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「で? 俺に頼み事ってなに?」
二段目に座る俺を見下ろす形で、広瀬が手すりに凭れ掛かる。
面白がるような声音の後に、缶コーヒーを飲み下す音が微かに聞こえた。
い、今更ながらちょっと緊張する。
理由を深く訊かれた場合、あっさり白状すべきだろうか。
知りたがりな友人の為です。なんて、俺言いたくないな。
「あ、あのですね」
「うん」
「大したことじゃ、無いんですが」
「うん」
「……俺、間宮藍太郎さんに会いたいんですよ」
「うん?」
ん、あれ?
返事のニュアンスが変わってる?
ちらりと見上げると、広瀬はよく見せる薄笑いではなく、きょとんとした表情を浮かべている。
「え、ん? 会えば、良いじゃない。どうして俺に訊くの?」
心底分からないという顔をするから、一瞬、言葉に詰まってしまう。




