俺のパーカーの裾を、間宮が掴んで更に追撃する。
「そうだ、その服。私は多少の気崩しは構わないと思っている。けれどせめてカッターシャツを着てきなさい」
「……はい。すみません」
「いや、制服については私に謝る必要はない」
「……はい。すみま、いやっ、あの。気を付けます」
なんかホント、すみません。
不真面目過ぎてすみません。
誰だよ。
この人がズレてるとか面倒くさい人だとか言ったの。
真面目じゃん。
まともじゃん。
むしろ人格者じゃん。
見た目は子供、中身は大人じゃん。
「少し画材を取ってくるから、用件は後で聞こうか」
言い終えてすっきりしたのか、彼は美術室の端にある戸を開けて中に入っていく。
画材やら何やらが置かれている準備室のようなものだ。
淡々とした静かなる猛攻に圧倒されていた俺は、ほっと息を吐いた。
浅薄だなんて台詞、生で聞いたの初めてなんだけど。




