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微笑む委員長の所為か、弁当が神々しく見える。
妙なプレッシャーだ。
好きなものを最後に取っとく派の俺は、とりあえず、無難そうな卵焼きを口に放り込んだ。
「……っ!!」
うまい。
マジで美味い。
かなり美味い。
俺の母親の手料理より数段美味い。
味わったことのないハイクオリティー卵焼き。
「美味しい?」
「……ん、むぐっ。美味いっス」
「それは良かった。お茶もどーぞ」
「あ、どーも」
紙コップに注がれた麦茶を片手に、海老フライにかぶり付く。
うまっ。
「杉浦、あんたって、んぐっ……。料理とか、できたんだな」
「杉下ね。元々の趣味なんだ。ここに入学してからも、寮の共同の炊事場でよく作ってる」
そう言えば、そんな設備もあった。
食堂・外食・買い食いのローテーションで生活している俺からは考えられない素晴らしい趣味だ。
俺が褒めちぎると、彼はほんの少し照れた様子を見せたが、すぐにいつもの笑みに戻った。




