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「さあね。それより先輩、さっさと開けてください」
「秋ちゃんってほんっと俺には厳しいよね。あっ、そーだ。俺が髪染めてるってこと、藍ちゃんには黙ってて」
「……は?」
意味が分からない。
わざわざ言わなくたって眩しい金髪を見れば染めてることくらいすぐ分かるだろうに。
けれど、聞き返そうとするより早く美術室の戸が開いた。
「藍ちゃんおはよー。お客さん連れて来たよ」
静まり返っていた室内に快活な声が響く。
見事なほどに遠慮の無い人だ。
そんな広瀬の後ろから中を覗くと、机や椅子を退けて出来たスペースの中央で緑色の髪をした人物が絵を描いているのが見えた。
イーゼルの前に座るその背中は思っていたよりもえらく小さい。
深緑に、紺。
黄色と、赤と、それから黒っぽい幾何学模様。
固定されたキャンバスに様々な色が散る。
彼はカーディガンを捲った腕を熱心に動かして、良く分からない抽象的な絵の、良く分からない部分を塗っていた。




