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美術室は渡り廊下を渡った先。芸術棟の二階にある。
美術の授業以外で生徒が出入りすることはほぼ無いのだが、前は美術部も有ったらしい。
俺が入学した時には既に廃部になっていたけど。
美術室には窓が多く、明るくて清潔だ。
それなのに何故かいつ来ても薄ら寒いものだから、この間委員長が、
『幽霊でも出たら面白いのに』
なんて恐ろしいことを呟いていた。
「あの、広瀬先輩」
「ん?」
「注意事項とか、あったりしますか?」
「ああ、藍ちゃんと接触するに当たっての?」
「はい」
「なんか、危険人物みたいに言うね」
広瀬碧が、隣でくくっと笑いを噛み殺す。
何だよ。
自分が面倒くさい人だって言ったんじゃないか。
「ほら、鍵が開いてる」
結局、問いには答えて貰えないまま美術室の扉の前に着いてしまった。




