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「頼み事……ですか?」
「そっ♪ 今から図書室に行ってきて欲しいんだー」
図書室?
綺麗な笑みには裏がありそうで、俺は思わず眉間に皺を寄せて睨むように広瀬先輩を見上げてしまう。
フードのせいで先輩からは見えていないかもしれないが。
「嫌ですよ。何で俺が? 大体、鍵だって閉まってるでしょ」
無法地帯のようなこの学校で、朝から図書室を利用するような勤勉な生徒はいない。
図書室が開くのは基本的に昼休みの30分間だけだ。
「これなーんだ?」
徐に胸ポケットに手を突っ込んだかと思うと、先輩はジャランと音のする物を俺の眼前に突き出してきた。それは、小さな鈴のストラップが付いた銀色の鍵。
「まさか図書室の? どうして先輩が……」
多少なりとも驚きを見せた俺の反応に満足したのか、先輩は得意気にニヤリと笑った。
「あ、俺が図書部員だって知らなかった?」
広瀬碧が、図書部員?