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「間宮さん、こんな朝早くから美術室なんか来て楽しいんですかね」
「さあね」
「さあねって……」
「それより、秋ちゃんって表情変わらないわりに分かりやすいとこあるから、それは気を付けた方がいい」
「いきなり何すか」
「いや、会いたいって言いながら会いたくないって態度丸出しだから」
足を止めた広瀬にさらりと言われ、ちょっとばかし顔が強張る。
俺の胸の内なんてバレて困るようなことでもないけど、こういう時の広瀬碧には得体の知れない陰湿さを感じるから少し怖い。
未だに彼を信用しきれない理由の一つは、それだと思う。
「俺、会いたいって思ってますよ。めちゃくちゃ」
「棒読み過ぎるよ秋ちゃん。そういうとこも嫌いじゃないけどさ」
「……うっ」
するりと頬を撫でられて寒気がした。
俺はあんたのこと、だいぶ嫌いです。
すぐに触ってくるとこも、嫌がるのを知ってて、可愛いとか何とか言ってくるとこも。
「ちょっ、触んないでください。次勝手に触ったら、先輩のカッターシャツを苺みるく色に染めますよ」
「何その嫌がらせ」




