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そ、それでか。
やけに親しげだと思ってたけど。
そうか、幼なじみ。
幼なじみだったのか。
無礼千万な広瀬碧が未だに存命してるのはそういう理由か。
「……でね、緑山くん」
「あ、ああ。どうぞ続けて」
「広瀬碧と一緒なら、間宮藍太郎に怪しまれずに自然に接触出来ると思うんだ」
「な、なるほど」
「三年の教室へ同行を頼んでみてはどうかな」
広瀬碧に頼み事をすると確実に何か起こりそうであまり気は進まない。
が、一人で行くよりはマシ、なのか?
何だかんだ、『いいよー』くらいな感じであっさり引き受けてくれそうだしな。
「……分かった。明日にでも行ってみる」
「本当に?」
俺が小さく頷くと、委員長の目が子供のように輝く。
「ありがとう! 君なら引き受けてくれると思ってた! さ、緑山くん、お弁当まだまだ余ってるから食べてよ」
満面の笑みを湛えた彼を前に、再び口に入れた卵焼きは、やっぱり美味かった。




